アンティークに慣れ親しむ環境

水上さん自身が愛用していた革靴や古着をディスプレイ。革のバッグは自作だそうです。

水上さん自身が愛用していた革靴や古着をディスプレイ。革のバッグは自作だそうです。

かつて両親が北海道で小さなレストランを営んでおり、趣味でヨーロッパのアンティーク家具を買い集めていたという水上さん。幼い時分から歳月を経たモノたちの醸しだすたたずまいに慣れ親しんで育ったことが、その感性のベースにあるのかもしれません。ご両親は現在、小樽の海岸添いで予約制の美しいギャラリー&カフェを営まれています。
この一葉だけ眺めると、クラシックな紳士靴店のようにも見えますね。

この一葉だけ眺めると、クラシックな紳士靴店のようにも見えますね。

PORTMANS CAFEにはご両親のレストランで使われていた木の椅子も、黒くペイントされて表情を変え、長テーブルに並んでお客さまを迎えています。ごつっとした印象の巨大な戸棚はスペイン製。

凝った美しい意匠のキャビネットの中にはさまざまに光を反射する香水瓶や、真っ白な陶製の紳士靴のオブジェなど、固有の小さな世界を持つモノたちがディスプレイされていて見飽きることがありません。

イメージは「イギリスの倉庫」

左:地名の並ぶ黒幕は、ロンドンのバス乗り場の行き先案内だったようです。右:キャビネットの内部。

左:地名の並ぶ黒幕は、ロンドンのバス乗り場の行き先案内だったようです。右:キャビネットの内部。

紳士の国として認知されてきたイギリスのアンティークは質実剛健で、どこか無骨な印象がありますね。深いマホガニーの色彩。革の匂い。しかしPORTMANS CAFEにはお行儀の良いアンティーク趣味だけではない、ちょっと型破りの洒落っ気を感じるのです。

カフェづくりのイメージは「イギリスの倉庫」でした。古いものや、少し不思議なものが集められ、編集されたその店内は、「自分の好きなものを立体化した空間」なのだといいます。

たとえば、黒い幕をあしらった写真上左のコーナーの何気ないセンスの良さ。そういえばアメリカの美術館のファサードにはよくこんな長い幕が下がっているな……と思いましたが、カフェの店長としておもてなしを担当する奥さまの芦田幸代さんに訊ねると、どうやらロンドンのバス・ステーションで使われていたもののよう。
この空間で唯一の女性らしいアイテムだった真珠の襟飾り。キッチンまわりに女性的なデザインを集約しています。

この空間で唯一の女性らしいアイテムだった真珠の襟飾り。キッチンまわりに女性的なデザインを集約しています。

時としてがらくたとして見捨てられてしまうようなものも、編集のセンスしだいで、どこかユーモラスな魅力の光る「倉庫」の一員になるのですね。
そしてこのキーワードは、隅田川にかかる橋を渡ればすぐに現代アートの聖地、丸八倉庫ビルに開かれた小山登美夫ギャラリーTaka Ishii Galleryがあるという立地と、よく響き合っているのです。

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