離れていれば放射線自体は怖くない

未来があると信じていました・・・

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報道でも、「放射能」と「放射線」が混同して使われていることがあるようです。放射能は放射線を出す性質を持っていることを意味しています。放射線を出す性質を持っているのは放射性物質(= 放射性同位体)です。

放射線は、発生している線源から距離の二乗に反比例して減衰します。線源から1kmと10kmを比べると1/100になり、1km と100kmを比べると1/10000となります。現在は政府から避難や屋内退避等の連絡を受けているエリア外は、線源から十分離れていると考えられますので、放射線による被曝(外部被曝)に関して恐れる必要はありません。

放射性物質(放射性同位体)と花粉の共通点・相違点

原子力発電所の原子炉内では、核分裂によって自然界には微量にしか存在しないさまざまな放射性物質が生まれます。放射性物質も花粉も、同じように風によって運ばれて人体に影響を及ぼします。

花粉の場合は、花粉症でない人に付いても何も起きません。花粉症の人の場合は、目のかゆみや充血、鼻水、鼻づまりの他、消化器系、皮膚などで症状が出ます。消化器系で花粉の粒子が消化されずに吸収されることはないので、体内に花粉が直接に取り込まれることはありません。

放射性物質は、皮膚についた場合は洗って落とすことができます(除染)。しかし、粒子が小さい場合やガス状の場合は肺に到達してしまい、呼吸器系で内部被曝が起きます。食物に入っていた場合は、消化管から吸収される可能性があります。吸収された場合は内部被曝が起こります。内部被曝は放射性元素の種類によって異なります。同じ元素の放射性同位体でも質量数(陽子数と中性子数の合計)が異なると放射線の半減期(放射線が半分になる期間)が異なります。

核分裂でできる困った放射性物質

未来があると信じましょう!

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ウランからできる核分裂生成物はいろいろあります。大きく分けると、放射線を出さない「安定同位体」と、放射線を出す「放射性同位体(放射性物質)」の2種類が生成されます。質量数が140と質量数が90に近い元素ができる傾向があります。前者は今話題になっているセシウム、ヨウ素(ヨード)。後者はストロンチウムがあります。

被曝した場合……ヨード摂取で甲状腺がんは予防できる?

臓器でヨードを使うのは甲状腺だけなので、食べ物から体に入ったヨードは甲状腺に集まります。汚染された食品や水を通じて放射性ヨードの内部被曝が起きた場合、ヨード摂取を行うと甲状腺がんを予防できると考えられています。ただし摂取量、摂取対象年齢ともに規定されており、40歳以上は対象外です。ヨード剤は通常は医療機関には常備していませんが、各自治体が備蓄しています。

しかし、ヨード摂取で予防効果があるとされているのは40歳未満の甲状腺がんの発症だけです。他の臓器の癌や白血球の減少などに対して予防効果があるわけではありません。

放射性ヨードとデトックスの関係

普通のヨードは放射線を出さない安定同位体。これに対して放射性ヨードは放射線を出す放射性同位体(放射性物質)です。実は、放射性ヨードは今回のような原発事故に限って現れる物質ではありません。例えば、甲状腺疾患の検査と治療を行う場合、今回問題になっている放射性ヨードを医療機関で使います。

これらの検査や治療を行う場合、日本人は予め食事制限を行います。通常の食生活のままでは海草を含む海産物から大量のヨードが摂取されているため、検査や治療で使う放射性ヨードがうまく甲状腺に取り込まれないためです。ヨードの一日の必要な摂取量は多めに見て0.2mg。日本人は通常その数倍摂取しているので、医療用であれ放射性ヨードを取り込みにくい状態になっています。そのため検査や治療前の1~2週間は、海草や魚などのヨードをできるだけ摂取しない「ウォッシュアウト」の期間が設けられるほどです。

昆布出汁でも期待できる放射性ヨードの体外排出

昆布出汁は直ぐにできます

昆布出汁は直ぐにできます

やや民間療法のように聞こえてしまうかもしれませんが、考え方は単純です。例えばコップにゼリー状のものがなみなみと入っているのを想像してください。その上からインクを一滴垂らしても、インクのほとんどが入る余地がないままコップの外にこぼれてしまって、中身がインクに染まることはありません。これと同じで、あらかじめ体内に十分な量の通常の害がないヨードがあれば、有害な放射性ヨードの影響も受けにくいことになります。

現在、原発事故で流出した放射線ヨードに対し、ヨード剤の投与が薦められていますが、この対処法は日本以外のヨード摂取が少ない国で放射線被曝が起きた場合に有効なものでしょう。日本のようにもともとのヨード摂取が多い国では、ヨード剤の効果は低く、対応しなくても健康被害は心配ない可能性が高いと考えられます。

身近でヨードを含む食材で、調理法を含めて大量のヨードを摂取できるのは昆布出汁。甲状腺の検査時には、避けなければならない食品ですが、無駄な分のヨードを体に溜め込まないという意味では、効果が期待できると思います。今回の場合は、放射線ヨードを毒、通常の害のないヨードを解毒剤に例えることができます。医療現場に「デトックス」という言葉はありませんが、昆布出汁で放射性ヨードを排出(デトックス)できる、という表現はある意味で正しいと言えます。また、わかめもヨードの含有が多い食材なので昆布出汁で具にわかめを入れる取り合わせも良いですね。

とはいってもいざ被曝をしたあとに、ヨード剤の代わりに昆布出汁やわかめを使うとすると、成人では乾燥重量で50gから100g程度が必要な計算となります。日常的にほどよく食べていて被曝の健康被害を抑えることは期待できますが、いざ深刻な被曝をした場合に、ヨード剤の代用として昆布やわかめを摂取するのは量的には非現実的な考えです。

【注意】 妊婦はヨードを取り過ぎないで!

放射能、放射線の話題に関して、一番関心を持つのは妊婦の方だと思います。妊婦の方は、ヨードの摂り過ぎに注意して下さい。新生児に起きる甲状腺の病気で先天性の甲状腺機能低下症(クレチン病)があります。妊婦のヨードの摂取量が多いから発症する訳ではありませんが、この病気と妊婦のヨード摂取量が関係することが報告されているからです。

放射性セシウム、ストロンチウムについては次ページで解説します。いずれも効果的な対応をお話しするのは難しいです。