NPO法人パオッコがめざすもの
今年、15年という節目を迎えたNPO法人パオッコは、これまでの活動の成果と、今後の展開について何を考えているのでしょうか? パオッコの太田理事長に、気になる部分を直接伺いました。横井「遠距離介護についての現状は?」
太田理事長(以下、太田)「以前、遠距離介護は東京や大阪といった大都市に限られた問題でした。でも、核家族化がドンドン進むなかで、全国の中核都市はもちろん、親と同居していないすべての家庭が潜在的に抱える問題になっていると思います」
横井「15年という節目の年を迎えた感想は?」
太田「ようやく、『遠距離介護』 という言葉が定着してきたように思います。言葉の定着で、「あっ、自分のやっていることはコレだ」と感じられる方が増えてきました。そして、ほっとされる。介護方法のひとつとして認知されましたね」
横井「これまでの活動のなかで、印象深いことは?」
太田「老親に対して愛情いっぱいの方もいっぱいいらっしゃるけれど、複雑な感情を抱いている方も大勢。介護とは、それまでの親子関係の集大成が出る場なのだと思うようになりました」
横井「今後、どういった活動を考えておられますか?」
太田「遠距離介護という言葉を検索で見つけ、パオッコや私たちのセミナーにコンタクトしてきてくださる方は、情報が集まります。けれども、実際には時間的にも経済的にもそういうゆとりがなく、情報に出会えない人たちのほうが多いのではないでしょうか。もっと広く、情報を周知していく方法を模索したいと思います」
横井「今、遠距離介護で悩んでいる人にメッセージをお願いします」
太田「遠距離にかかわらず、同居であろうと近居であろうと、『介護』をだれかひとりで行うことは無理。味方を見つけてください。親族はもちろん、医療・福祉の専門家も介護のチームメンバーです。さらに、親のご近所さんたちにも『よろしくお願いします』とコミュニケーションをはかるようにしましょう」
団塊の世代が次々と介護を受けるようになってくる今後、パオッコのような団体の必要性は、これからますます高まってくるはず。パオッコのこれからに期待したいと思います。
大阪で行われた
「遠距離介護準備セミナー」は大盛況
2010年11月8日、大阪で行われた「遠距離介護準備セミナー どうする!? どうなる!? 離れて暮らす親の介護(主催:財団法人 住友生命社会福祉事業団/NPO法人パオッコ)」は、150名以上の来場者を集める盛況。今年で4回目を迎えるこのセミナーに、ガイドである私も司会者という立場で参加させていただきました。セミナーの前半で行われた「体験者と専門家によるお悩み軽減! 遠距離介護アドバイストーク」では、普段、マスコミなどで紹介されることのない遠距離介護の実態について、率直な意見交換を展開。来場者からも「親と同居すると、介護保険サービスの利用が制限されてしまう。スムーズにサービスを利用するためには、別居しなければならない現状はおかしいのでは?」「田舎に住む親が『離婚して自分たちの面倒を見に帰ってこい』と言ってくるのがつらい」など、実際に親の介護に直面している者ならではの意見が寄せられていました。
こうしたなかで、パネラーとして参加された社会保険労務士の桶谷浩さんは「まずは介護する側である自分たちの安全や生活を保つことが第一」「自分自身、考えに考え抜いた結果、親を実家の近くの施設に入居させた。でも『それが本当の本当にベストだったのか』という思いは、ずっと付きまとっている」「仮に50代の人が同居介護のために都会での仕事を辞めてUターン再就職をすると、比較的条件が良い会社に入れたとしても生涯賃金が2,000万円以上下がってしまう。安易に同居を押しつけてくる親戚には、そうした現実を教える必要がある」など、自身の遠距離介護経験を交えたお話をされていました。
また、同じくパネラーとして参加されたケアマネージャーの白戸望さんは「多くの方から相談を受けていると『それは無理です』と言いたくなることも多い。でも、一番困っている家族の方々をサポートするのが自分たちの役目。難しい相談に対しても逃げずに、一緒に粘ってくれるケアマネージャーを見つけてほしい」「介護は人と人のコミュニケーションがポイント。チーム連携で介護を行っていくためには、普段からの関係づくりが大切」と、来場者にエールを送っておられました。
最後のページでは、遠距離介護をされている香山リカさんの特別講演の様子をお届けします。