怪我・外傷/骨折(疲労骨折・剥離骨折・圧迫骨折)

骨折の症状・原因・治療・リハビリ

骨折は骨の連続性が断裂し、痛み、関節の可動性の低下、筋力低下、外観の変形などの症状のため、仕事や日常生活に支障を生じる外傷。症状、診断法、治療法、具体的な手術法や手術費用について解説します。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

骨折とは

外力により、骨の連続性が保たれなくなった状態。スポーツ、外傷、事故など様々な原因で発生します。

以下の記事は実際の患者さん(43歳・男性・Aさん)のケースを元に、その体験を加工して記載してあります。Aさんは橈骨遠位端骨折を発症しました。骨折の症状、診断、治療、手術、手術費用などの理解を深めて下さい。骨折は発生部位により様々な症状、治療があるので、すべてを理解することはできませんが、参考になればと思います。

骨折の症状

Aさん「2008年7月仕事の途中で道路で転倒し、左手で全身の体重を受ける状態となりました。左前腕部の痛みと左前腕の変形が生じました。腕が曲がった状態で変形がひどかったので救急車で近くの整形外科に搬送されました。」

「時間の経過で変形した部位の周りが腫脹してきました。」


骨折の診断

■単純X線(レントゲン)
2008年7月にAさんがクリニックで撮影した単純X線写真です。
単純X線

手関節単純X線像 骨折は白くうつる骨の連続性が途絶していることで診断します

手関節単純X線像 橈骨と尺骨の2ヵ所で骨の連続性がとぎれていることがわかります。

単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明をうけられるので、整形外科では必ず施行します。
側面像

手関節単純X線側面像 骨折より遠位の骨片が手背に偏位しています


単純X線は3次元の人体を平面で表現するため通常2枚以上の撮影を行い、骨折の診断に使用します。この側面像で骨折から遠位の骨が背側に変形した位置にあることが診断できます。

■CT
3次元的な位置関係を診断したり、単純X線で診断が難しい場合、CTを施行します。費用は5000円ほど。放射線の被曝があります。
CT

CT像 骨折の状態を断層で診断します 

■MRI
MRIは磁気を使用して人体の断面写真を作成する医療用機器です。被爆がないのが最大の特徴です。欠点は費用が約1万円程度と高額な点、狭い部屋に15分 間ほど閉じ込められて、騒音が強いことです。脳外科の術後で体内に金属が残っている人、心臓ペースメーカー装着の人、閉所恐怖症の人などではMRI検査が無理なので、CT検査を行います。CT検査の費用は5,000円程度で、MRIより安くなりますが、被爆があります。骨折の診断に時としてMRIが撮影されます。


骨折の治療・リハビリ

■非間欠的整復固定術
骨折の変形、偏位、転移を非手術的に、通常は局所麻酔下に正常な位置関係にもどし、シーネもしくはギプスで骨を固定します。この時の骨固定が良好で、新たな骨変形が発生しなければ、固定を相当な期間継続する治療が行われます。
プラスチックギプスによる固定

プラスチックギプスによる固定

安静にすることで筋力低下、関節の可動域低下が発生しますので、リハビリが必要となります。
整復後

整復後の単純X線 正面像

正面像では整復前でもそれほど変形は目立ちませんでした。ですので側面像を比較する必要があります。
整復後側面

整復後単純X線 側面像

この側面像で橈骨の遠位骨片が正しい位置に整復されていることがわかります。
しかしながら尺骨茎上突起骨折のほうは正しい位置に整復されていませんので、手術を予定することとなりました。そのためクリニックの紹介で総合病院の整形外科外来を受診しました。

■鎮痛薬
ボルタレン、ロキソニンなど非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDと省略されます)。

ボルタレンは、1錠15.3円で1日3回食後に服用。副作用は胃部不快感、浮腫、発疹、ショック、消化管潰瘍、再生不良性貧血、皮膚粘膜眼症候群、急性腎 不 全、ネフローゼ、重症喘息発作(アスピリン喘息)、間質性肺炎、うっ血性心不全、心筋梗塞、無菌性髄膜炎、肝障害、ライ症候群など重症な脳障害、横紋筋融 解症、脳血管障害胃炎。

ロキソニンは、1錠22.3円で1日3回食後に服用、副作用はボルタレンと同様。

どちらの薬でも胃潰瘍を合併することがありますので、胃薬、抗潰瘍薬などと一緒に処方されます。5年間、10年間の長期服用で腎機能低下などの副作用があ りますので、注意が必要。稀に血液透析が必要となる場合もあるので、漫然と長期投与を受けることはできる限り避けて下さい。

鎮痛薬の問題点は数ヶ月以上の服薬で胃腸症状、腎機能低下が高率に発生しますので、急性期を過ぎたら主治医と相談し、減量ないし休薬を考えましょう。

■観血的整復固定術
非観血的な治療で安定しない骨折や、開放性骨折などの場合手術治療が必要となります。

Aさんの場合観血的な治療を受けました。手術時間2時間14分間、全身麻酔が必要でした。固定はシーネといって前腕半周の固定具を使用しました。術後の経過も良好で入院4日間で退院となりました。
術後単純X線像

術後単純X線像

術後単純X線側面像

術後単純X線側面像 遠位の骨片の偏位が矯正されています


Aさんの場合労災保険の適応で治療費用は無料でした。健康保険を使用し3割負担の場合約3万円の概算となります。退院後、術後1週間でシーネを除去し、リハビリを開始しました。痛みもそれほど強くなく、Aさんは満足しています。非観血的な治療では固定期間が1ヶ月程度ですので、観血的な治療は固定期間が短く早期にリハビリを開始できることも利点です。

■抜釘術
骨癒合が完成した時点で固定に用いたプレートなどを除去する手術を行います。
Aさんの場合術後半年のX線で骨癒合を確認しました。
術後半年単純X線像

術後半年単純X線像 骨折が治癒し骨癒合が完成しました


2009年2月に3日間の入院で抜釘術を行いました。全身麻酔で30分間の手術時間でした。

プレート除去後

プレート除去後の単純X線像

骨癒合は完成しましたが、全体に骨萎縮が認められます。半年間リハビリだけで仕事を休んでいたことが原因です。廃用性萎縮と呼ばれます。
職場に復帰して腕を仕事で使用すれば萎縮は改善してきます。

■骨折のリハビリ
非観血的治療でも観血的治療でも安静期間に応じて障害がでますので、リハビリが必要。通常筋力低下と関節可動域の低下が生じます。この二つに絞ってリハビリを施行します。
Aさんは手術後1週間から抜釘までの半年間リハビリを行いました。しかし仕事を休んでいたため左手関節の可動域低下、左手及び左前腕の筋力低下がありました。抜釘の後、仕事に復帰し、徐々に機能はほぼ完全な状態となりました。
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