血小板減少性紫斑病とは?

女性医師

20~40歳台では女性が男性の約3倍多く発症します(厚生労働省より)

血小板減少性紫斑病とは、血小板がうまく働かなくなって、出血を止めることができなくなってしまう病気。厚生労働省の平成18年のデータによると、日本では、年間2300人前後、急性で800人前後、慢性で1500人前後の発症者がいます。

血小板減少性紫斑病は急性と慢性の大きく2つに分けられ、発病、診断から6ヵ月以内に治癒する場合を「急性」、6カ月以上、血小板が減少している場合を「慢性」としています。血小板減少性紫斑病の原因、症状、検査法、治療法について解説します。

血小板減少紫斑病の発生機序「血小板の働きと役割」

血小板

血小板が血管に集まって出血を防いでいます

血管内を流れる血液には、白血球、赤血球、血小板という成分が含まれています。血管が傷つくと、血管から血液が流れ出てしまいますが、このときに血管にできた傷を塞ぎ、血液の流出を止めてくれるのが「血小板」です。

血小板は、骨髄の中の巨核球という細胞からちぎれて、血液中に流れています。出血という緊急自体が起こると、その場所に集まって穴を塞ぐ、いわば補填剤のような働きがあると考えてください。この血小板が、血小板に対する抗体や免疫によって破壊されることで減ってしまい、出血を止めることができなくなった病気が、「血小板減少性紫斑病」です。

血小板減少性紫斑病の原因……ウイルス感染やピロリ菌の可能性も

原因は不明なことが多いのですが、子供の急性の場合、風疹や麻疹、水痘ウイルス、「突発性発疹」のHHV-6などの感染症の後に見られることがあります。

これらのウイルスに感染すると、自分の血小板に対して抗体が作られてしまい、血小板が脾臓で破壊されてしまうことがあるためです。このため、血小板が減少します。慢性型の場合は、胃潰瘍の原因であるピロリ菌が原因になっていることもあります。

男女差・年齢差は? 血小板減少性紫斑病の発症傾向

急性型は5歳以下の子供に多く、慢性型は51歳以降の大人に多く見られます。子供の急性型では男児に多く、大人の慢性型では女性に多いのも特徴です。

小児の急性型の経過を見ていると、なかなか血小板が増加しないことがあります。慢性型になってしまった場合は、様々な治療を試みることになります。また、この病気の発生前に何らかのウイルス感染があったことがはっきりしている場合は、急性型が多いようです。以前、突発性発疹や風疹後の血小板減少性紫斑病を治療したことがありますが、幸いどちらも急性型でした。

血小板減少性紫斑病の主症状……皮膚、口、鼻からの出血

血小板が減少し、出血が止まりにくい状態になります。体の部位別に見ると、それぞれ以下のような症状が起こりやすくなります。

■皮膚……赤い点々が拡がる点状出血、打ち身のような内出血である紫斑が出る
■口……歯ぐきからの出血。口の中の粘膜に点状出血が出たり、粘膜から出血したりする
■鼻……鼻血が20分以上止まらなくなる
■消化器……便に血が混じったり、黒い便(タール便)が出る
■泌尿器……尿に血が混じっている血尿や茶褐色な尿が出る
■子宮(女性の場合)……出血量が増える月経過多。月経時の出血が止まりにくくなる
■脳……脳内での出血、硬膜下出血が起きることがある

特に重症なケースは、脳の中の出血です。出血箇所によっては命に関わることもあるので、しっかり治療する必要があります。血小板減少性紫斑病の検査法と治療法について、以下で詳しく解説します。

血小板減少性紫斑病の検査法……血液検査と骨髄検査

上述のような出血症状が見られた場合、まずは「血液検査」を行います。血小板の数が減少していて、かつ白血球の減少や貧血がない場合、この病気が疑われます。血小板の数は正常では血液1μl当たり10万~50万ですが、この病気になると10万以下になります。2万以下になると、鼻出血や歯肉出血などの粘膜出血が見られ、血小板を上げる治療が必要になります。

少し専門的になりますが、検査では血小板に対する抗体、血液中に浮遊している抗血小板抗体、血小板にすでに結合している免疫グロブリン(PA-IgG)という抗体を調べます。血小板減少性紫斑病の場合、これらの検査で陽性になることが多いです。

また、骨髄検査を行うと、血小板が血液中に足りない分、血小板を作る巨核球だけが増えていることが確認できます。骨髄検査は、白血病などで血小板が下がっていないかどうかを確認するためにも行います。

血小板減少性紫斑病の治療法……ステロイド、除菌療法、免疫抑制薬

血小板が10万以下でも出血傾向がない場合は、無治療で安静にすることで経過観察します。出血傾向を起こす薬を避け、鼻をこすらないなど、出血しやすい行為を控えて過ごしてもらいます。しかし、血小板の数が2万前後以下になってくると、出血しやすくなるため、以下のような治療が必要になります。

■ステロイド
血小板を破壊する抗体を抑えるために、ステロイドを使います。ステロイドの使用方法は低用量(プレドニン0.1mg/kg/日以下で継続)から通常量(1~2mg/kg/日)で7~14日間。ステロイドを急に止めると体に様々な不調が出てしまうので、止めるときには1週間かけて少しずつ減量中止します。ステロイドの副作用を減らすために、高用量のステロイドを短期に点滴するステロイドパルス療法があります。

ただし、ステロイドを中止して1ヶ月~数カ月後にステロイドの効果が切れてきて、再び血小板が減少することがあります。

■免疫グロブリン
血小板を破壊する免疫物質(免疫複合体)を抑えるために、免疫グロブリンを体重1kgで1~2gの量を点滴します。急性の場合は1回で十分ですが、時々、血小板が数週間で効果が切れて減少してくることがあります。そのため、外来でも採血して注意深く診察していきます。

■血小板輸血
血小板が減少して出血傾向がある時には輸血します。ただし、あくまでも出血を止めるために使うことが多い治療法。輸血した血小板も破壊されてしまうので、一時的な処置であることが多いです。

■免疫抑制薬
イムラン、シクロフォスファミド、シクロスポリンAなどの免疫抑制剤を使用します。ステロイドより血小板が回復するのに時間がかかります。

■脾臓摘出術
血小板は脾臓で破壊されるため、脾臓を摘出します。一方で、脾臓には多くの免疫細胞が含まれているため、肺炎球菌の感染に弱くなってしまうというリスクもあります。5歳以上の子どもで行い、その後、肺炎球菌のワクチンを行います。このワクチンは大人で使う肺炎球菌の同じワクチンを使用します。

■ピロリ菌除菌
ピロリ菌が原因になっていることがあるため、内視鏡や尿素呼気試験、血液検査でピロリ菌が胃にあることが判明した場合、胃酸を抑える薬と抗生剤で除菌します。除菌する時には内服を中断せずに治療を完了することが大切です。

■セファランチン
麦角アルカロイドと呼ばれる物質で、免疫を調整する作用があります。

■血小板増殖刺激因子製剤

血小板を作る骨髄の中にある巨核球をふやす薬です。上の様々な治療で十分な効果が出ない場合、様々な治療ができない時に、血小板の数や症状から判断して、出血する危険性が高い時に、ロミプロスチムの1週間1回皮下注またはエルトロンボパグの毎日内服することもあります。血小板数が安定するまでは毎週、血液検査が行われます。血小板減少性紫斑病を治すのではなく、血小板の産生を促進する薬ですので、投与期間は、長期になることもあります。

血小板減少性紫斑病の予後・後遺症

急性型の大部分は自然治癒しますが、約10%程度は慢性型になってしまいます。慢性型の中の約20%はステロイドで治癒し、約60~70%は脾臓摘出術で治癒します。

しかし、残りの約5~20%は治療に難渋してしまうのも事実です。この場合は血小板の数が低いままになってしまうため、出血に対する注意が必要。慢性の場合、普段の生活をしている限りでは問題ありませんが、頭部打撲などには注意する必要があります。
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