医療に救われるいのち
映画『うまれる』に登場する、おめめのくりくりしたかわいらしい赤ちゃん、通称虎ちゃんは、18トリソミーという先天的な障がいを持って生まれてきました。18トリソミーとは、18番目の染色体が1本多く、ダウン症(21トリソミー)に次いで頻度の高い染色体異常。3000人から8000人に1人の頻度で発生すると言われていて、生まれること自体が難しく、無事に生まれてきても、60%の子が1週間程度しか生きられず、1歳までに90%が亡くなってしまうという重い障がいです。
妊娠中に18トリソミーの可能性を知ったご両親は、産むかどうかの選択を迫られた際、迷わずに産むことを選んだそう。1歳まで生きることが難しいと言われた虎ちゃんは、数ヶ月NICUに入院した後、奇跡的に病院を退院し、自宅で成長を続けています。
虎ちゃんは口から食事を摂ることができないので、鼻からチューブで栄養を胃に送る
いのちが教えてくれること
大葉ナナコ(以下、大葉):
1歳まで生きられる確率が10%と言われていた虎ちゃんが、もうすぐ2歳! 歯も生えてきたんですよ。医療の力で生まれることができたいのち。医療的には、10%とか90%とかデータや前例の話になってしまうけど、それでもご両親の産みたい!育てたい!って思いが強いんですよね。虎ちゃんを見ていると、ご両親の愛情が虎ちゃんのいのちにどれほど力を与えているかって感じます。スキンシップや語りかけなどのご両親のエネルギーによって、どんどん生きるための神経ができているのかな。やっぱり愛なんだなって教えてくれますね。
竹内正人(以下、竹内):
18トリソミーという障がいを医療から見れば、生きていくことの難しい重篤な障がい。妊娠中にわかれば、産みますか、産みませんか?という話になってしまうんです。でも、実際に生活レベルで見てみれば、その子が生まれて、そこから生まれてくる物語がある。その子が周りに与える力がある。医療レベルでははかれないものがありますね。医療的視点だけでは、病気のことを中心にしてしか判断できない。その子が生まれて、何ができるようになって、その子がいることでどんな家族になって、という生活レベルまでイメージできないんだな、と医者として考えさせられました。
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