米国最先端医療ロボット、ダ・ビンチ手術システム
米国カリフォルニア州シリコンバレー地域に最先端の医療ロボットを製造する企業、インテュイティブ・サージカル社(ナスダック上場、証券コード:ISRG)があります。同社の主力製品は4本の手を持つ同社製の手術支援ロボットです。遠隔操作により、大変デリケートな施術を可能とし、米医療当局のFDAが2000年に認可した唯一の医療ロボットです。このロボットは高性能3D内視鏡を持つ手術システムで「ダ・ビンチ・サージカル・システム」と名付けられ、改良を加えた様々な先端機器を搭載したモデルが発売されています。例えば日本のオリンパス社の3D/2D映像システムなどがダ・ビンチ・サージカルシステムの一部品として採用されています。一般に米国の医療は日本に比べても大変進んでおり、まだ十分な臨床データのない分野で続々と先端医療製品や薬品が多く出てきます。日本では直らない、治療方法がない、とされる難病であっても、米国に駐在して先端医療を受けたことで治った、という話もよく聞きます。日本では処方薬でも手に入らないような強い薬であっても、街のドラッグストアーで店頭薬として気軽に積まれており、大変安いのです。そして10年近く経って、ある程度十分な臨床データが出た段階で、日本でもようやく認可されてくる、というような感じです。米国に何年か住むと、実生活の中でまず医療の差を実感するところではないでしょうか。
日本上陸が業績の牽引役となる可能性
インテュイティブ社のダ・ビンチ・サージカルシステムは、米国で認可された10年後の昨年、日本の当局でも認可が下りました。現在同社は保険適用を申請しており、それを待って本格的に日本へも上陸することになると思われます。欧州へはすでに輸出されており、売上の3割ほどをしめています。
日本に本格上陸すれば、日本の医療市場は世界2位の巨大市場だけに、相当な影響が日本の医療に起こる可能性もあります。同時に同社売上の大きな成長ドライバーとなりえるのではないでしょうか。この米国で唯一の医療ロボットは1億円以上するシステムですが、四半期ごとに100セット以上売れています。これまで累計で約2000セットを販売してきました(うち、4分の3は米国向け)。2008年にオバマ大統領の対立候補だった共和党のマケイン上院議員は、度重なる手術で健康面が不安視されたことが大統領選敗因の一つですが、その同議員も同社を訪れ、ダ・ビンチシステムを見学しているニュースを見たこともあります。
10年前にナスダックに上場したころの同社は売上50億円もない会社で、まだまだシリコンバレーにあるハイテクベンチャー企業といった様子でした。しかし米当局の認証を得たダ・ビンチシステムがその後物凄い勢いで売れ出し、今では1500億円規模の会社に急成長しています。株価もそれに合わせ、2003年に僅か7ドルという安値から、2007年末には359ドルをつけ、当時、月の売買代金が1兆円を超える大商いで大変な注目を浴びておりました。ところが金融危機で経済とファイナンス機能が萎み、高価な医療ロボットを購入する病院が減るとの観測で株価は100ドル割れまで暴落、しかし実際には業績に大した落ち込みはなく、以後急回復します。
そして2010年1~3月期に、前年同期比で売上74%増、利益194%増でアナリスト予想を吹き飛ばすと、株価は400ドルに迫るところまで行きましたが、同時に発
表された2010年通期予想の売上が27~30%増と当時経営陣によって発表され、慎重すぎる見通しに失望となりました(結果的には34%増で着地)。以後は全体相場の調整期(2010年夏場の急落相場)も手伝って1年3ヶ月値を踏んで足場を固め、先週好決算を受けて400ドル超えた後、米国債格下げに端を発する世界的な株安で株価はいったん調整しているところです。なお、今回も半期を終わった時点で通期売上見通しは19~21%増程度と会社側は発表しており、昨年に続いて保守的な見積もりをしているように見られています。
しかし、日本進出を含めて長期的には面白い立ち位置にいる企業かと思います。もしも米国株が大きく調整したときなどに買う銘柄の候補として、覚えておいて良い銘柄と思います。