六本木にあるルイスポールセンのショールームにお邪魔しました
限りある資源を有効に利用する上で「少ない消費電力で、より明るく」という現在の流れは大切です。ただ、その一方で、明るさや消費電力の数値に囚われすぎるあまり「心地良い照明とは?」という視点は、少し置き去りにされているようにも思います。
例えば日本の特急電車の車内は確かに清潔で明るいのですが、あまりに明る過ぎて窓に反射してしまい、外の夜景を楽しめないと思うことがしばしばあります。LEDの例では、一方向にのみ光が出る特性が充分に考慮されていないため、天井が暗くなってしまったり、床面の明るさにもばらつきが出るケースも。最近では、全面的にLED照明を採用したオフィスで、ちらつきが気になるという事例がありました。
建築家に尊敬される照明メーカー
オール電化住宅はもちろん、全ての住宅で最も重要な電気設備の一つである「照明」。ランプの革新が進んでいる今、単なる明るさの追求ではなく「どのような照明が、人々に快適さを感じさせるか」という根本的な問題は、これからますます重要になると思います。
このテーマに、1920年代から現在に至るまで、変わらず取り組み続けているのが、デンマークの照明メーカー「ルイスポールセン」です。同社の照明器具は一般のユーザーだけでなく、世界中の照明デザイナーや、私たち建築家にとっても、常に尊敬の対象で、特別な存在であり続けてきました。
ルイスポールセンの特長として、もう一つ挙げられることは、一度作った器具は流行に関係なく、長期間に渡って販売し続けることです。例えば同社の代表的な照明器具「PHランプ」は、驚くべきことに、発表以来80年以上に渡り、基本的に同じ形状のまま販売され続けているのです。
一般的なメーカーが頻繁ににモデルチェンジを繰り返す中で、このように長く愛され続ける照明器具を作ることが、なぜ可能なのでしょうか?今回から3回に分けて、ルイスポールセンの日本子会社(タルジェッティポールセン)へのインタビューを通して、改めて、「人にとって快適な照明とは」というテーマを考えてみたいと思います。
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