お店の外観
さらりとシンプルな使いやすいかたち。

イイホシユミコさんの作品をはじめて見たのは、Annon cookというカフェでだった。 白と黒のシンプルな色使いで、無駄のないスッキリしたかたち。緊張感の中にどこか愛嬌を感じるうつわだった。 そんなうつわに見入っていると、店長渋谷さんがやってきて、 「イイホシさん、本当にいいんです!」と太鼓判を押される。 それからうちに帰っても、どうも気になってしまい、このうつわを作っている人に 無性に会いたくなってしまった。 さっそくいそいそと連絡を取り、あっという間にお会いすることになった。 こういう仕事をしていると、初対面の人にいきなり 会うことはすごく多いのだが、 イイホシさんは会ったとたんに打ち解けられるような、とても気さくで明るい人だった。

コーヒーカップ
イイホシさんの作ったカップで淹れたコーヒー。

イイホシさんのご自宅兼アトリエにおじゃまする。 木の表情が良い、古いテーブルの置かれた部屋でコーヒーをいただく。 失礼と思いながらも、ついきょろきょろと辺りを見回す。不思議なパワーを放っている 時計に目が留まる。「あの時計、すいぶん面白いデザインですね」というと、 「実はあれ、陶芸の先生が作った時計なんです」。イイホシさんは以前関西に住んでおり、 友達に誘われて、面白半分に陶芸を習いに行った。 先生はもういいおじいちゃん。なのにとっても斬新でアバンギャルドな、 かっこいい人だったらしい。 (実はポカリスエットなどもデザインした、グラフィックデザイナーでもあるとか)。 ごっちゃりと自分の作品に埋もれるような部屋には、なにげなく著名なデザイナーズチェアがあったり。 イイホシさんは先生に「へんなものを作りなさい」とアドバイスされていたんだそう。 そんなユニークで粋な先生にいきなり最初に巡り会ってしまったことが、今でもイイホシさんの 心の礎となっているようだ。

時計 おじさん
左が先生の作ったモダンなデザインの時計。
右も手作りのおじさん像。先生だと思って大事にしてるのだそう。

その後イイホシさんは福岡へ移り住む。九州といえば「ザ・やきもの」といっても いいくらい、古くからの歴史があり、今でも盛んな地域である。 この地でイイホシさんは陶芸の原点を学んだ。今までは趣味の領域だったのが、 本格的に勉強したいと思って家にろくろも備えた。しかし、いざ本気で取り組んでみると、 作りたい意欲はあるのに、自分のスタイルが見つからない。これじゃないと、 というものがないことにずいぶんと悩んだそうだ。自身の知識と経験不足を痛感した 時期だった。

アトリエ
自宅の一室がアトリエに。今年の夏は特に暑かったそう。

でもイイホシさんはガッツのある女性。もうそれなりの年齢も重ねていたが、 京都の美大へ通って徹底的に学ぶことにする。 厳しくも良い先生に巡り会い、こてんぱんに批評されながらも自分の可能性が定まってきた。 毎日始発で通って終電で帰る生活。陶芸だけでなく、デザインや色彩など基礎的な勉強も あるから、徹夜もしょっちゅうだったという。 自分よりひとまわり若い同級生達の前で、先生に本気で泣かされることもあったが、 おかげで度胸もつき、自分に何ができるのか、確信することができた。 同級生たちとも本音で付き合える、いい友達になれたという。 イイホシさんが学校で学んだ一番のことは「やめないで、続けること」。 今はこの仕事をずっと続けて行きたいという決心がある。

アトリエアトリエ
アトリエの棚にはたくさんの作品が並ぶ。試作も多い。

イイホシさんの作品作りは まず絵を描いてデザインをおこす。寸法をきちんと決めて計算する。 何気なく並べられているカップも大きさやかたち、持ち手の幅が微妙に違う。 実は、お父さん、お母さん、子供、と家族のそれぞれが使い易いように考えて作っている んだそう。 お料理屋さんなどからの注文だと、出汁巻き卵を入れたい、とか ビールを何ccくらい入れたい、など具体的な指示が来ることもあるんだとか。 最近の作品である磁器の「voyage」(旅行用中国茶セッ ト)を見せてもらった。 デザインとしても言うことないのだが、実はこのポットの中にはカップをしまって、 持ち運びが出来るようになっている。何度も試作を重ね、ぴっちりとガタツキなく納まるように作った 。ポットの内径にカップがぴたりと納まり、さらにふたできちんと押さえ、最後に袋に入れて紐で縛ると絶対にずれないように 計算されている。このまま外に持ち出しても安心。ちょっと贅沢なピクニックにもなる。

お茶セット
「お茶セット」。カップの大きさも程よい感じ。

「陶磁器といっても、手作りっぽいものとか、一点ものは実は苦手。 きちんと作られていて、あまり目を引かないものがいいんです。うつわを通してそれを使ってるときの風景や状況が浮かぶようなものを作りたいと思っています。」。実用的で生活に溶け込むようなもの、すっきりとクセのないものを作りたい という。 手作りで作っているのだけど、プロダクトのような佇まい。 風景に溶け込みながらも、やっぱりそのデザインの魅力に目を引いてしまうような気がする。


棚の作品
●イイホシユミコさんの作品と出会える場所

Annon cook
東京都渋谷区神宮前5-25-1 2F
tel 03-5467-1600
11:30~20:00 

お裁縫セット お裁縫セット
vivo,vabookstore
兵庫県神戸市中央区栄町通3-1-17 4F
tel 078-334-7225
11:30~20:00


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