「お山の杉の子」

こんな童謡をご存じですか!「むかしむかしの そのむかし・椎の木林の すぐそばに・小さなお山が・あったとさ あったとさ・まんまる坊主の 禿山は・いつでもみんなの 笑いもの・これこれ杉の子・起きなさい・お日さまニコニコ・声かけた 声かけた」これは敗戦色濃い昭和19年、「少国民歌の懸賞募集」の第1位に入賞した“お山の杉の子”という童謡です。この歌詞の五番がまた興味深いのです。「大きな杉は 何になる・お舟の帆柱 梯子段・とんとん大工さん・たてる家 たてる家・本箱 お机 下駄 足駄・おいしい弁当 食べる箸・鉛筆 筆入 そのほかに・たのしや まだまだ・役に立つ 役に立つ」こんな風に国民の総意の元で行われた杉の植林は日本国中に広がりました。

日本の国土の3/2が森林、その森林の半分が人工林で占められています。そして人工林の44%が杉で植林されています。4本に1本は杉ということになります。その杉は、今や花粉に脅かされる多くの人に迷惑がられています。役に立つはずの杉は、輸入材にとって変わられ、伐採期を迎えても伐採されずに多くの人口林が活用されずにいます。


奇跡の杉を生む低温乾燥

ジャスミンに覆われた「愛工房」の建物

「愛工房」の外観

先日、JID(社団法人日本インテリアデザイン協会)の研究委員会の集まりで、一枚の木片を見せられました。黒檀のような艶と堅さの木片が杉だと言われてビックリ仰天でした。私の頭の中には、杉といえば、和室の床の間を飾る京都の北山杉絞丸太、あるいは木目が美しい秋田杉の板目の天井板、杉の柾目がつくり出す工芸品の“秋田大館の曲げわっぱ”など、どれもが白い肌を持つものばかりです。その黒い木片は、「愛工房」という低温45度の木材乾燥装置でつくられた木材でした。早速、JIDの仲間と「愛工房」の代表伊藤好則氏にお話を聞きにいきました。

盛んに行われている木材の乾燥と言えば、中温乾燥、高温乾燥が当たり前で、すべては効率よく水分を取り除くために、木材がもつ成分も全てなくなってしまったカサカサの木材を商品としてだしているのが現況です。「愛工房」は、日本の人工林、特に「杉」の活用を願って開発された低温乾燥のプラントです。一般の杉材は柔らかくて節があり、木材としては二流品として扱われていましたが、この「愛工房」45度の低温乾燥することで、高品質で家具や建築材料として充分に優良な材になるということです。


「白太(しらた)」・「赤身(あかみ」・「黒芯(くろしん)」

杉の年輪(赤身・白太・黒芯)

杉の年輪(赤身・白太・黒芯)

杉の特徴である樹心には「赤身(あかみ」がり、その外側を「白太(しらた)」が囲んでいます。しかし、山の下や谷に生える杉には「赤身」の部分が変化した「黒芯(くろしん)」といわれるものがあります。この黒心の丸太は、重く、乾燥がしにくく商品にはならないので、搬出コストを考え、伐採された後で山にそのまま放置されるのだそうです。価値がないと忌み嫌われた「黒芯」を低温乾燥することで、堅固で美しい高級な柱や家具材として使用が可能になります。


酵素が生きているから、色・艶・香を楽しむ

「愛工房」の杉材が使われた部屋

「愛工房」の杉材が使われた部屋

「愛工房」プラントは45度の低温乾燥なので木の持っている香りと精油分が豊富にあり、塗装しなくても手垢がつかないほど、油分が強いそうです。床や腰壁には油分が多い赤身の材を、天井や壁には白太を使っています。木の持つ生命力をライフスタイルに取り入れることで、病気の回復や精神を安定することが立証されつつあります。



国産材の杉板と聞いただけで、安価で材質も節があり、内装材としては概して使わないものでした。杉の板張りと聞いただけで、拒否反応があります。ただし、いま世界中で自然志向にライフスタイルに注目が集まっています。このような木目や節がある本物の内装材をどのように使いこなして行くかが、これからのインテリアの課題になりそうです。


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「愛工房」






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