多くの外国人ヘルパーが活躍

大阪・関西空港から飛行機に乗ること2時間30分。台湾には日本の1割に満たない広さの国土に、2,300万人もの人々が暮らしています。

この台湾では日本より速いペースで少子高齢化が進んでおり、1951年から2001年までの50年間で、高齢者数が約10倍に増え、平均年齢は約20歳伸びています。当然、介護サービスについての社会的ニーズも急速に高まり、家族介護慰労金の給付のほか、日本と同様に在宅・地域・施設それぞれによるサービスの提供も進んでいます。

こうしたなか、大きく日本と異なるのが外国人ヘルパーの多さです。2004年末の時点で、台湾のヘルパー総数が約15.2万人。このうち約12.8万人が外国人で、全体の84%以上にも上ります。実際に外国人ヘルパーを雇用している施設の責任者に話を伺ったところ、「言葉の壁はあるものの、台湾人ヘルパーとうまく助け合うことによって、質的にも量的にもしっかりとしたサービスを提供できている」とのこと。

また在宅介護を行っている人の5%ほどは、外国人ヘルパーに自宅に住み込んでもらって、24時間の介護サービスを受けているそうで、台湾の介護サービスを支えるうえでは、既に外国人ヘルパーは欠かせない存在となっています。このあたり、深刻な人手不足に悩む日本の介護サービスでも、いろいろと考えるべきことがあるのかもしれません。
 

日本の認知症治療との違い

台湾における認知症治療の現状を語る李理事長(中央)

台湾における認知症治療の現状を語る李理事長(中央)


2005年現在、台湾の認知症患者は約13.8万人。2012年には20万人を突破すると言われています。既に200万人以上の患者がいるとも言われる日本と比べると、まだまだ少ないようにも思えますが、認知症への取り組みについては日本より恵まれた点がいくつも見られます。

まず台湾医師全国連合会の李理事長にお話を伺ったところ、台湾ではアルツハイマーの治療薬として5種類の薬(アリセプト、エクセロン、レミニー、エビクサ、ウィトゲン)が認可されており、症状の重さに合わせて使い分けているとのこと。日本では現在、アリセプト1種類しか認可されておらず、治療にあたっての選択肢が1つしかありません。

次に台湾では、経口薬(口から飲む薬)だけでなく、経皮薬(パッチ剤=皮膚に貼る薬)も処方されています。経皮薬は薬効の持続時間が長く、飲み忘れが防げるほか、患者が薬を飲みたがらない場合でも本人にストレスをかけないように与えることができるなど、多くのメリットを持っています。

さらに台湾というか中華圏ならではの治療として、抑うつや不穏といった認知症によって現れる症状に対して、さまざまな漢方薬が処方されています。ひとりの患者に対して、西洋医学と東洋医学の二つが積極的に活用されているところも、日本とは大きく異なります。

圧倒的なスケールの老人ホーム

長庚(チャンカン)養生文化村の模型。敷地が広大すぎて、カメラに収まりきらない

長庚(チャンガン)養生文化村の模型。敷地が広大すぎて、カメラに収まりきらない

今回、取材で訪れた長庚(チャンガン)養生文化村は、台湾有数の企業である台湾プラスチックが2005年に開設した、巨大な有料老人ホームです。3,800の居室で8,000人が暮らせるというそのスケールは、まさに「村」。近くに総ベッド数8,800床という、こちらも巨大な総合病院を擁しており、医療との連携も申し分ありません。

広々とした居室で自分で料理を作ることはもちろん、カフェテリア形式の食堂で好きなものを食べることができます。

老人ホームの各居室には、ゆったりとしたリビングも

老人ホームの各居室には、ゆったりとしたリビングも

建物内には、図書館、ジム、カラオケ、麻雀など18もの娯楽施設、コンビニ、ATMなど、生活に必要なものはほとんどそろっています。リハビリ施設も下半身、上半身、嚥下訓練など、部位や目的別に個別の部屋があり、最新の器具を使った訓練が行われていました。また、介護が必要となった人のために、護理之家という「入居期間の制限がない老人保健施設」のような施設が併設されており、こちらでは毎食一品、薬膳料理が出されていました。

リハビリ施設も広々としていて、体育館みたい

リハビリ施設も広々としていて、体育館みたい

さすがに、これだけのスケールの老人ホームは台湾でも珍しいようで、これまでにも多くのテレビや新聞、雑誌などの取材があったとのことです。

ただハードが優れているだけでは、良い老人ホームとは言えません。入居している高齢者の方々が、日々の暮らしに満足しているかどうかが重要なのですが、一人ひとりの穏やかな顔を見る限り、こちらの面でもあまり心配ないように感じました。
 

台湾認知症療養プログラムとは?

アジア介護ネットワークの構築をめざす椛澤社長(左)

アジア介護ネットワークの構築をめざす椛澤社長(左)

日本各地で介護事業を展開している株式会社リエイでは、日本とはひと味違う台湾の認知症治療に着目。現地の病院や介護事業者と提携することで、認知症予防を目的として現地に1カ月ほど滞在し、台湾の医師に診断・処方を受ける「認知症療養プログラム」を企画しています。そんなリエイの椛澤社長に、気になる部分を直接伺いました。

横井「台湾に着目した理由は?」
椛澤社長(以下、椛澤)「認知症治療の選択肢が豊富なこと、介護施設などのハードが優れていることはもちろんですが、日本からの近さ、日本人好みの料理、親日感情が強いことなどもポイントです」
横井「このプログラムを企画した狙いはなんでしょうか?」
椛澤「認知症に悩む方々に、新しい選択肢があることを知ってもらいたいということです。」
横井「台湾で受けた治療を、日本でも継続して受けたい場合はどのようにすればよいのですか?」
椛澤「日本で認可を受けていない薬については、個人輸入を行っていただくことになります。将来的には、日本の医師とも連携してサービスが提供できるよう、ネットワークを強化していきたいですね」
横井「日本国内だけでなく、海外に目を向けるというのは多くの介護事業者のなかでも珍しい気がしますが?」
椛澤「少し大きな話になりますが、弊社では『アジア介護ネットワーク』構築をめざしています。これは日本のスタッフが海外へ行って、現地のヘルパーたちを育成する、現地のヘルパーたちを日本へ招いて育成するといった人材育成の面と、日本人が海外へ行って介護を受ける、外国人が日本に来て介護を受けるといったサービス提供の面から成り立ちます。このプログラムも、その一環なんです」

日本はもちろん、世界的な介護の需要が高まるなかで、リエイがめざす方向はユニークかつ重要なものに感じました。このプログラムが正式に募集を開始すれば、大きな話題を呼ぶのではないでしょうか。

日本と台湾を結んだ、橋幸夫さんの講演

橋幸夫さんの講演には、現地からも多くの記者が取材に

橋幸夫さんの講演には、現地からも多くの記者が取材に

今回は、台湾失智症(=認知症)協会とMission Care Inc.(医療を中心に介護施設などを9つ運営)、そして同社と協力関係にある株式会社リエイの共同開催による講演会を取材する機会にも恵まれました。

医師や認知症介護を行っている家族による講演の後、日本からのスペシャルゲストとして登壇した橋幸夫さんは、自らの母親が25年前に認知症になり、5年間にわたって在宅介護を行ってきた経験をもとに、具体的でわかりやすいお話を展開。

なかでも、「認知症の介護は、自分一人でやろうとしてはダメ。自分の親だから自分が面倒を見るというのは、エゴかもしれない。少しでも多くの人の助けを受けるべき。今後は日本や台湾という枠を超えて、みんなが協力し合えるようになると良い」という話については、来場していた台湾の方々も大きく頷き、ときには涙ぐみながら聴いていました。

その姿を目にして、家族を大切に思い、認知症を克服していこうとするのに、日本も台湾もないんだとの思いを強くしました。
 

これからの展開に注目!

一般に、認知症初期の患者は、専門医の診察を受けることを嫌がることが少なくありません。親孝行を兼ねて台湾旅行へと連れて行き、親の認知症への認識を高めてもらうといった手段に、「台湾認知症療養プログラム」は有効かもしれませんね。具体的なプログラムの内容がどうなるか、これからの展開が気になるところです。

株式会社リエイ「海外療養プログラム」の詳細は、こちらへ。


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