ローコスト住宅/ローコスト住宅の実例

安さの理由~ローコスト住宅の裏側を訪問取材(1)(2ページ目)

不況で右肩上がりが見込めない低収入時代。でも結婚や出産でマイホームを持ちたいという願いは、いつの時代も変わらないはず。しかも戸建て志望が強い昨今の20~30代なら尚更。そこで気になるのは、"1000万円以内で買える”と広告で見かけるローコスト住宅。「安くても安全性は大丈夫なの?」「どういう仕組みで安くなるの?」と、実際にローコスト住宅企業に訪問取材。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド

規格型ではなく自由設計で555万円

CM

「ゴー!ゴー!ゴー!」あのCMの裏側には…

埼玉エリアを中心に1981年の創業から分譲住宅をメインに伸ばしてきた「アイダ設計」。その同社が最近になって注文住宅に力を入れてきている。そして創立30周年記念商品としてリリースされたのが、美川憲一さんの「go!go!go!」CMでお馴染みの「555万円の家」(本体価格)。これが規格型ではなく自由設計で可能になるというから驚きだ。

「555の家」をリリースした理由について、松尾執行役員部長はこう話す。「30年前の創業時に建てていただいたオーナーや団塊世代から、『そろそろ築30年近く経ち、建て替えたいんだけど、定年後に新たにローンを組むのは重荷」という声やニーズが寄せられ、弊社のオーナー様のセカンドライフに新しい舞台を無理なく提供したかった、という社長の想いを形にしたものです」

ブラーボスタンダード

「555万円の家」から実際は「ブラーボ スタンダード」の注文住宅で建てるケースが多い

同社の注文住宅の需要層を聞くと、団塊シニア世代がほとんど。「定年を迎え、退職金などでお金は持っている。自宅も築20~30年が経ち、大地震への耐震性や隙間風で夏暑く冬寒い家にも不満は正直ある。しかし30年前の家をリフォームで高スペックにするには、かなり大変で費用も1000~2000万近くかかる。しかも子供も巣立って広い家はいらない。ならば現在の性能表示や省エネ基準に合ったコンパクトで高性能な新しい家を1000万弱で建てたいというニーズは実に多い」(松尾部長)。

確かにこの世代のニーズをよく捉えているが、このリーズナブルさは目下、切実にマイホームを必要としている今の一次取得層のニーズも合致するのでは?と聞くと、「はい。今の夫婦+子供1~2人の若年ファミリーには必ずしも4LDKは必要ないのではと思います。実際、間仕切りを取り払ったオープンなプランが人気がありますし、子供1人に対して子供部屋1つを必ず与えるべきという既成概念も持っていません。むしろ、子供部屋はいらないという認識に変わっているようにも思います」。

コンパクト・エコカー的発想

この若年層ニーズと「555」の接点を、コンパクトなエコカー人気に例える松尾部長によると、「バブル世代と違って、高級車や輸入車を乗らなければ、車を持たなければ、という固定概念に縛られない世代。家もこうでなきゃ、フルスペックのエコでなきゃ、という固定概念がないように思います。構造躯体の最低限の耐震性・耐久性・省エネ性が担保されていれば、あとは好きなエコ設備をつけたり、設備のグレードアップを自分カスタマイズで選べるほうが、今の若年層に合っていると思います」

工場

自社プレカット工場も経費や時間のロスカットにつながる

「555万円の家」は商品名ではなく自由設計なので、同社の既存のベーシックブランド「ブラーボ スタンダード」で建てることになる。実際、現実に「555万円」で建てる人は少なく、このベーシックプランに各々の土地の広さや床面積、設備や仕様を加えていくとおおよそ700万(平均床面積14坪・2階建ての場合)円弱になるとか。それでも、省エネでは長期優良住宅の認定基準と同等かつトップランナー基準をクリアし、構造躯体の35年保証システムなどの性能・保証がついているとあらば、十分に安い。

どうしてここまで安くできるのかという質問に対し、「第一に、構造躯体材を他の工場や大工さんに頼らず、自社プレカット工場で経費や時間のロスを徹底的になくしています。ミリ単位の加工精度により建築現場でぴったりと組み合わせ、施工精度と作業時間のロスをなくしています。第二に、展示場には出展せず、お客様の家を現場見学会の会場にしてするなどして、薄利でも維持できる企業体質にしていることが強みではないでしょうか」

もちろん、以上はガイドが限られた時間内で得られた回答なので、実際に家を建てる人は、もっと企業にいろいろ質問したうえで理解・納得して最終判断してほしい。いずれにしても、ローコストで建てたいならば「なぜ安くなるのかの根拠」と、見えない部分の「構造」「性能」「建築後の保証」「加入制度」などを重点的に確認すると一つの指標が見えてくるかもしれない。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます