2011年5月18日に、NHKの人気番組「ためしてガッテン」でアンチエイジングのキーワードとして老化物質AGEが採り上げられていました。AGEはいろいろな物質が発見されていますので、当サイトではAGEsと複数形で表記することにします。

AGEsとは

文字通りに訳せば後期糖化最終産物となりますが、NHKでは終末糖化産物になっていました。advanced glycation end-productsのことです。

タンパク質と糖の間でおこる反応(メイラード反応)で生成された物質です。ブドウ糖がタンパク質に結合するときに、時間と共に数回にわたってブドウ糖の構造が変わって、初期(early)は可逆性だったものが後期(advanced)にはしっかりと結合して離れなくなります。それが最終生産物です。

glycation(グリケーション)とは酵素反応によらない糖化のことで、酵素による糖化glycosylationと区別して用いられます。このことは合併症や老化にとても大きな意味を持ちますが、詳しいことは後述します。

メイラード反応

香ばしい羊の丸焼きも、この匂いと焼き色はメイラード反応から生まれます

私たちになじみのあるヘモグロビンA1cでやさしく解説しましょう。ヘモグロビンA1cこそが、生体内でメイラード反応が起きることを証明した初めての物質なのです。

ブドウ糖(グルコース)や果糖(フルクトース)などの単糖は、構造的に還元性のあるアルデヒド基(-CHO)を持っていますから還元糖とも言われます。ブドウ糖は自然界の中にある最も還元性の低い安全な単糖ですが、それでも血液中の酸素を運ぶ赤血球のタンパク質、ヘモグロビンのα鎖、β鎖のN末端(-NH2)に結合します。これを糖化ヘモグロビン(HbA1)と呼びますが、その中で割合いの最も多いβ鎖のN末端にブドウ糖が結合したものがヘモグロビンA1cです。

健常者では糖化された、つまりメイラード反応をうけたヘモグロビンA1cの割合は4~5%ですが、6.1%以上になれば糖尿病と診断されるのはご承知のとおりです。

このヘモグロビンにブドウ糖が結合する反応は非酵素的に進むもので、ブドウ糖が多ければ多い程、つまり高血糖になればなる程、ヘモグロビンA1cは多くなります。

タンパク質の非酵素的糖化が元凶

私たちの体の中では、数千もの酵素が生きていくための化学反応を円滑に進めています。デンプンのような炭水化物を食べれば、アミラーゼとよばれる酵素が働いて最終的にはブドウ糖に分解されます。これらの酵素による化学反応は生物にとって必要な反応です。

ところが体の中では、酵素によらない、つまり体にとって必要のない反応がおきてしまうことがあります。

このような反応がコラーゲンなどのタンパク質で進行すると、架橋ができてコラーゲンが変質してしまいます。酵素なしの反応はゆっくりとしか進みません。ヘモグロビンのようなタンパク質は120日で入れ替るのでその影響を受けませんが、コラーゲンや目の水晶体のタンパク質は入れ替るのがとても遅いので、血管が傷んだり、皺(しわ)がよったり、白内障になったりと影響がでてきます。

高血糖状態が続くと、このAGEsが蓄積して、やがて合併症が現われるという仮説が有力です。体の中で酵素なしにタンパク質とブドウ糖が結合して架橋をつくりだす反応にメイラード反応とよばれる反応があります。

タンパク質やアミノ酸にブドウ糖のような還元糖を加えて加熱すると褐色に変わります。もう90年以上も前にこの現象を研究したのがフランスの化学者マヤール(英語読みでメイラード)です。

パンの皮がこんがりと焼き上がるのも、「みそ」や「しょうゆ」が寝かすことで熟成するのも、このメイラード反応です。この反応はもともと食品化学で研究されていたものです。

さて、老いることも高血糖を続けることもAGEsを蓄積することだと考えられるようになりました。食品を調理することも、タンパク質やアミノ酸に糖をまぜて加熱する操作ですから、加工食品にはメイラード反応で出来たAGEsがたくさん入っています。食べたAGEsは昔は吸収されないとされていましたが、今は体が吸収することが分かっています。

糖尿病者は体内でAGEsをどんどん作り、食物からもAGEsを吸収して体内にプールしているとしたら、かなりショックですね。次回はその話題にしましょう。糖尿病経口薬には、AGEsを分解するものもあるのです。お楽しみに!

■関連リンク
NHKオンライン (情報/ワイドショー>ためしてガッテン 2011年5月18日)
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