細い階段を上って、右はカフェスペース。左に曲がると器の店へ。
ももちどりといえばパンケーキが有名なカフェとして、カフェ好きにはもうおなじみとなっているようですが、そういえば、カフェで使われている器も手仕事のものが多く、ひとつひとつ丁寧に扱われ、店主のそこはかとない愛情が感じられました。今回なぜ器の店を?と訪ねると、なんと「本当は器の店をやってみたかったの」と店主の関谷智恵さん。
「かつて雑貨店で働いていたとき器担当をしていて、そこから器の魅力にはまってしまって。クラフトフェアや陶器市などにもよく通っていました。器の店をやることは、実は昔からの夢だったのですが、あまりに憧れが強すぎて、自分にはまだまだ恐れ多いと、心の中だけで密かに温めていたんです。パンケーキももちろん大好きで、カフェはその美味しさを伝えたいこともありますが、器といつも寄り添って、料理を乗せることで器のよさを一層表現できる空間、という想いもあるんです」。
お店の名前は「coju(コジュ)」。ももちどり(うぐいすの別名だそうです)が止まるための古くて小さな木”古樹”をイメージして名付けました。
カフェ同様シンプルな空間にお気に入りの器が並ぶ。
そしていざ借りてみると、室内は目も当てられないほどのボロボロ状態。壁は剥がれ、木は腐って匂いが抜けず、何度もモルタルを塗り直して徹夜の作業が続いたそうです。
「ほとんど自分たちで改装しました。床のタイルも自分で貼り、馴れない仕事で手がボロボロになりました。年末もずっと作業していたら帰れなくなって、ダンボールに挟まって寝たり・・・あれって結構あったかいんですよね(笑)。今思うとかなりガテンでしたが、やはりやるならきちんとした店にしたいし、いい加減なことはできないです」。
左の飴釉のものは郡司康久さんのもの。日常に使いやすい器が多い。
そんなにボロボロだったとは想像がつかないくらい、店内はすっきりと清々しく整えられ、居心地のよい空間です。手前はタイル貼りの床にテーブルが置かれ、ダイニングのような雰囲気で賑やかに器が並んでいます。奥には畳のスペースがあり、靴を脱いで上がります。
「いつか金継ぎの教室を開きたい、という思いもあって、畳のスペースを作りました。畳に座って器を手に取ると、また違った目線で楽しめると思うんです」。
左上:白い小皿は猿山修デザインの器。
右上:会津の木工作家・小沢賢一さんのくるみのまな板。使いやすく値段も手頃。
左下:器は福島の作家・亀田大介さん。アフリカのカゴや古布と一緒に。
右下:質感に味がある藍染めの器は岡山の作家・中川貴美子さん。
「以前よりカフェの片隅でこっそり販売していたり、自分が自宅で使っていたり、と元々お付き合いのある作家さんが多いです。でもこれからはもっと開拓していきたいですね。個展や陶器市もいろいろ行きたいんですが、お店をそう休むこともできないし。まだやりたいことがいっぱいでもんもんとしています」。
器の話を始めると止まらなくなる関谷さん。ひとつひとつの作品に心から愛情を注ぎ、真面目で丁寧なもの選びをしていることが伝わってきます。カフェでも日々器を使い、その使い心地を分かっているせいか、選び方にも説得力があります。
器以外には、プリミティブなアフリカの古道具や、手作りのキャンドルなども。
メインはもちろん器ですが、ときにはアートギャラリー的な要素も少し取り入れ、今後はお互いに共感できるアーティストやクリエイターと一緒に、作品の展示や小さなイベントスペースとしての機能なども考案しているそうです。
「カフェとは分離したスペースなので、もしカフェを利用しなくとも、器のお店として気軽に立ち寄っていただければ嬉しいです」。
こちらはカフェスペース。ここでの器使いも参考になります。
ももちどりcoju
東京都渋谷区代々木5-55-5 2階
TEL 03-5452-1690
火~土:11:30~19:30(l.o 19:00)
日:11:30~19:00(l.o 18:30) 月曜定休
http://www.momochidori.com/
カフェについての詳しいお話はカフェガイド・川口葉子さんのページもご参照下さい。