企業年金・401k/サラリーマンの年金・退職金

退職金のキホン的仕組み、企業年金との関係について

会社員でも、退職金について実はよくわかっていない人がほとんどです。これだけ覚えておけば役に立つ、退職金のキホンについてポイントを解説します。これでいつでも転職できる?

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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私は退職金がもらえるか?

今回は「退職金」の仕組みについて説明します。

いきなりですが、退職金って必ずもらえると思いますか? 統計調査などをチェックすると、退職金や企業年金制度の採用率は80~90%というところです。つまり、すべての会社で会社員に退職金があるわけではないということです。

社員に対する給料の支払いに関するルール作りや健康保険・労働保険等の加入義務などは定められていますが、実は退職金制度の設置は企業の義務として定められているわけではありません。

ただし、企業が退職金の支払いルールを定めたり、実質的に退職金を払う慣行がある場合などは、それ以降、退職金支払いは会社の義務となります。つまり、「義務ではないけど、スタートすると義務になる」というのが退職金のキホンということになります。

一般に、企業は創業当初は退職金制度を作りませんが、ある程度商売が軌道に乗ってくると退職金制度を作ります。歴史が長く、何百人も社員がいる会社は退職金制度があるのが普通です。

このとき注意したいのは、退職金制度が会社にあっても「対象者かどうか」という問題です。

一般に退職金制度は正社員のみを対象とします。派遣、パート、契約社員、嘱託社員のような働き方をしている場合は特段の定めがない限り、退職金の対象から外れてしまうのです。

最近では、フルタイムのパートにも退職金を設定する会社が増えていますが、全体としてはまだまだ少数派となっています。

こういうルールのチェック方法は、「退職金規程」のようなルールを確認することです。こうした諸規定は会社で働く人なら見られるようになっていますので、チェックするとすぐわかります。規程そのものがない場合は、退職金制度もないということです。

また規程の第1条か第2条あたりに、誰が対象者となるかが書かれており、これで自分が対象に入っているかがわかります。人事や総務の人と仲が良ければ、直接聞いてしまうのもいいでしょう。

退職金は自分の働き具合で決まってくる

次に、退職金や企業年金の金額はどうやって決まるか考えてみます。
以前、「あなたの退職金額・企業年金額は何で決まるか」というコラムを書いたことがありますが、大きく4つのポイントを指摘しています。それぞれ要点を紹介しますと、

1.勤続年数……基本的に長く働いて辞めた人のほうが金額が多くなる

2.仕事の貢献度や給与額
……よく働いて会社の評価が高い人ほど退職金額が多くなる。よく働いている人は毎月の給与額も多いので、給与が高かった人ほど退職金も多くなる関係が生じる。

(2の変形バージョンとして、定年退職時点での給与水準が退職金額に影響することもある。年功序列型の会社の場合、退職時の給与額のXカ月分が退職金、のように単純化することがある)

3.退職事由……会社都合(定年も含む)で辞める場合より、自己都合で辞めると退職金は減るのが一般的。早期退職制度などが実施される場合は逆に割り増しになることもある。

4.会社の規模や業界の水準……一般に大企業ほど退職金が多くなる(これは大企業ほど2で指摘した給料も高いため)。また同業他社が高いと退職金水準を揃えるため、高くなる。

のような要素が退職金額に関係してきます。

これらをポイントであったり計算式にして、退職金額を決めることになります。

もっと単純にいえば「あなたの仕事のがんばりが、あなたの退職金を増やす」ということです。退職金の原資は何もないところからぽっと生まれるわけではありません。あなた自身の働きが作り出しているのです。

毎月もらう給料やボーナスが、自分の仕事とつながっていることは誰でもわかることと思いますが、実は退職金もそういうつながりをもっているわけです。
(自分の働きが退職金を増やす、ということは、まだもらえていないとしても、退職金をもらう権利は育っている、ということです。これを受給権といいますが、この話は難しくなりますので、ここでは省略いたします)

計算式のチェックも、退職金規程を確認すれば載っています。

退職金の一部が企業年金化されることがある

ここまで「退職金」という言葉を使っていますが、厳密には「現金、一括」でしかもらえないものを退職金(退職一時金)と言います。会社を辞めたときには、すぐに現金で全額払うのが会社の義務となります。

会社によっては、「一時金か年金払いか選べる退職金制度」を用意していることがあります。これが「企業年金」です。一般には、「退職金制度を作る」→「その一部ないし全部を企業年金制度に切り替える」というステップを踏んで企業年金が作られます。

企業年金の場合、その名の通り、「年金」払いしてもらえるところが特徴です。もらい方は各社の規程によりますが、例えば「10年間、2カ月に一回振り込み」のような形で退職金を分割受け取りすることになります。

まとめてどかんと受け取ってしまうと、長い老後に計画的に使うことが大変ですが、年金受け取りすることで、日常の生活費の一部として定期的にもらい、使うことができるわけです。

また、年金受け取りをしている期間は、会社がお金を預かって運用して増やしつつ年金払いをします。このため、年金でもらう方が受取額が増えます。仮に1000万円を10年の年金払いでもらい、会社が2.5%の利回りを約束してくれた場合、1年あたりは100万円ではなく、113万円くらいもらえます。10年間の受け取り合計は1131万円になるほどです。

一般に、企業年金の利回りは手元で定期預金に預けるより高い利回りに設定されますので、年金受け取りをするメリットがあるわけです。

しかし、元々は退職金ですから、本人が希望した場合にはまとめて一括で受け取ることもできます。よって「年金だけど一時金にもなる」のが企業年金ということになります。

【関連記事】
・企業年金と一時金、受け取り方はどちらがトク?
・たくさんある?企業年金の種類を一度知っておこう
・あてになるのか? 退職金と企業年金

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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