ヨードより危険……対応が難しいセシウム、ストロンチウム
また、放射性ヨード以外に内部被曝が問題となるのは「放射性セシウム」です。セシウムは体内ではカリウムと似た動きをします。カリウムは細胞単位でみるとナトリウムと入れ替わりで細胞内に入る方向で動くため、全細胞に入る可能性があります。そのために放射性ヨードのように甲状腺だけを考えればよいのとは異なります。ただし、セシウムもカリウムと同様に尿から排泄されるため、体内にとどまる時間が短く、内部被曝の量は少ない傾向があります。放射性ストロンチウムも内部被曝が問題となります。ストロンチウムはカルシウムに似た動きをします。骨に沈着しつつ、尿から排泄されます。放射性ストロンチウムは癌の骨転移時の疼痛緩和治療に用いられています。この治療での副作用は骨髄機能の抑制による貧血です。
放射性セシウムと放射性ストロンチウムの長期的な内部被曝に対しての有効な防御方法はありません。連続的に摂取しないという消極的な対策をするしかないでしょう。
放射性ストロンチウムにも昆布?(対応は難しいのが現実…)
ウランの核分裂によって生じる放射性物質ストロンチウムが、水や土壌、海水や食べ物から検出される事態が起きないことを望んでいます。昆布などの海草に含まれる多糖類の一つにアルギン酸があります。アルギン酸は、ナトリウム、カリウムだけでなくてカルシウムにも結合できる性質がある食物繊維です。ストロンチウムはカルシウムと似た性質の物質なのでアルギン酸と結合します。アルギン酸は消化管内に入ったストロンチウムの排出を促進する作用があります。あくまでも食物に含まれるストロンチウムの排出するだけなので、骨からのストロンチウムの排出を促進するのではありません。放射性セシウムにはリンゴ?(対応は難しいのが現実…)
残念ながら昆布摂取で放射性セシウムも排出できるという報告はありません。果物に多く含まれる成分で、ジャムのとろみの成分は多糖類の一種の「ペクチン」です。リンゴから抽出したペクチン投与でセシウムの排出を促進したという報告があります。ただし子供に投与量した量から推計すると成人では生のリンゴの摂取では量的にはkgの量になりそうなので、あまり現実的な方法とはいえません。放射性物質の単位「ベクレル」「シーベルト」の違い
農作物(葉物)や原乳や水道水から放射性物質が検出されると、「ベクレル」という単位が使われます。ベクレル/kgなので重さに対する放射能を示しています。シーベルトはシーベルト/時間で、一定時間で受ける放射線による影響の量を表しています。報道でベクレル/kgとシーベルト/時間の換算を解説者が求められていることがありますが、放射性同位体により出す放射線の種類が異なるとシーベルトの計算が違ってきます。吸入で入った場合と、経口で摂取した場合でも換算式が異なります。そもそも単位の系が重さと時間で異なるので単純な換算は無理です。別々に理解するようにしましょう。原発だけではない! 医療現場で活躍する放射性物質
現在報道では特に触れられていませんが、原発に限らず、医療現場でも今回問題になっている「放射性物質」は活躍しています。検査、治療、輸血などの際には、放射性物質(放射線同位体)が使われているのです。例えば輸血に関しては、輸血する前に血液に放射線を照射し、リンパ球を殺して輸血後の免疫による副作用を防止しています。地震、津波による被災地では医療関係の施設(病院、血液センター)も大きな被害を受けました。医療に用いる放射性物質は、放射線漏れを防ぐために厳重に容器に保管されているのでまず大丈夫だと思いますが、原発に限らず、これらもいわゆる「放射能漏れ」につながる可能性はあるのです。今回の震災でも、被災地で容器が破損していないことを願います。放射性物質は、決して特殊で原発だけのものではありません。正しく理解して、冷静に対処するようにしましょう。