高齢者の住み替え制度を利用しよう! |
立退きは借地借家法を理解した上で、解約通知文を送ることからスタートする、ということでしたね。入居者へ解約を告知した後、改めてコンタクトを取っていきます。
でも一口に「入居者とコンタクトをとる」と言っても対応法は千差万別。入居者にはごく普通の方だけではなく、外国人や高齢者など様々な属性の方がいらっしゃるので当然ですよね。
そこで今回は当社スタッフが実際の立退き現場で遭遇した高齢者の立退きのケースをご紹介したいと思います。高齢者の立退きをする場合に今回の事例を知っておけば、かなり有利に交渉できることでしょう。
■ 引越先が見つからないんです・・・
ある日、解約通知文を受け取った入居者Mさんより、当社に電話が入りました。話を聞いてみると、
「引っ越したくても引っ越せない・・・」
「どの不動産屋に行っても入居を断られてしまう・・・」
「引越し先が見つからないのでどうしたらいいか分らない・・・」
ということのようでした。
当スタッフが現地周辺の仲介不動産会社で調べてみたところ、物件が見つからないのは、アパートの家主側に理由があるようです。
・高齢者は賃料支払に支障をきたす可能性がある高い為、貸したくない。
・他の入居者の中に高齢者と共同生活をすることに嫌悪感を示す方がいる・・・
・孤独死の可能性があるので、高齢者入居は避けたい・・・
Mさんの希望する条件に見合う物件が見つからない訳ではありません。アパートの家主側が断り続けていたのです。
■ 高齢者人口は増えていくのに・・・
総務省統計局によって「統計からみた我が国の高齢者のすがた」というものがまとめられています。統計によると平成17年に65歳以上の方が2556万人、10年後の平成27年には3277万人、さらに10年経った平成37年の予測は3473万人と確実に高齢者人口が増えていくのは明らかです。
一方、アパートの空室を埋めるのは、過去の記事でもご紹介しているように年々厳しくなってきています。あなたの物件でも、高齢者の入居を受け入れざるをえないケースもこれからでてくる可能性があります。
そしてこのようなアパートが老朽化し、建替えを考えたとき、アパートオーナーなら誰でも高齢者の立退き問題に直面するのです。
■ 公的制度を利用する!
現在の賃貸不動産市場では、家主側が高齢者を容易に断ることができ、今回のMさんのようにそう簡単に引越先は見つかりません。中には、そんな状況を利用し、高齢者の入居希望者には相場家賃を大幅に上回る家賃を設定してくる不動産業者・家主までいる始末なのです。
そこで、今回のケースではMさんが何とか引越しできるよう、区や市で行なっている制度を調査し、利用しました。
1.『住み替え居住継続支援』(東京都新宿区、今回のケースが新宿区のため)
民間の賃貸住宅に入居している高齢者が、家主からその住宅の取り壊しなどを理由に立退きを求められ、転居したときに、転居したあとの家賃と転居前の家賃の額を差し引いた2分の1の金額の24ヵ月分を一時金として助成し、円滑な転居を支援するもの。
例:転居前家賃 5万円、転居したあと家賃 6万円の場合
6万円―5万円=1万円 (転居したあと家賃―転居前家賃)
1万円÷2=5,000円 (差し引いた家賃÷2)
5,000円×24ヶ月=120,000円 (上記×24ヶ月)
あわせて、引越しに係る費用も、15万円を限度に助成されます。
※ 新宿区ホームページ参照
2.『住宅相談』
住み替え相談として高齢者等、自分で住宅を探すことが困難な人を対象に、区内民間賃貸住宅への住み替えの相談を行うもの。希望に沿う物件があれば、「住み替え促進協力店」への紹介状を発行してもらうことも可能。
※ 新宿区ホームページ参照
3.『市川市民間賃貸住宅家賃等助成制度』千葉県市川市(当社所在地でも参考のため、ヒアリング調査を行いました。)
住居確保及び生活の安定を図るための制度。市内に居住し取壊し等による転居を求められた高齢者等が市内に転居した場合、住宅家賃の差額と転居費用が助成される。
この他に「財団法人 高齢者住宅財団」では高齢者の入居を拒まない賃貸住宅の紹介をしています。また、「宅建協会」では高齢者支援という名目で、市内に居住する高齢者世帯が民間賃貸住宅へ引越しするのをバックアップする為の制度があります。
当社の事例ではこれらの支援制度を組み合わせることで、Mさんの立退きに成功しました。
様々な制度を利用し、あの手この手を使って、高齢者の立退きに取り組んでみましょう。うまくいけば、立退きが一気に進む場合があります。そのためにもまずは入居者の属性や現状を把握し、役所や協会等に相談してみるのは非常に有効な方法なのです。