自然界の放射線

日常生活の中でも私たちは外部被曝しています。日本人の年間被曝量は1.7mSvほどです

前回は「外部被曝と内部被曝の違い」について解説しました。被曝による影響を考えるときに大切なのは、被曝したかしないかではなく、どれだけ被曝したか、という量の問題です。私たちはもともと周囲に存在する放射性物質、放射線から被曝はしていますが、それが今回の原発事故によってどの程度増えてしまったのか?ということが問題になります。

放射線の単位であるシーベルトとは

放射線を体に浴びた量を表現するのがシーベルト(Sv)という単位です。放射線被曝による体への影響を表す単位で、体にどれだけの影響を与えるかを示す値となります。シーベルトの値が大きくなればなるほど、体への影響も大きくなります。

繰り返しになりますが、もともと放射線が我々の周囲に存在している以上、周囲の環境から発せられる放射線の影響を我々は大なり小なり受けています。その値は、日本人の場合は平均で年間に1.7ミリシーベルト(mSv)。1シーベルトではありません。1ミリシーベルトは、1シーベルトの1000分の1です。細かい数字ではなく、だいたいどの程度の桁の数値なのかを覚えていただければと思います。

この「1.7」という数字の中に、それぞれ外部被曝からと内部被曝からの影響が含まれます。もう少し細かく言うと、外部被曝の中には、宇宙から飛んでくる放射線と大地から飛んでくる放射線の影響が含まれます。内部被曝の中には、空気中に含まれる放射性物質を吸うことによる影響と、食物の中に含まれる放射性物質を食べることによる影響が含まれます。

世界平均よりも低い日本国内の年間被曝量

実はこの1.7という数値は、世界平均と比べるとやや小さめです。世界平均は年間に2.4mSvと言われており、この差は場所により空間線量が異なることなどから生じます。日本平均は年間1.7mSvと言っていますが、おおざっぱに言えば東日本と西日本では空間線量率が異なり、結果的に外部被曝量は異なります。西日本の方がやや高めであると考えられます。

自然放射線による年間線量

自然放射線による年間線量。世界平均2.4mSvの内訳


年間被曝量は、アメリカでは平均3mSv、ヨーロッパは地質の影響で4~5mSvとも言われています。世界中のいくつかの場所では、年間10とか20mSv、またそれ以上の場所も存在し、それぞれの場所に居住し何の問題もなく日常生活を送られている方がいらっしゃいます。

放射線被曝量が年間1ミリシーベルト増えることでの健康被害

日本人が通常浴びている放射線量が少なめだからと言って、不必要な放射線を無駄に浴びて良いと言うつもりはありません。しかしながら、以上の数値からおわかりのように、例えば年間1.7mSv浴びていた人が、今回の原発事故の影響で年間にさらに1mSv浴びることになったとして、それが原因でがんになったり、体への影響が出るということは、全くないと考えてよいことはご理解いただけると思います。現在、年間追加被曝量が1mSv以下になるように除染が行われていますが、その是非はさておき、1mSv以上増えると健康被害が出てそこに住めなくなる、という話ではありません。

実際に、日本からアメリカに移り住んだら、放射線の影響を受けて鼻血が止まらなくなった……などといった話は聞いたことがないと思います。仮に年間2.7mSv被曝することになってしまったとしても、ヨーロッパに住む平均よりも少ない被曝量です。

なお、追って解説いたしますが、福島県内でもこの年間追加1mSvを下回っている子供の方が現在大多数であるということも付け加えたいと思います。

日常生活と放射線

日常生活と放射線


繰り返しになりますが、被ばく量が増えても問題が何も無いという話ではありません。しかしそれは「放射線の健康に対する影響」で解説した通り、1mSv、2mSv、3mSv……といった単位の小さな数値での大小ではなく、もっと桁の高いときの話です。1~2mSvも確率として計算すればリスクゼロとは言えないという主張もあるようですが、放射線以外にもたくさんの様々なリスクが存在する現実社会の中で、住む場所を少し変えるだけで変わる範囲の被曝量の影響を議論している……という認識は必要だと思います。

ただ、今回の福島原発事故で、以前に比べて放射性物質がばらまかれ、空間の線量が上昇し、食品汚染が起きたりしていることは事実です。その増えたと思われる被曝量がどの程度か、内部被曝、外部被曝に分けて今後解説していきたいと思います。
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