介護保険サービスの利用には申請が必要
適切な介護サービスを受ける上で頼もしい味方になってくれる介護保険。基本的なことをしっかり知っておきましょう
40歳になったその日から、すべての人は手続きなしで介護保険の被保険者となり、保険料を納めることになります。このうち、65歳以上は第1号被保険者、40~64歳で医療保険に加入している人は第2号被保険者に分類されます。
病院の窓口で保険証を見せるだけで医療費が安くなる医療保険と違って、介護保険のサービスを利用するには、市区町村の窓口で申請を行い、要介護認定を受ける必要があります。
介護保険の概要や申請方法についての詳細は、「介護保険の手続き・申請について」でまとめていますので、あわせてお読みください。
要介護認定を受ける上での注意点・ポイント
要介護認定を申請すると、原則として1週間以内に訪問調査員(認定調査員)が自宅などを訪ね、親の心身の状況について認定調査を行います。高齢の方は、他人の前では弱ったところを見せようとせずに、何でも「できる」と言ってしまいがち。訪問調査の際には、必ず家族が立ち会って「何について困っているか」を伝えるようにしましょう。日頃の様子などをメモしておいて、調査員に渡すのも良い方法です。要介護度の認定は、保健・医療・福祉の専門家たちによる介護認定審査委員会によって、申請から約1カ月ぐらいで行われます。介護保険の対象にならない「非該当(自立)」、予防的な対策が必要な「要支援1~2」、介護が必要な「要介護1~5」という3つの区分に分かれており、結果が決まり次第、自宅に認定結果通知書と保険証が届きます。
認定結果に不服がある場合は、60日以内に都道府県の介護保険審査会に不服申し立てを行うことも可能です。
どういった状態なら、どのぐらいの要介護度になるかの目安は、「要介護度状態区分の目安」をご覧ください。
ケアプランの作成
要支援または要介護の判定を受けると、介護サービスを受けられるようになります。そのなかで、これまで通り自宅で暮らすのをサポートしてくれる「在宅サービス」を利用する場合には、ケアプランの作成が必要です。要介護の場合は、ケアマネジャーに「ケアプラン」の作成を依頼することになります。
ケアマネジャーを探すには、要介護認定の通知書と一緒に送られてくる居宅介護支援事業所のリストを見たり、地域包括支援センターで紹介してもらうなどの方法があります。ケアマネジャーは地域のどこでどんなサービスを受けられるか熟知しており、在宅介護を行ううえで重要なパートナーとなるため、信頼できる人をじっくりと選びたいものです。
要支援の場合は、地域包括支援センターで「介護予防ケアプラン」を作成してもらうことになります。「介護予防」という言葉のとおり、状態の悪化を防ぎ、機能向上をはかって、なるべく自立できるようにすることを目的としたもので、利用できるサービスも要介護の場合と比べて限定されたものになります。
介護保険サービスとは何か・在宅サービス・施設サービス等
介護保険サービスのサービスは、大きく3つに分かれています。数多くのサービスがあるので、ここでは代表的なものに絞ってご紹介します。全サービスの一覧が見たい方は、「介護保険サービス一覧」もあわせてご覧ください。
■在宅サービス
在宅介護をサポートするためのサービスで、「訪問」「通所」「短期入所」「その他」に分けることができます。
訪問サービスとして最も利用者が多いのが「訪問介護」で、これは自宅までホームヘルパーが訪れ、家事や調理といった生活援助や、身体介護を行うものです。
通所サービスには日帰りで入浴や食事、日常動作訓練、健康チェックなどを受けられる「通所介護(デイサービス)」と、同じく日帰りで入浴や食事、機能訓練などを受けられる「通所リハビリテーション(デイケア)」があります。いくら家族でも、介護をされる側とする側が、365日、顔を付き合わせていると、お互いにストレスが溜まるもの。双方の息抜きととらえて、積極的に活用しましょう。
短期入所サービス(ショートステイ)は、施設に最大30日まで入所させることのできるサービスで、介護者が体調を崩してしまったり、しばらく留守にするときに便利です。状態が安定しているときに利用する「短期入所生活介護」と、医療的な管理が必要なときに利用する「短期入所療養介護」の2種類があります。
その他のサービスとしては、電動ベッドや車いすなどをレンタル料金の1割で借りることのできる「福祉用具貸与」や、販売価格の1割で購入できる「特定福祉用具販売」、手すり設置など自宅のバリアフリー工事費を助成してもらえる「住宅改修費の支給」などがあります。
要介護度によって利用できるサービスに違いがあるので、ケアマネジャー(要支援の場合は地域包括支援センター)とよく相談してください。
■施設サービス
施設に入所して生活を行いながら、生活援助、身体介護、栄養管理などのサービスを受けるもので、3つの種類があります。いずれも要介護の場合のみ利用することが可能です。
「介護老人福祉施設サービス」は「特別養護老人ホーム」という名で知られており、日常生活の介護や機能訓練、レクリエーションなどがサービスの中心となっています。非常に人気が高く、全国で数十万人もの待機者がいると言われているので、利用を考えている人は、なるべく早めに申し込みだけでもしておくと良いでしょう。
「介護老人保健施設」は、一般には「老健」と呼ばれており、病状は安定しているものの、退院してすぐに自宅へ戻るのは不安という場合に利用する、病院と自宅の中間的な役割の施設です。なるべく早く自宅に戻れる状態にすることを目的としているため、入所期間は3~6カ月程度と短めに設定されています。
「介護療養型医療施設」は、急性期の治療が終わり、慢性的な症状のための療養を行うための施設で、医療・看護に重点を置いたサービスが受けられます。しかし、医療保険対象の「療養病床」との違いが不明確であることを理由に、2024年3月で介護医療院などに転換したうえで廃止される予定です。
「介護医療院」は、2018年4月から始まったもので、「介護老人保健施設」と「介護療養型医療施設」の中間のようなサービスです。「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供してくれます。
実際のサービス内容は施設ごとに差があるので、パンフレットやホームページで情報を集めたり、見学や体験入所をするなどして、入所前によく検討を行いましょう。
■地域密着型サービス
住み慣れた地域での生活を継続することを目的としたサービスです。施設などの規模が小さく、利用者のニーズに対してきめ細かく応えてくれます。
「小規模多機能型居宅介護」は、訪問、通所、短期入所の各サービスをすべて一つの事業所で、馴染みのスタッフから受けることができるものです。1日あたりの利用者は通所で15人、短期入所で9人までと定められているため、アットホームな環境で過ごすことが可能です。
「看護小規模多機能型居宅介護」は、その名の通り「小規模多機能型居宅介護」に訪問看護を加えたもの。通所介護(デイサービス)を中心に利用しながら、必要に応じてショートステイや訪問介護、訪問看護を受けることができる、一種のセットメニューのようなサービスです。
「グループホーム」の呼び名で知られる「認知症対応型共同生活介護」は、比較的安定した状態の認知症の高齢者たちが、1ユニット9人までの施設に入所して、生活援助などを受けるサービスです。
住んでいる地域によっては希望するサービスがない場合もあるので、利用にあたっては、ケアマネジャーや地域包括支援センターとよく相談しましょう。