溶血性尿毒症症候群の検査
血液検査、尿検査、便の検査が中心で、けいれんや意識がない症状がある場合は、MRI検査やCT検査が必要になります。血液検査では、赤血球、血小板が減少します。血小板は正常は10万以上ありますが、5万以下になってしまいます。赤血球が壊れるために赤血球に含まれるGOT、LDHという酵素、黄疸の原因であるビリルビンの数値が上がります。腎臓の機能が悪くなるため、老廃物の目安であるBUN(尿素窒素)が上昇します。血の止まり具合に検査すると、血が固まるまでの時間が延びてしまい、血が止まりにくいことを示しています。
尿検査では、蛋白尿、血尿が確認できます。便の検査ではベロ毒素があるかどうか、病原性大腸菌などの菌があるかどうかを検査します。菌を育ててどのような菌が検出されるかという培養検査で病原性大腸菌などを検出します。
溶血性尿毒症症候群の治療
病原性大腸菌の発生、増殖を抑えるためには、ホスホマイシンを中心とした抗生剤を使うことがあります。腎機能が低下しているために、透析を行います。透析の方法は、お腹の膜を使う腹膜透析と、一旦血液を体から出して透析の機械を使った血管透析があります。腎臓の機能がもどるまで透析を行い、老廃物を血液から除きます。毒素などを除く方法として、血漿交換という方法もあります。血液の液体の部分を入れ替える方法で、献血由来の血液製剤である血漿を使って、入れ替えを行います。
私自身も、以前、3次救急病院に勤務している時、溶血性尿毒症症候群の血漿交換を行ったことがあります。血漿は黄色ですが、交換した血漿は溶血のため赤褐色でした。私が対応した症例では、慢性腎不全にならずに治癒しましたが、腎臓が機能するまでの治療が大切になります。
血便のある下痢が出た場合、早期に抗生剤などを使って、菌を減らすことも大切です。もし生ものを食べて血便のある下痢が出たら、便を医療機関へ持参しましょう。
溶血性尿毒症症候群の予後
溶血性尿毒症症候群の死亡率は10%程度と言われていますが、けいれん、意識が無いなどの症状がある場合は、死亡率が上がります。乳幼児やおしっこが全くでない無尿である時には、けいれんなどの症状が出やすく、死亡率が上がってしまいます。溶血性尿毒症症候群になると、腎臓の機能が低下したままになってしまう慢性腎不全になるリスクは約5%と言われています。
溶血性尿毒症症候群の予防
できるだけ火を通して食べた方がいいでしょう
- 食材はできるだけ新鮮なものを選ぶ
- 食材の保管は冷蔵庫なら10℃以下、冷凍庫は-15℃以下にする
- 冷蔵、冷凍でもできるだけ早期に使い切る
- 生の食材を避ける(病原体大腸菌は牛肉関連、キャンピロバクターは鶏肉関連)
- 生の食材を使った時のまな板や包丁で野菜などを扱わない
- できるだけ食材を加熱する (75℃で1分間以上加熱すると細菌は死滅する)
- ミンチ以外は表面に菌が付着しているので、表面をしっかりと焼く
- ミンチは内部まで火を通す
- 食事の前の手洗い
- トイレの後もしっかりと石鹸で手洗い
- 井戸水もできれば、加熱する