ドライビングファンの基本を教えてくれる500C

アバルト500C

電動ソフトトップをもつフィアット500Cをベースに、名門チューニングブランドのアバルトがスポーティに仕上げたのがアバルト500C。最高出力140psを発生する1.4リッターターボエンジンに、シングルクラッチの5速シーケンシャルミッション“アバルトコンペティツィオーネ”を組み合わせた。サイズは全長3655×全幅1625×全高1505mm。価格は339万円

まずは右ハンドルのアバルト500Cから報告しよう。基本的にはベースモデルのフィアット500→500Cと同等の仕様変更がアバルト500に施されたと思っていい。開閉システムなどの詳細は、フィアット500Cを参照されたい。ここでは、いわゆるキャンバストップ仕立てのオープンモデルで、500のスタイリングを崩さず、気軽にオープンエアモータリングが楽しめるモデル、というだけに留める。

注目点はむしろトランスミッションだ。アバルト500としては初めて、2ペダルロボタイズドミッションが組み合わされた。流行りのダブルクラッチシステムではなく、油圧機械式2ペダルマニュアルミッションである。

それゆえ、トルコンATやCVT、ダブルクラッチシステムといった他の2ペダル車と同じようにアクセルペダルを踏んだままシフトアップしていくと、例のもんどり打つ動きがあって心地悪い。特にAUTOモードで深めにアクセルペダルを踏み込んでの加速は、踏んだままだと気持ちのいいものじゃない。メンドウでも、3ペダル車のように一度ペダルを緩めるという動作が必要だ。
アバルト500C

センター部にはシフトレバーではなくスイッチを配置、変速はパドルシフトのみで行う

それ以外の面では、MTで操るアバルト500よりも全てに渡って2ペダルの方が楽しいと思う。もちろん操作の複雑性=機械を操っているぞという気分ではMTに勝るものはないが、ことアバルト500に関する限り、低回転域から実にFFハイパワー車っぽい暴れん坊なパフォーマンスを発揮することを考えると、いちいち3ペダルで操作していては追いつかないし、それほど楽しいフィーリングでもなかった。エンジンだってMTで引っ張り、クラッチペダルで左足と繋がる感覚を楽しむような官能さはない。

それよりもむしろ、2ペダルでアバルト500が潜在的にもっている総合力を精一杯引き出すことを試みた方が、何倍も楽しいと思う。キーワードは、がむしゃら。がむしゃらにドライブすればするほどアバルト500は楽しいし、それに十分応えてくれるクルマでもある。余計なことは考えず、テクニック論に走らず、とにかく踏んで踏んで曲がって踏む。その単純な動作の繰り返しを楽しむことこそが、ドライビングファンの基本であるということを、アバルト500Cは教えてくれるのだった。

日本では相当にマニアック

アバルトプントエヴォ

ベースモデルがグランドプントからプント エヴォに進化したのに伴い、アバルトモデルにも新型が登場。ベース比86psアップとなる最高出力163psの1.4リッターターボエンジンに6MTを組み合わせる。サイズは全長4080×全幅1720×全高1490mm。価格は289万円。アバルト初のアイドリングストップ機構が備わった

対するアバルトプントエボは、左ハンドルのMTのみで、一般的にはハードルの高い存在だろう。ベースモデルの変身に伴う内外装の変更や、話題のマルチエアエンジン、エコなアイドリングストップなどが、マイナーチェンジのニュース。

前作に比べれば、エキセントリックなライドフィールがかなり薄れ、ノーマルプントの延長線上にある、スポーティで刺激的だけれども乗り心地も十分しなやかな走りを手に入れている。ドイツやフランスのホットハッチ勢の進化を受けての改良だろう。メカニズムを共有するアルファミトのテイストに近づいたとも言えそうだ。

個人的には、どうしても500の影に隠れてしまいがちなモデルなので、500よりも前期型よりも、もっとエキセントリックな走りになっていても良かったと思うのだが……。激戦区でツウの多い欧州市場では、そうは言っていられないということか。日本では相当にマニアックな選択肢であることは間違いない。

アバルトプントエヴォ

フィアットが開発したマルチエアエンジンをアバルトがチューン。マルチエア方式はスロットルバルブの代わりに、電子制御式油圧システムにより吸気バルブをコントロール。燃焼に必要な空気量を吸気バルブの開閉により調節することで燃費や排ガス内の有害物質を低減する技術

アバルトプントエヴォ

室内はレーシングカーのようなグラフィックデザインのイエーガー製メーターや、赤いステッチでスポーティさを演出した

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