崩れた煙突、裏山の土砂崩れ…
久慈さんと一緒に、裏山の松尾様の前で。心地いい風が吹き渡る
お酒の神様。トイレだけじゃなく、お酒のお蔵にもステキな神様がおるんやで
先端部分が崩れ落ちている。幸いにもけが人はいなかったとか
一見何事もないように見えた蔵もいたるところに傷跡があり、なんとか工夫で持ちこたえてきたことが見てとれた。
シアワセの香りのもとは、「糖類無添加梅酒」製造蔵の「イチゴ」だった
梅酒蔵に冷凍保存されているイチゴ。ものすごく強烈に甘く香る
糖類無添加梅酒は、全麹仕込みの日本酒の甘さのみで造られるナチュラルな味わい。
本来、糖分がないと梅のエキスが抽出しにくいのだが、南部美人にはエキス分豊富な全麹仕込みの純米酒「All Koji」(1999年より発売)があった。この酒を使うことで、難しいといわれた日本酒ベースの砂糖不使用の梅酒を完成させることができたのだ。地元の産物を使うこと、独自の技術を必要とすることで、特許を取得し農商工連携事業認定も受け、リキュール新蔵の設立も可能になったのだ。
昨年発売されたノンシュガースパークリング梅酒は、ロゼシャンパンみたいに楽しめる
『ノンシュガー イチゴ梅酒』が生まれるまでの経緯もおもしろい。
「二戸市の誘致企業第1号はあのデルモンテでしたが今年の3月に撤退。苺農家は大打撃です。それを救うべく、二戸市長からのご依頼で、苺のお酒の試験醸造をしましたところ、すこぶる良い結果が出たので商品化となりました」と5代目。デルモンテのジャムになる苺だからこそあの強烈な甘酸っぱい香りがあったのだ。これは期待できそう。
5代目久慈浩介は空飛ぶ日本酒蔵元だ!
きれいで美しい酒を造りたいという願いがこめられたこのブランドの人気と信頼は、「現代の名工」「勲六等瑞宝章」を受章している山口杜氏の技を引き継ぐ、5代目久慈浩介さんと松森杜氏が守っている。日本国内のみならず世界を飛び回り日本酒の普及に力を注ぐ5代目は実にフットワークの軽い“空飛ぶ日本酒蔵元”。製造の10%はアメリカをはじめとした諸外国に輸出されている。今、フランスでは、梅やユズなどのオリエンタルな果実を使用した商品に人気の火がつき始めているが、この「糖類無添加梅酒」や「ノンシュガー スパークリング梅酒」、そして、この秋の「ノンシュガー イチゴ梅酒」は、日本の伝統をボトルに詰め込んだ「和リキュール」としてしっかり受け入れられることだろう。被災地の酒でまず1杯、そして、全国の酒を2杯目に!
震災後、すぐにYou Tubeで「東北のお酒を飲んでください。お花見、宴会、中止にしないで!」というメッセージをアップし話題になった久慈さん。被災地の造り手からの言葉は効果絶大だった。あれで、「そうだ、被災地のお酒を飲むことも、復興の手助けになるんだ」ということにみんなが気がついたのだから。その後、全国で「どうせ飲むなら東北の酒」という気運が高まり、東北の酒は例年になく売れた。奇しくも、他地域の通常需要が減るくらい東北の酒の支援が広まっている。消費低迷が長い日本酒だけど、被災地復興ではじめて日本酒(東北の)を飲んだという人が意外に多いらしい。うれしいことだ。まずは支援として1杯の東北の酒で日本酒を飲み、その良さに気が付いたら、2杯目で全国の酒のおいしさをさらに実感する。こんな風に日本酒ファンが増えていくといい。この震災経験を日本酒体験の機会ととらえ、日本酒を飲む人が1人でも増えればいいなと、久慈さんはじめ、蔵内で働く25名のスタッフの方々の笑顔を見ながら強く感じる訪問となった。
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おまけ
酒粕あんぱんと純米酒カレーは、我が家の常備食。ホントです
●南部美人「糖類無添加梅酒」を買える店
ささき酒店
●「南部美人」を飲める店
日本酒バー 天の川(京王プラザホテル内)
<関連サイト>
・がんばろう! 日本
東北の日本酒を応援するツアーの情報などが載っています。