国際的に決めたルールを米国が守らず、日本糖尿病学会はその米国に追従しそうです。
わかりやすく解説しましょう。
国によってバラバラだったヘモグロビンA1C(HbA1c)の測定法
赤血球の酸素を運ぶタンパク質ヘモグロビンには4本のペプチド鎖があり、その内のベータ鎖N末端のバリン(アミノ酸)にブドウ糖が結合したものがA1cです。これは非酵素的に結合するので、血液中にブドウ糖がたくさんあればA1Cも多くなります。古い赤血球は一日に2000億個も壊されて、同数の新しい赤血球が作られています。赤血球の寿命は約120日とされていますから、ブドウ糖の結合したHbA1cの割合を調べることで、過去2~3ヵ月の平均血糖値が推定できるのです。
このA1cの測定法は、これまで世界に3通りありました。米国や多くの欧州各国で行われている「NGSP」と、日本式の「JDS」、そして「スウェーデン式」です。これらはA1cの絶対値を測定するのではなく、日本では独自の標準物質を基準にしてA1cを測定していました。困ったことに同じ血液サンプルがNGSPではHbA1c 6.5%になり、JDSでは6.1%になってしまうのです。
これではサイエンスとして不正確かつ不便なので、国際的な検討組織を作って、より正確な方法でIFCC値を決め、mmol/mol Hbとしてパーセント(%)ではない2ケタの数値で表わすことにしました。それによるとJDS値(日本式)では6.1%のHbA1cがNGSP値では6.5%になり、IFCC値では48mmol/molとなります。
2011年10月1日より日本は世界の2周遅れに……
トップランナーの英国では今年(2011年)の10月1日からこのIFCC値に切り換えることにしています。つまり、日本糖尿病学会が目指すNGSP値は、もうすぐ一周遅れになってしまうのです。そうなると、日本の医療界と患者は大変なコストと手間をかけて、JDS→NGSP→IFCCと2回もHbA1cの表示を変えることが視野に入ってきました。
いままでは「HbA1c 6.1%」と言われていたのに、ある日突然にA1C(区別のため、Hbがなくなるかも知れません)6.5%と言われ、数年後には48mmol/molだと言われたらどうしますか? この3つの数値は同じ内容を意味しているのですから……これでは患者も医療サイドもパニックになってしまいますね。
私はどう考えても変更は1回だけにすべきだと考えています。米国と心中覚悟でJDS→NGSPか、最先端国家としてJDS→IFCCです。SNSの時代ですから皆様の声をまとめて厚生労働省に届けようではありませんか!
まず、現実を知るために厚生労働省のページを御覧ください。
保険者による健診・保健指導等に関する検討会審議会資料
この中で日本糖尿病学会はIFCC値は各国の臨床現場では移行の見込が立っていないと主張しています。
これは真実ではありません。それでは英国のDiabetes UKの下記のページをご覧ください。英国では2011/10/1よりIFCC値に移行すると宣言しています。2009年の春から移行の準備を進めていました。
Change in measurement of HbA1c delayed
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