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相互厭人的読書生活3(2ページ目)

ガイドの読書記録です。今回は2011年1月11日~20日まで読んだ本をとりあげます。桂望実『嫌な女』、今村夏子『こちらあみ子』など。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

話題の本ガイド


芥川賞直木賞が発表に

こちらあみ子

第26回太宰治賞受賞作。筑摩書房刊。

17日、芥川賞・直木賞が発表に。今年は受賞者の記者会見を「ニコ生」で放送。仕事が終わってないのに、釘づけだった。特に、西村賢太さん。冒頭の「風俗」発言で、期待を裏切らない人だなあと。受賞作のレビューは、近いうちに書きます。

文庫短評を書くために、吉行淳之介『贋食物誌』など文庫4冊を再読。『贋食物誌』は食べ物もおいしそうだけれど、安岡章太郎をはじめとした、交友関係のエピソードが楽しい。男2人で可愛くデコレーションされたアイスクリームを食べた話とか。短評は、24日の読売新聞の夕刊に載ります。

海堂尊さんのインタビューを脱稿。並行して、書評用の本を引き続き読み進める。片岡義男『思い出の線と色彩』は自選恋愛短編集。男女の再会の描き方が鮮やか。電子書籍のレビューでとりあげる予定。

最近読んだ中で一番、いいなぁと思ったのが、今村夏子の『こちらあみ子』。冒頭、あみ子は、庭で小さな友達がやってくるのを待っている。〈十五歳で引っ越しをするまで、あみ子は田中家の長女として育てられた〉という。このなにげない一文にたどりつくまでの出来事が語られていく。

小学生のころ、書道教室を開いていた母。娘なのに、教室には入れてもらえなかったあみ子。周囲の言動によって、もやもやしていたあみ子の輪郭がかたまってくる。ページをめくるたびに、「ああ、そうだったのか!」と驚き、悲しみは募る。でも、思わず笑ってしまうようなところもあって……最後は、「こちらあみ子」と呼びかける声に応答したくなる。同時収録の「ピクニック」も、とても好き。

これから追いかけていきたい作家が増えました。


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