幻の80年代ブルーマウンテン・リバイバル
ブルーマウンテンと聞くと、ちょっとコーヒーに詳しい人なら首をかしげるもの。なにしろコーヒー教室に行ったりすると、かつての日本の「ブルーマウンテン神話」がいかに名ばかりの滑稽な信仰であったかという話が、必ずといっていいほど持ちだされますから。
ブルーマウンテンは偽物だらけ。玉よりも石のほうがはるかに多い玉石混淆。そんな認識を抱いている人も少なくないと思いますが、川島良彰さんは80年代、ブルーマウンテン黄金期に生産地のジャマイカに7年半駐在し、本物のブルーマウンテンが持つ豊かな魅力を体験していました。
「実際に80年代に本物のブルーマウンテンを飲んだことがある人なら、あのおいしさを覚えているでしょう。近年のブルーマウンテンは変わってしまいました」
カフェの奥にガラス張りのコーヒーセラー。春にはテラス席も気持ちよさそう。
「素晴らしい生産者が待っていてくれました。だから、僕からジャマイカへの恩返しの意味もこめて、このプロジェクトを始めたんです」
川島さんはシャープ兄弟が営むジュニパー・ピーク農園を訪れ、農園内をくまなく歩き回って標高1360mに位置する特級畑を峻別。日照や風向き、土壌にすぐれた最高の一区画だけをグランクリュ カフェ用のセクションと決定しました。
コーヒーはフルーツ。だから完熟豆だけを収穫
生産者から届いた生豆をハンドピックした後にも、グラン クリュ カフェならではのこだわりが。どんな欠点豆が混入していたかを詳細に分析して生産者にフィードバック。
「コーヒーはフルーツですから、完熟したものが一番おいしいんです」
収穫期のピークの約3日間、熟練した摘み手たちが密度の詰まった完熟豆だけを摘みとるのです。
収穫後の豆は100%天日乾燥。その後、グラン クリュ カフェが全工程に設けた厳格な規格を通過してきたコーヒー豆がようやく東京・麻布のミ・カフェートに到着します。最終出荷量はわずか400kg。これはブルーマウンテンの全生産量のわずか0.03%にすぎません。
見せていただいた生豆は大粒のスクリーン19。実際に味わってみると、その一杯は……蘇る黄金期の80年代ブルーマウンテンの香り。