芥川賞直木賞が発表に
第26回太宰治賞受賞作。筑摩書房刊。
文庫短評を書くために、吉行淳之介『贋食物誌』など文庫4冊を再読。『贋食物誌』は食べ物もおいしそうだけれど、安岡章太郎をはじめとした、交友関係のエピソードが楽しい。男2人で可愛くデコレーションされたアイスクリームを食べた話とか。短評は、24日の読売新聞の夕刊に載ります。
海堂尊さんのインタビューを脱稿。並行して、書評用の本を引き続き読み進める。片岡義男『思い出の線と色彩』は自選恋愛短編集。男女の再会の描き方が鮮やか。電子書籍のレビューでとりあげる予定。
最近読んだ中で一番、いいなぁと思ったのが、今村夏子の『こちらあみ子』。冒頭、あみ子は、庭で小さな友達がやってくるのを待っている。〈十五歳で引っ越しをするまで、あみ子は田中家の長女として育てられた〉という。このなにげない一文にたどりつくまでの出来事が語られていく。
小学生のころ、書道教室を開いていた母。娘なのに、教室には入れてもらえなかったあみ子。周囲の言動によって、もやもやしていたあみ子の輪郭がかたまってくる。ページをめくるたびに、「ああ、そうだったのか!」と驚き、悲しみは募る。でも、思わず笑ってしまうようなところもあって……最後は、「こちらあみ子」と呼びかける声に応答したくなる。同時収録の「ピクニック」も、とても好き。
これから追いかけていきたい作家が増えました。