5年で売り上げ25倍!
梅酒の全国出荷量は2004年ころまでの2万klから、2010年には4万klに手が届きそうな勢い。梅酒は完全右肩上がりといえる。考えてみれば、ここ数年で梅酒専門のバーや居酒屋が出現したり、ごく普通の店でも梅酒のラインナップが充実してきている。梅酒が見直されているおかげで、梅酒そのものの味わいも良くなりバリエーションも増えた。中野BCはこの人気を確実に捕らえ、従来の梅酒造りの経験を踏まえながら新しい商品造りにまい進している真っ最中なのだ。
冒頭のボトル写真でわかるとおり、シンプルな梅酒のほか、梅酒をベースにしたカラフルでおしゃれでヘルシー感満載のバラエティー豊富なカクテル梅酒がすごい勢いで発売されている。驚くことに、20種の新しい梅酒商品を開発したここ5年間で売り上げはなんと25倍を記録したのだとか。3代目中野幸治さんが同社に戻ってからの実績だ。現在では、海外での注目度も高まって、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、オランダ、ドイツ、オーストリア、スイス、シンガポール、ロシア……など16カ国ほどに輸出をしている。
健康機能食品強化で、酒造りの屋台骨がゆるんでいた……
3代目となる代表取締役専務中野幸治さんは、東京の大学を卒業後、宝酒造に4年勤務し営業と製造の経験を積んだ。中野BCに入社した平成17年(2005年)は、国内の清酒市場が冷え込んでいる時期(現在もそうであるが)。「会社に戻って来た頃、全員が過去の栄光にぶら下がり、毎年売上が下がっているのに汗かいて実らずというような風潮だった」と振り返る。
2代目であり現社長の中野幸生氏の時代は、家庭での梅酒作りが主流で既成商品が売れなくなった。このときは海外販売にシフトし乗り切り、健康食品の強化を行った。しかし振り返ってみれば酒類部門の骨格がゆるくなっていた。経営的な危機感を感じざるを得なかった。
「僕の使命は、清酒『長久』という看板商品を磨き続けること」と3代目。
プレミアム清酒である『紀伊国屋文左衛門』をリニューアルし「造りへの思い入れ」を営業に伝え直し、ニーズに合った梅酒商品を開発し営業が使える「売り文句の提案書」を作成し、社内知識のボトムアップなど教育強化を始めたのだ。
女性のマーケティング部署の発足と若手社員の起用
「毎朝の会議で、商品デザインを決めるのは年配の男性社員。家庭で飲む酒を購入するのは女性であるのに、本当にこれでいいのかと悩みました」敷地には資料館や広大な「長久邸庭園」があり、四季折々の美しさをめでることができる
館内の健康コーナーでは、指先の毛細血管を見て、血液の状態を見てもらえる。あなたはサラサラ?
女性社員の起用をはじめ、清酒部門(河嶋杜氏)、梅酒部門(前述の山本杜氏)もみな若い。
「弊社は様々な酒類のカテゴリーを持ち、歴史も他の酒蔵より浅いため守るべきものも少ない。情熱的な若い男女スタッフがいて、研究開発できる研究所も社内にある。前にすすむための材料がすでに揃っていたんです」と語る。
若さに任せてがむしゃらなだけではなく、諸先輩に認められるための苦労と努力と敬意も忘れない。そのやりかたは、着実に前進への糧となっているようだ。
館内では買い物を楽しめる
中野BC株式会社
続いて、梅農家「月向農園」見学