子供の病気/その他の子供に多い病気

溶血性尿毒症症候群の原因・症状・治療・予後

ユッケによる集団食中毒が発生し、問題になっている病原性大腸菌。感染時に、命に関わる溶血性尿毒症症候群が合併症として起こることがあります。赤血球が壊れ、腎臓を始め、脳などの様々な臓器に障害を起こす病気です。溶血性尿毒症症候群の症状、治療、予後について解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

溶血性尿毒症症候群は特に、子どもに多く見られる病気です。子どもに多い原因は不明ですが、子どもの場合は血管の状態が毒素に反応しやすいのではないかと言われています。溶血性尿毒症症候群の基礎知識を解説します。

溶血性尿毒症症候群とは

溶血性貧血

赤い細胞が赤血球で、正常は丸いのですが、壊れていろいろな形をしています

溶血性尿毒症症候群(HUS)には3つの特徴があります。

■ 急性腎不全
腎臓の機能が低下するため、本来なら尿から排出される老廃物が血液中に残ってしまいます。名前の通り、尿の成分が体にとって毒になっているような尿毒症を起こします。

■ 血小板減少
様々な原因で血管に障害が起こり、血小板という血を止めるために大切な成分が血管に集まってしまいます。血小板が集まることで血が固まり、血栓ができてしまいます。血栓によって血小板が消費されてしまうことで、血管内を流れている血小板が減ってしまいます。

■ 溶血性貧血
血小板が集まって血の塊ができてしまうと、血管の内腔が細くなり、赤血球の通り道が狭くなります。その狭い部分を通ると、赤血球が機械的に壊れてしまい、血管内を流れている赤血球が減ってしまいます。

溶血性尿毒症症候群の原因

細菌やウイルス感染、薬剤、遺伝などがあります。特に有名なのが病原性大腸菌です。病原性大腸菌には様々な種類がありますが、ベロ毒素という血管を破壊する成分をもつ大腸菌である、O-157、O-111、O-128などが溶血性尿毒症症候群を起こします。

■ 細菌
  • ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)…O-157、O-111、O-128、O-26、O-1など
  • 赤痢菌
  • 腸チフス菌
  • キャンピロバクター菌
  • エルシニア菌
  • 肺炎球菌
■ ウイルス
  • エコーウイルス
  • コクサッキーウイルス
  • インフルエンザウイルス
  • エイズウイルス
■ 薬剤
  • 抗がん剤…マイトマイシンC、シスプラチン、ビンブラスチンなど
  • 免疫抑制薬…サイクロスポリンなど  
ベロ毒素産生性大腸菌に感染し、約10%程度が溶血性尿毒症症候群になると言われています。日本小児腎臓病学会の調査では、O-157が91.5%、O-111が3.2%、O-26が2.1%,、その他のO-1、 O-103、O-165が2.1%でした。

溶血性尿毒症症候群の症状

先行症状といって、病原性大腸菌などの感染症状である、腹痛、下痢、嘔吐、血便などがあります。数日~2週間以内に、突然、以下の症状が出現します。
  • おしっこが出ない乏尿、体がむくむ浮腫、高血圧、息がしにくく体がだるい心不全や呼吸不全
  • 顔色が悪く疲れやすい貧血症状
  • 赤血球が壊れることによる体が黄色になる黄疸
  • 血が止まりにくい、打ってもいないのに内出血(打ち身)が見られる出血傾向
  • けいれんや意識がなくなってしまう精神神経症状
次のページで検査と治療について説明します。
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