明治時代の土地利用を見れば
土地の高低がストレートに分かる
『歴史的農業環境閲覧システム』とは独立行政法人農業環境技術研究所が明治時代の迅速測図(簡便な測量法とその成果の地図)の上に現在の道路、河川、鉄道などを重ねて作った地図。この地図、関東地方では明治13年(1880)から明治19年(1886)にかけて作成されており、当時の土地利用が記されています。
土地利用で主なものは水田、畑、樹木地、茶畑、灌木地、荒地、茅場、塩浜など。樹木地では杉、松など樹種が書かれていることもありますし、茶畑のバリエーションには桑畑も。詳しく見ると、表記は微妙に不統一の部分もあるようです。
さて、この時代はまだ、低い土地を埋め立てて住宅にするほど人間が多いわけではありませんから、土地利用は土地の高低に素直に従っており、低地、川辺には水田、それより高い土地には畑、茶畑、雑木林などがあります。そのため、この時点の地図を見れば、利用法からそもそもの土地の高低が分かります。建物が少ないので標高線がよく分かるのも、現代の地図とは違う点です
現在の地図と照合しつつ見ると、
面白さ倍増
2011年に最初にこの地図を紹介した時点では、元々の地図の不鮮明な、かつ縦書き、横書きが入り混じった古い地名、区名から場所を類推しなくてはいけない状態でしたが、2013年現在では地名が上に記載されており、かなり見やすくなっています。元図の精度もあり、縮尺を変えても、それほどクリアには土地利用が表示されない場所もあるもの、かなり分かりやすく、使いやすくなっています。また、ほぼ同様の地図を農研機構も『農業土地利用変遷マップ』と題して公表しています。こちらは地名の他、道路が見やすくなっているのが違いです。
高低のほか、私がこの地図で面白い~と思ったのは都心を中心に茶畑が多いこと。たとえば、赤坂御所の向かい、現在新青山ビルのあるあたりや渋谷駅から坂を上がったお屋敷街などは軒並み茶畑。今から思うと「?」ですが、これは政府が殖産興業のために奨励したから。知ってはいたものの、現在、ビルやお屋敷が並ぶ土地の時間を巻き戻すと茶畑……。頭の中でその図を想像すると、タイムスリップ気分です。
ちなみに、この地図の元となっている迅速測図、フランス式彩色地図が正式名称だそうで、地図の余白には地域の植生や風物などの絵も描かれており、地図というよりも絵画のような趣き。インテリアとしてもおもしろいので、新居祝いなどにお勧めです。