糖尿病合併症は様々
サボテンを踏むような神経障害の痛みはQOLを大きく損ないます
糖尿病腎症はかなりの年月の後に現れますが、その進行度や重症さには遺伝的要因もあるようです。予防には血糖だけでなく血圧管理も大切です。
糖尿病網膜症はその発症や進行を抑える薬はまだありませんが、血糖コントロールを正しく行うことで効果があります。また、治療法も細小血管合併症の中では一番進歩しています。
そして、糖尿病神経障害は「十人十色」。血糖コントロールは「基本のキ」ですが、それほどの高血糖状態でないのにひどく痛む人もいます。
糖尿病神経障害の原因
最近の研究では、糖尿病神経障害の予防と治療の根幹として、血糖コントロールを正常に近づけることが挙げられるが、これが全てではないと指摘されています。ベストの血糖コントロールが神経障害の進行を抑制するウエートが30~40%、残りの60~70%は高血糖値以外の要因だとする分析です。実際のところ、糖尿病以前の「耐糖能障害」の血糖レベルでも神経障害を起こす人がいるのです。その理由は不明です。一般に、糖尿病患者は痛みがひどくならないと医師に報告しないようです。ですから、糖尿病患者を診察する際には必ず神経障害の有無、その症状の重さを医師が診断すべきなのですが、糖尿病専門医を除いてはその重要さが認知されていません。
本当は患者が自覚する前に神経障害の傾向が診断できるのですから、患者の方から遠慮無くいろいろな違和感を訴えるようにしましょう。神経障害はそれ程有効な薬も治療法もないので、早期発見が鍵です。
糖尿病神経障害のリスク・傾向
足や手の末梢神経障害のリスクは、一般に以下のような条件で高まります。- 背の高さ:背の高い人はより危険
- 性別:男性に多い
- 年齢:加齢と共にリスクが高くなる
- 高血圧
- 糖尿病罹病期間が長い
- 血糖コントロールが悪い
- 高脂血症
- 喫煙
- 糖尿病細小血管病
- 高血糖にさらされた総量(年月と血糖レベル)
- 糖尿病のタイプ
糖尿病神経障害の痛み治療
糖尿病神経障害の薬は、痛みを抑える対症療法が基本となります。患者は薬を処方してもらえば、すぐにも100%の痛みが収まると期待しがちですが、残念ながらそのような薬はありません。治療において痛みが半減すれば成功とされます。それも通常は数週間後に効いてくるのです。さらに、抗うつ薬や抗てんかん薬、抗不整脈薬などが少量ずつ処方されますから、副作用とのバランスが難しくなります。
普通なら痛みなどあり得ない衣服やベッドのシーツに触れただけで大きな痛みを感じるような場合は、トウガラシ成分のカプサイシンクリームがよく使われます。一日4回、少量を過敏な皮膚に少量塗ります。
抗うつ薬の鎮痛効果は抗うつ作用によるものではなく、神経末端のノルエピネフリン再取り込み抑制作用によるものですから、処方量は小容量です。足がしびれてチクチクするような症状に効果が見られます。神経障害の痛みとみじめさによって、うつ傾向が強く出てしまった患者には、内科医だけでなく精神科医とのチームワークが必要になります。薬の重複と処方量、種類が問題となります。痛みへの作用は人によって全く異なるからです。
神経障害は自律神経にも起こりますから、患者の人生に大きな負担となります。気が滅入る、安眠できない、自立した生活ができない、仕事ができない、人間関係が壊れてしまった、排尿排便ができないetc。不幸なことに2型糖尿病と診断された時点で、8%の人がすでに何らかの神経障害を抱えているそうです。神経障害は患者教育がとても重要。機会があれば積極的に参加しましょう。
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