妊娠中の健康診断は、受けるべきか、避けるべきか
胎児への影響を考えると、妊娠中の不安は尽きないものです
妊婦の健康診断は平常通り! 妊娠初期の4~8週目は念のため注意を
妊娠中は「生まれてくる赤ちゃんに何かあってはいけない」と、色々な面で気を遣うもの。そういった意味では、健康診断も含めてできれば何もせず、そーっと静かに過ごしたいというのが基本的な考え方だと思います。一方で、体に負担が少ないもの、すなわち胎児に影響を及ぼしにくいもの、もしくは及ぼさないものまで、全てカットしなければならないという考え方は、少しやりすぎのようにも感じられます。
気をつけたい人も、胎児が影響を受けやすい時期である妊娠4~8週目あたりのみ、胎児への影響が心配される医療行為を受けないようにして、後は平常通りの生活を送るのが良いように思います。
胎児が影響を受けやすいレントゲン検査・バリウム検査・CT
では、健康診断の中で胎児が影響を受けやすい医療行為とは何か? その代表は、レントゲン検査でしょう。特に、胸部のレントゲンに加えて、いわゆるバリウム検査と呼ばれる上部消化管造影や、お尻から造影剤を注入して行う注腸造影、胸部や腹部のCT検査など、放射線被爆を伴う検査は、特に妊娠4~8週の間は避けておく方が良いというのが一般的な考え方です。
妊娠可能性はあったが…妊娠初期にレントゲン・CT検査を受けてしまったら
ただし、胎児に影響が及ぶ放射線被曝の線量を考えると、これらの検査を全て受けたりしない限り、胎児への影響は極めて少ないとも考えられています。「妊娠に気がつかずに健康診断を受けてしまった!」という方も、あまり心配しすぎることはありません。単品の検査による被曝は、胎児を心配するほど高いものではありません。まずは、主治医の産科の先生にご相談になってみて下さい。
また、血液検査や心電図、聴力検査や身長・体重測定は、当然のことながら胎児への影響については心配無用です。また、健康診断では行いませんが、CT検査と似た「MRI検査」も放射線被曝はありません。MRIは磁気を使用しますが、磁気が胎児に影響を及ぼすという報告は現在のところありませんので、こちらも心配はいらないでしょう。
妊娠中の健康診断だからと、心配しすぎないことも大切!
このように、妊娠中の健康診断はレントゲン検査を除けば、通常通りお受けになっても良いと考えます。また、レントゲン検査も、最も影響を受けやすい時期に受けたとしても、理論上は特に大きな問題はないと考えられます。とはいえ、妊娠中は何かとナーバスになるもの。また、残念ながらどんなに気をつけていても、一定の数で何かしらのトラブルは起こってしまいます。万が一のことがあったときに、「あのときレントゲンを受けてなければ……」と考えてしまうことはやはり避けたいものです。
健康診断で胸部レントゲン写真を撮る目的は、肺がんや肺結核などの病気を見つけることがメインなので、妊娠適齢期で、かつ体調に大きな変化がない時は、あえてレントゲン検査を受ける必要はないだろうというのが、一般的な考え方になっています。出産適齢期で大きな疾患が見つかる確率はそこまで高くないので、天秤にかけての考え方になりますが、不安を抱えながら無理にレントゲンを受ける必要はありません。
心電図や採血検査は産科でも行っていると思いますが、全身チェックという意味で健康診断を受けてみて、その結果を産科の主治医の先生にも見せるなど、上手に活用されるのが良いのではと思います。
ともかく、妊娠中は色々と心配になるものです。妊娠が分かっている場合は、あまり心配しすぎず、レントゲン検査以外の健康診断はお受けになって良いでしょう。また、万が一妊娠判明前にレントゲンを含む検査を受けてしまった場合も、あまり心配しすぎることはありません。不安が大きい場合は主治医の先生にご相談になるのが良いと思います。
その他、妊娠中に気をつけるべき食べ物や運動のポイントについては、産婦人科医が解説する「妊娠中の食事の疑問!OK・NGな食べ物・飲み物は?」や「妊娠中・妊婦におすすめの運動と注意点」をあわせてご覧下さい。
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