名古屋の建築界の巨匠による
アイデア、遊び心がいっぱい
設計したのは近代建築の巨匠・鈴木禎二(ていじ)。大正から昭和にかけて名古屋の近代建築をつくりまくった当時の超売れっ子建築家で、かの文豪・夏目漱石の義弟としても知られます(『坊ちゃん』の一節に登場するくだりもあり)。名古屋の近代建築は戦災で多くが焼失してしまったため、現存するものは多くありませんが、ここはその数少ない一軒なんです。内装もいたるところに遊び心が注がれています。飛鳥時代など古代の瓦を埋め込んだ暖炉、応接間の壁面に彫られたかわいらしいウサギのレリーフ、千年杉を張り合わせたらんまなど、そしてなぜか忍者屋敷のような隠し扉など、設計者が存分に凝りまくった様子が浮かんできて、思わずにやりとさせられます。
三賞亭は大正7年にこの地に移築された揚輝荘最初の建物。お茶室として再構築されたものだけあって落ち着いた風情があり、丸窓から庭を望む景色も風雅です。
自然豊かな庭園。秋は紅葉の名所
庭園は池泉回遊式庭園。四季折々の景色を楽しめます。庭園のシンボルは池に架かる白雲橋。修学院離宮の千歳橋を模したもので、欄干の手彫りの擬宝玉(ぎぼし)や緑色の屋根瓦が印象的です。敷地は北園と南園に分かれ、北園から南園へ行くには、いったんマンションの敷地を通って通用口から入ることになります。
南園の主役、聴松閣(ちょうしょうかく)は迎賓館として利用された山荘風の建物。インド、中国、イギリスの様式がミックスされた非常にユニークな意匠です。かつては地下に延長170mにもおよぶ謎のトンネルも隠されていて、その入り口が現在も残っています。
残念ながら南園は2011年9月から改修工事に入り、向こう2年ほどは見学できなくなります。
それでも、現在の敷地の2/3は北園が占め、見ごたえはこちらだけでも十分。また、紅葉の名所としても知られ、紅葉狩りも北園がメインなので、物足りなさを感じることはないでしょう。
愛知県には明治村という歴史的建造物を多数移築した素晴らしい博物館がありますが、ここは明治村をギュッとコンパクトにしたような施設。名古屋駅、栄からも地下鉄で一本とアクセスもよいので、名古屋の街あそびと合わせて見学できるのも魅力です。
■ 揚輝荘
住所:名古屋市千種区法王町2-5-21
アクセス:地下鉄東山線覚王山駅より徒歩10分
TEL:052-759-4450
開園時間:9時30分~16時30分
休園:月曜(祝日の場合は開園。直後の平日休園)
入園料:無料
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