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避難所生活、迷子のペット…ペットの防災対策と心構え(2ページ目)

3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震では予想をはるかに超える被害が出ています。災害時は人間はもちろんのこと、多数のペットも被災します。自然災害はいつやってくるかわかりません。ペットと暮らす私達は日頃どんなところに気をつけたらいいのでしょうか。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド


万一の時のことを考えて日頃から準備を

災害はいつやってくるかわからない

災害はいつやってくるかわからない。万一の時のための準備はしておこう。

今回の大地震で被災された方々からも、「まさか自分の身にこのようなことが起こるとは思わなかった」という言葉が聞かれます。耳慣れた言葉ではありますが、災害はいつやってくるかわかりません。日頃からの準備と心構えを怠らないようにしておくことが、私達ができるベストのことでしょう。では、ペットと暮らす私達は、どんなところに注意したらいいのでしょうか?


ペット用の避難袋を手近なところに用意しておく
避難袋の中には主に以下のようなものを入れておくといいでしょう。その他、必要に応じて準備を。

*フード、水、食器など
実際に救助隊が来るまでにはそれなりの時間がかかることを考え、少なくとも3日分以上は用意しておきましょう。非常時に便利なのは、やはりドライフード、次いでレトルト製品や缶詰など。療法食を使用しているコの場合は、それも忘れずに。いざという時に食べられないでは困るので、日頃から安全な範囲内でいろいろな食材を食べられるように慣らしておくことをガイドとしてはお勧めします。

*リード、首輪、ハーネス、迷子札など
普段使っているものの他に予備としてのリードや首輪類も念のために用意を。

*常備薬、消毒薬、包帯、ピンセットなど
愛犬の健康状態に合わせた薬などとともに、愛犬用の救急セットを一つ作っておきましょう。

*鑑札、狂犬病予防注射済票、ワクチン接種証明書など
ワクチン接種証明書は実物でなくコピーでもかまいません。避難所およびペット用の救護施設では、感染症の予防という観点から、狂犬病や各種ワクチンの予防接種が済んでいない場合、またそれが証明できない場合には受け入れや預かりが難しくなってしまうこともありますので、体に支障のない限りは各種の予防接種は済ませておきましょう。

*愛犬の写真、健康手帳など
愛犬の身元を示すもの、どんなコであるのか、病歴、治療歴、といった基本的情報を記した手帳やメモ書きも用意しておくと、避難生活での健康管理や万一愛犬とはぐれた時など役に立ちます。最近では携帯電話でも写真やある程度のデータを保存できますので、携帯の中に愛犬の基本情報を作っておくのも一つの手です。

*バスタオル、毛布、トイレシート、新聞紙、ビニール袋など
いわゆる生活雑貨の類はなにかと必要になりますので、忘れずに。

*ブラシ、コーム、水のいらないシャンプーなど
避難生活の状況によってはお手入れができることもあるでしょう。特に避難所内にペットを連れて入れる場合には、周囲への気配りとしてブラッシング程度は必要になるかもしれません。

*犬用の靴
これは余裕があればということですが、ガラスなどが飛び散って危険な場所を歩かなければならない状況も考えられますので、犬用の靴を用意しておいてもいいと思います。ただ、いきなりはかせると嫌がるでしょうから、普段何回かはかせてみて慣らしておくことは必要でしょう。

迷子札など愛犬の身元を示すものは常に身につけさせる
災害時でなくとも迷子になったペットが保護された時、迷子札さえつけていれば家に帰れるのに…というケースが多くあります。迷子札は常につけておくように心がけましょう。その他、マイクロチップを体内に埋め込むというのも一つの方法ですが、日本では思った以上には普及してないのが実情。ただ、地域的に見ると阪神地方などこれまで大きな災害が起こった地域ではマイクロチップの普及率が高くなっています。やはり、実体験があるからこそ、そういったものの必要性が実感できるのでしょう。あの時そうしておけば…と災害が起こってから思うのではもう遅いのです。愛犬が行方知れずとなって後悔する前に、迷子札やマイクロチップについて考えてみてください。

リードは常に手の届くところに
とっさにリードをつけて逃げられるように、すぐ手の届くところに置いておくようにしましょう。災害になると犬もパニックになりますから、暴れてリードが外れたりしないように、緩過ぎず、かつきつ過ぎない程度のものの用意を。場合によっては、室内にいる時も常にリードをつけておくというのもいいでしょう。

キャリーケースなど犬を運べるものを手近なところに用意しておく
自力で歩けるコはともかく、キャリーケースやスリングなどがあると移動手段としてのみならず、寝場所として使うこともできますので便利です。また、ペット用の救護センターなどに預ける場合にも、多くがケージやキャリーケースが使用されますので、普段からこうしたものの中に入って寝られるように慣らしておくことも大切なポイントとなります。
また、高齢であったり介護が必要なコの場合には、ローラーのついたカートなど、そのコの状態に合わせた移動手段を考えておくといいでしょう。

基本的なしつけは入れておく
たとえ避難所でペットを受け入れてくれたとしても、ワンワン吠えっぱなしだったり、周囲に迷惑がかかる行動をとるようでは困ってしまいます。呼んだらすぐに来るように、スワレやマテなど、基本的なしつけはきちんと入れておきましょう。広い意味で言えば、基本的なしつけは愛犬自身の命を守るためにも必要です。

愛犬の生活スペースに危険がないかもう一度チェックを
今回の地震でガイドの部屋も洋服ダンスが傾き、本棚の本は飛び出して、いろいろな物が落ち、崩れてしまいました。愛犬の周りに危険な場所や物はありませんか?もう一度チェックをしてみてください。

避難場所を知っていますか?
自宅が安全である場合はいいのですが、避難しなければならなくなった時、どこに避難すればいいのか事前に知っておきましょう。今回の地震でも多くの人達が家族や友人と離れ離れになり、互いの居場所を知ることさえ困難な状況となっています。家族や友人同士で、どこに避難するのか、どこを待ち合わせ場所とするのか、決めておくことも大事だと思います。そして、いざ逃げるとなったら、何を持って、どう行動するのか、など日頃からシュミレーションしておくことも必要でしょう。
なお参考までに、自治体によってはペットと一緒に避難する際の注意事項などを公式サイトで公開しているところもある他(例:東京都板橋区「ペットと一緒に避難所を利用される方々へ」)、東京都町田市ではペットと一緒に避難することを呼びかけ、ペット同行での災害訓練も行われたことがありますので、自分が住む地域ではどうなっているのか一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

助け合える仲間や友人をつくっておく
愛犬家の間では同じ犬好きとして、同じ犬種のファンとして、各種競技会の仲間として、サークルなどを通じ横つながりをもつ人達が多くいますが、いざという時に助けてくれるのがやはり友人や親族、ご近所さんなどです。場合によっては愛犬と一緒に避難生活を送ることができずに、やむなく預けることを選択しなければならないこともあるでしょう。人は助け、助けられ。今回の地震でも多くの善意が寄せられています。普段から家族はもとより、友人やご近所さんとのつきあいも大切にしたいところです。

避難する時には

では、実際に避難しなければならなくなった時、どう行動したらいいのでしょう?

できる限り一緒に行動する
その時の状況によっては犬だけで逃がしたほうがいいと思える場合もあるでしょうが、基本的には一緒に行動しましょう。キャリーケースやスリングなどが使えるコであればそういうものに入れて運ぶか、中型・大型犬であればリードをつけて一緒に逃げます。人も犬もパニックになりますから、リードでコントロールできるようにできるだけ注意を。この時、伸縮性のあるリードであるとかえって危険を呼ぶことも考えられるので、しっかりとした短めのリードを使用するのがいいでしょう。
室内犬に対して、逃げることさえままならない状況に追い込まれがちなのが外飼いの犬達です。ある年の台風では、川が氾濫して住宅街が水浸しになったことがありましたが、台風が過ぎた時にはつながれたまま逃げることもできずに水死したコ達の姿がありました。まずは人間の命が優先されます。しかし、ほんの少しの余裕があるなら、せめて逃げられるように鎖や綱を外してあげ、一緒に行動して欲しいものです。

考えたいこと

この大災害を目の前にして、ガイドは思うことがあります。近年では多頭飼いするお宅が増えてきており、犬を愛でるということはとてもいいことだと思う反面、本当に最後まで面倒を見ることができるのだろうかと正直なところ不安を感じることもしばしばあります。人間で言えば年子のような状況で多頭飼いをしている場合には、将来的にそのコらが次々と老犬介護状態になる可能性もあるわけです。また今回のような大きな災害が起こった場合には、複数のコを連れて避難するだけで一苦労でしょう。これはなにも多頭飼いを否定するような意味合いのものでは決してありませんので、その辺誤解なきように。ただ、いろいろなことを想定し、自分に本当に飼えるか?と真摯に考えた上で多頭飼いを決めて頂きたいと思っています。少なくとも、衝動飼いや一時の気の迷いなどで多頭飼いを選択することのないように。自分が守れる分だけの命を。それも一つの愛情だとガイドは思うのです。

犬とは素晴らしい生き物

今回の大震災には世界各国から救援の手が差し伸べられ、国内の救助犬はもとより、海外からやって来た救助犬達も活躍しています。危険な地域に足を踏み入れ、人間の救助隊同様、それこそ命を張って救助活動をしてくれています。犬は人間のために働ける動物です。人間を助けるために働いているのも犬、避難所で家族とともに不安の中過ごしているのも同じ犬。「犬ごときのことで…」と心ない言葉を口にする人達も中にはいるようですが、どうか同じ命として彼らを受け止めてあげて欲しい、そんな心の余裕をほんの、ほんの少しでいいですから抱いて頂けたら嬉しく思います。

そして、一つでも多くの命が助かりますように、この苦難が乗り切れますように、切に、切に願いながら、ガイドも一人の人間として、自分にできることを…と思っています。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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