ビザンチン建築の最高傑作、アヤソフィア
537年に建設されたとは思えない壮大な建築物
イスタンブールに数ある観光名所の中で、最大の見どころの一つがここ、アヤソフィア。「ビザンチン建築の最高傑作」として名高く、内部は思わずため息モノの美しさです。様々に変容していくイスタンブール史の中で、その時代時代の流れに沿って存在し続けて来たアヤソフィアは、現存する歴史の生き証人と言ってもいい、類まれな博物館。そのしんとした厳かな空気には歴史の重さを感じます。
ビザンチン帝国時代に教会として創建
最初の建築ははるか360年(!)、コンスタンティヌス帝によって総主教会として建てられましたが、404年に火災で焼失。その後415年にテオドシウス2世が再建するも、今度は532年のニカの反乱で崩落の目に遭います。ユスティニアヌス帝がその40日後に3度目の建て直しに取りかかり、これが537年に完成。現在ある建物はこの時のものです。3度も建て直されたとはいえ、今のアヤソフィアでさえ日本がまだ大和朝廷の頃に建てられたのですから、いかに古い建築物か実感することができますね。
オスマントルコ帝国時代はモスクに
典型的な中央集中型の教会建築には、アッラーやカリフの名が金のカリグラフィーで描かれた円盤が掲げられています(©trekearth.com)
1453年になると、今度はコンスタンチノープルを制服したオスマントルコ帝国によって、アヤソフィアはイスラム教の宗教施設であるモスクに改装。イスラム教が偶像崇拝を禁止しているため、内部のモザイク画は漆喰で塗り固められ、イスラム装飾が施されます。礼拝の時間を呼びかけるミナレットと呼ばれる塔が建物を囲むように4本建てられ、内部にはアラビア文字でアッラーや預言者の名前が書かれた巨大な円盤、ミンバルと呼ばれる説教壇、スルタンが礼拝する特別室、そして聖地メッカの方向を示すミフラーブが設置されたのです。
イスラム教徒は、このミフラーブに向かって礼拝します(©flickr.com)
面白いのは、このメッカの方向を示すミフラーブの場所。通常のモスクはミフラーブの位置が建物の中央に来るように建設されるものですが、このアヤソフィアは元々教会だったため、方向的にメッカの方向を向いていません。このためミフラーブの位置が微妙に右側にずれているのです。アヤソフィアを訪れた際にはちょっと気をつけて見てみて。
トルコ共和国になり博物館として開放
トルコ共和国に入ると、アヤソフィアは宗教施設ではなく、博物館として開放されます。漆喰で塗り固められたモザイク画も修復作業によって次々と日の目を見ることになり、アヤソフィアは美しいビザンチン美術とイスラム美術の傑作が混同する博物館に変身。1985年には、イスタンブール歴史地区の一部として、ユネスコの世界文化遺産に登録されました。