虫歯/虫歯の治療法

「応急処置だけ…」もOK? 治療前の歯科医への要望

最近は虫歯治療前に、どこまできちんと治療したいか、患者さんに先に確認する歯科も多くなってきました。通院回数を減らそうと、毎回「痛いところだけの治療」でしのいでいる人は注意が必要です。よく選択される治療範囲と、それぞれのデメリットをご紹介します。

丸山 和弘

執筆者:丸山 和弘

歯科医 / 歯の健康ガイド

最近は歯の治療前に、どこまで治したいか患者さんの希望を聞く歯科が多くなってきました。「悪いところは全て治したい」「応急処置だけでいい」など、要望はさまざまです。

もちろん忙しい患者さんの場合、治療期間を少しでも短くしたい人が多いでしょう。しかし短期の通院は、ときにトラブルの元になることがあります。治療の要望を伝えるとき、それぞれのメリットとデメリットは理解できていますか? 患者さんからのよくある要望別に、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。

「痛みを取る応急処置だけしてほしい」
⇒過度の期待は禁物! 応急処置の限界に注意

「痛みをとる応急処置だけしてほしい」。これは病院嫌いの人にとっては、魔法のような言葉でしょう。しかし残念ながら、治療をする側としては矛盾した要望です。最終的な目的は痛みを取ることなのか、本当に応急処置だけでいいののか、はっきりさせましょう。

応急処置だけで痛みが落ち着くのは、基本的にはあくまでちょっとした違和感や、ある瞬間だけ痛みがある場合だけ。痛みが強い場合、基本的には応急処置では改善しないと理解することが大切です。

強い痛みの場合、虫歯であれば歯の神経を抜く治療や抜歯が必要なことも。一般的に比較的時間がかかる治療が必要で、その日のうちに痛みが落ち着かないことも多いです。さらに歯ぐきの腫れなどがひどい場合も、応急処置ではほとんど効果がありません。歯周病の治療や、歯の根の治療を行い、数日~数週間程度、改善するのに時間がかかることもあります。

応急処置で取れるのは、あくまで軽度の痛みだけ。応急処置に過度の期待は禁物です。

「痛いところを治して欲しい」
⇒根本解決ができず、初期虫歯が放置されるデメリット

この場合、応急処置よりもしっかりした治療を希望しているのだなと分かります。このように希望をいう患者さんは、大きく2つのケースに分かれるようです。

■ 自分の口の中の状態を把握できている場合
口の中の全体の治療後1年以内や、定期検診を欠かさず受けている患者さんなど、それまでの治療で自分の口の中の状態をだいたい把握できていれば、「この部分だけ治せば、しばらくは大丈夫そう」と判断ができるでしょう。この場合は、痛いところだけの治療で問題ないことが多いです。

治療はしたいが、最小限で押さえたい場合
問題が起こりやすいのはこちらのケース。痛い部分さえ治療すれば問題ないと思う人が多いようですが、歯の痛みの原因は、単純に1本の歯だけの独立した問題ではないことがあります。

例えば、痛みの原因は、噛み合わせのバランスや、噛み合わせの力の配分のこともあります。その場合、痛い歯は結果であって、原因ではないことも多いのです。この場合は、「今は痛くない歯」も一緒に治療しない限り、トラブルが続くことがあります。

さらに多いのは、痛い歯だけを治療して、他の進行中の虫歯を放置してしまうケース。虫歯は痛くない時に治した方が、時間、回数、費用など全ての負担が少なくて済みます。面倒でも一度しっかり完治させておかないと、いつまでたっても病院通いが必要になってしまうのです。

「とりあえず痛みが引いたので通院をやめます」
⇒最も大きな抜歯リスクが残るケース

最もよくない選択肢です。例えば、虫歯が原因で歯の神経を取った場合、痛みはなくなります。しかし、治ったわけではありません。そのまま治療を止めると、治療前より歯のダメージが急速に進行してしまうのです。

神経を取ったということは、歯の内部に穴がある状態。仮の詰め物があったとしても、時間とともに内部に虫歯菌などが入り込み、内部から歯を溶かして崩壊を促進してしまいます。

悪化速度も速いです。外側のエナメル質を溶かす時間に比べ、内部の象牙質では急激に虫歯が進行しやすいという特徴があります。神経を取った後、数年後に再び痛くなって治療しようとしたところ、すでに手遅れで抜歯しか選択肢がなくなるのは、よくあるケースなのです。

強い痛みが出てから慌てることがないよう、定期検診などを上手に利用して歯の健康を維持するように心がけてください。
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