浴びた放射線量で変わる健康への影響

CT

しきい値以下の被曝としてイメージしやすいCT。CT検査で髪が抜けたり鼻血が止まらなくなることがあるでしょうか?

前回記事「重要視すべきは放射線有無ではなく被曝の「量」」では、放射線被ばくの影響は0か1の話ではなく、量の問題であることをお伝えしました。それでは、どの程度の量を浴びた場合に、どのような影響が出ることが現在分かっているのでしょうか。

放射線の健康に対する影響は、放射線を浴びた量により「確定的影響」と「確率的影響」に分類されます。少し難しい言葉かも知れませんが、一つずつ見ていきましょう。


確定的影響とは……放射線に一度に大量被曝した場合

確定的影響とは、短期間にある放射線量以上(しきい値といいます)を被曝することであらわれる症状をいいます。

一度に約200mSv 以上の大量の被曝をした場合、個人差はありますが、
  • 白内障
  • 一時的な脱毛
  • リンパ球の減少による血液を作る力の低下
が起こることが確認されています。やけどや出血、下痢なども含まれます。

放射線の健康に対する確定的影響

放射線の健康に対する影響 (緊急被ばく医療研修ホームページより)


確かに大量の放射線を浴びると、上記のように血液の正常機能が害され、血が止まりづらくなったり、消化管の障害により下痢になったりすることがあります。これを「急性放射線障害」といいます。

これらは200mSvやそれ以上の放射線被曝をした場合の話であり、10mSvやそれ以下の線量では起こりえません。確定的影響は怖いものが多いですが、一度に200mSvやそれ以上の大量の放射線量を浴びたときに起こり得ることであり、しきい値以下の放射線量を浴びた場合には起こりません。

例えば、読者の皆様の中にはCTを撮影したことがある方がいらっしゃるかもしれません。CTは体内の構造を知るために放射線を用いますが、撮影する場所によって、数mSvから、10~20mSv程度の被曝をします。頭のCTを撮影して、脱毛が起こったり、鼻血が止まらなくなったり、腹部のCTを撮った後に下痢になったりすることがないことは、皆さんも経験からご存じだと思います。しきい値以下の被曝があっても、確定的影響は起こらないのです。

もちろんCTを撮影すること自体は被曝を伴います。医療行為の中で、必要と認められる場合のみに使用されるべきであり、不必要に何度も何度も撮影をすることは正当化されません。CTを撮ること自体が全く何の危険性も考える必要が無いという話ではありません。ただ、放射線を浴びることと、鼻血や下痢を結びつける方がいらっしゃいますが、それは本当に大量に浴びた際の問題であり、今現在の福島県などで生活する上において考える必要は全くないということです。(桁が違います。)

確率的影響とは……放射線被曝から一定期間後に起きうる

一方で、確率的影響とは、被曝から一定期間後に、ある確率で起こる、発がんなどの影響を指します。

放射線の健康に対する確率的影響放射線の健康に対する確定的影響

放射線の健康に対する影響 (緊急被ばく医療研修ホームページより)


もともと日本人は 1000 人中 300 人の方が、がんで亡くなっていますが、国際放射線防護委員会(ICRP)の試算によると、蓄積で 100mSv を1000 人が受けた場合、がんで亡くなる方が 5 人増加(0.5% 増加)し、305 人になると計算されています。

放射線によるがん・白血病の増加

放射線によるがん・白血病の増加 (放医研ホームページより。http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i13)


100mSv 以下の線量では、被ばくによるがんの増加は認められていません。あったとしても肥満、喫煙、飲酒などの生活習慣などによる方が体への影響は大きいと考えられています。もちろん、だからといって、放射線の影響を考えなくて良いという話ではありません。余分な被曝は避けるべきであり、ICRP は、100mSv 以下の線量であっても、がんの死亡率との間に比例関係があると考えて、達成できる合理的な範囲で線量を低く保つように勧告しています。世の中でリスクがゼロという状況はあり得ませんが、存在する数々のリスクの中でバランスをとらなければならない、という意味で合理的という言葉が使われています。

また、様々な研究から、同じ線量でも、一度に被曝するより、長い時間かけて被曝する方が、体への影響が小さいと言われています。自然放射線であっても人工放射線であっても、受ける放射線量が同じであれば人体への影響の度合いは同じです。

放射能被曝の子孫への影響

放射線被曝による子孫への遺伝性影響についても研究されていますが、100mSv 以下の被曝量で遺伝性影響が人に現れたとする証拠は、これまでのところ報告されていません。
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