体内で最も固いエナメル質は「酸」に弱い
固いエナメル質の天敵は「酸」。毎食後、歯は少しだけ溶け、再修復し…を繰り返しています
そんな超硬質なエナメル質の弱点は「酸」。これほど固い歯も、酸によって脱灰して溶けてしまいます。歯の表面が、pH5.5以下に長時間さらされると、次第に脱灰が起こり、エナメル質、象牙質なども柔らかくなって溶け、穴が開いていくのです。
虫歯の場合、プラーク(歯垢)に集まっている細菌が、砂糖などを餌に酸を出します。一般的には、このように細菌が原因で歯に穴をあいてしまうことを「虫歯」と呼んでいますが、実は食べ物でも同じように口内が酸性の環境になると、歯の表面が溶けてしまったり、弱くなってしまうことがあるのです。これを「酸蝕歯」と呼びます。
酸蝕症の原因
■柑橘系の果物グレープフルーツ、レモン、ミカンなど
■一部の飲料・調味料
ジュースなどの炭酸飲料、ワイン、お酢など
文字通りですが、酸を含む「酸っぱい味がするもの」が、歯にダメージを与えやすい食べ物と考えられます。ちょっと変わったところでは、酸性の強い温泉水などの飲用、口をゆすぐ習慣なども、酸蝕歯になりやすいと言われているので、注意しましょう。
酸蝕症の症状
酸蝕症は、歯の表面が溶ける病気なので、虫歯のような痛みなどの自覚症状が出ることはありません。表面のエナメル質が溶け出すと、歯に白い斑点が見られたり、透明感が増したり、象牙質が透けて見えるなどの、見た目の違いが見られるようになります。歯の表面が粗造で、弱く柔らかい状態です。酸蝕症になった歯は虫歯に対する抵抗性も弱くなっているので、歯磨きなどの摩擦で、柔らかい部分が削り取られてしまうことも。この場合、知覚過敏が起こることも考えられます。
酸蝕症の自然修復・再石灰化
酸蝕歯として歯が溶けるには、いくつか条件があります。歯は表面の酸性状態が続くと脱灰が起こり溶けやすくなりますが、しばらくすると唾液が酸性状態を中和し、溶けた部分を修復する「再石灰化」が起こります。これは毎日、毎食後、意識していなくても自然に起きている現象です。そのため酸性の食品を食べたからといって、すぐに歯が溶けて問題になるほどではないので、過度の心配をする必要はなし。酸味のある食材は、体に良い食べ物であることも多いため、過剰な摂取でなければ、食事制限などを考える必要はありません。
脱灰が起こり、再石灰化で修復するのが間に合わない場合のみ、「酸蝕歯」として影響が現れてくると理解しましょう。これは虫歯ができる過程とほぼ同じですね。
酸蝕症の予防法
上記の歯の再石灰化による修復力を強化すれば、食べた直後に一時的に溶けた歯はすぐに戻るので、酸蝕症になることを防げます。歯の再石灰化は、唾液によって促進されるので、食事の間隔が空いているほど効果が出やすいです。一方で、砂糖などが含まれる間食があると修復が停止してしまいす。さらに就寝中は唾液の分泌自体が減少するため、ほとんど修復が起こりません。就寝前の酸性食品の摂取は、酸蝕症を進行しやすいと考えてもよいでしょう。
砂糖などの間食、就寝前の酸性食品を控えることが、酸蝕症のよい予防法と言えます。
唾液分泌で再石灰化を促進させる方法
より積極的に予防を行いたいなら、市販のガムなどで効果的に唾液分泌量を増やし、歯の再石灰化を促すという方法もあります。その場合は砂糖などがあまり含まれない商品を選びましょう。一例ですが、特定保健用食品に指定されている「リカルデントガム」などもよいでしょう。噛むことで唾液の分泌を促し、同時に歯にミネラル分を補給することができるCPP-ACPが含まれているため、ガムでは初めてのトクホマークを取得しているようです(参考:キャドバリー『リカルデント』)。
ただ酸蝕症は、ガムを噛むとその衝撃が逆にエナメル質の崩壊を促進してしまうこともあるので、酸性食品を摂取直後ではなく、次の間食の時間がオススメです。
酸蝕症を上手に予防しながら、酸を含む健康食品もうまく楽しむようにしましょう。