軽快な身のこなしで、より小さなクルマを運転している気分に
燃費は旧型比で32%向上し、約10.1km/l(NEDC燃費値 9.9l/100km)を達成。0-100km/h加速はベーシックモデルが4.4秒、パフォーマンスパッケージが4.3秒とされる
カーボン製フロントセンターリップ、同トランクスポイラー、同ミラーカバー、そして赤くペイントされたブレーキキャリパーの仕様がPPなのだが、カーボンセラミックブレーキを装着すると必然的にゴールドキャリパーとなる。
走行モード選択スイッチにより、C(コンフォート)/S(スポーツ)/S+(スポーツプラス)/M(マニュアル)が選択可能。Cモード時のみアイドリングストップが行われる
ドッドッドッと、いかにもアメリカ人好みの重低音だから、ジョギング中の市民を振り返らせた。乗り心地はハードに徹する。コンフォートモードでも多少の緩さはあるものの基本的には輪郭のはっきりした味つけだ。スポーツ、スポーツ+のダンピングモードでは一層、硬くなる。スポーツモードはコンフォートに比べて4割硬くなるセッティングで、ステアリングのパワーアシストも併せて重くなった。AMG専用パラメーターの電気機械式パワーステアリングは、ノーマルモデルより約2割早いギアレシオ(14:1)で相当にクイック。
エンジンパフォーマンスは、強力のひとこと。ツインターボチャージャー付きを感じさせない加速フィールで、高回転までフラットに回った骨太な自然吸気63エンジンをも彷彿とさせる。のけぞるような過激さには乏しいけれども、速度計を見るとびっくりしてしまう。知らず知らずのうちに、ものすごい速度に達しているのだ。なるほどAMGのエンジニアが過給器エンジンながら自然吸気のフィールにこだわったというのも頷ける。
カーボンセラミックブレーキ仕様のパフォーマンスパッケージは、走り出した途端に違うクルマだと思った。確かにライドフィールはよりハードだったが、クルマ全体の密度が高く、身のこなしも軽快で、より小さいクルマを運転している気分に。こうなると硬さも不快じゃないから不思議。高性能仕様ほど乗り心地がいい! ただし、フルオートマチックモードで乗ると、トルクが分厚いぶんだけアクセルレスポンスが敏感で、気障りになることも。
PPの実力の一端は、サンディエゴ近郊のワインディングロードで体験できた。どこまでもフラットでひらりひらりとオンザレールなハンドリングは、まるでC63AMGのように軽快だ。アシもシフトもスポーツ+にして走れば、一層引き締まった、自在に操れる弾丸のような走りをみせる。
単純にシティクルーズにおける乗り心地だけを重視したい向きには、もうひとつの仕様、スタンダードにカーボンブレーキ装着が最もオススメ。鍛造ホイールまでは必要ないと思う。カーボンシステムだけで一輪あたり5kg軽くなる。その効果は絶大で、スポーツモードで走っていても、日常使いに支障がないほど。これが最も売れセンの仕様になってもおかしくない。
燃費が良くなった、と言っても、オーバー500psのスーパーサルーンである。カタログ燃費で10km/lあたりのスペックをジマンしてもはじまらない。だから、旧型比較でアピールするわけだが、それは要するに従来からAMGを愛好する人にとっては大きな進化になるということ。そういうところから始まって、高級高性能車におけるエコ意識が高まってゆく、のかも知れない。そうなると……。
欧州での価格は11万5846.5ユーロ(約1297.5万円)、パフォーマンスパッケージはプラス7735ユーロ(約86.6万円)
AMGメルセデスが、SLSでスーパーカーシーンに名乗りを上げ、そこでEVモデルの市販化を目論みつつ、こんどはCクラス以下のAMGモデルを発表する可能性があるというのは、拡大する市場規模とともに、そういう事情が背景にあるのだった。