感染症治療薬の種類……原因は細菌か、真菌か、ウイルスか

antibiotics

一般的に「抗生物質」と呼ばれるものは、菌が原因で起こる感染症治療に使われる「抗菌薬」のことです

病院で「抗生物質を出しますね」と薬を処方され、飲んだことがある方は多いのではないでしょうか。

そもそも感染症の原因は以下の3種類に大別され、それぞれの原因に合わせて作用が異なる薬で治療します。
  • 細菌による感染症……抗菌薬で治療
  • 真菌(カビ)による感染症……抗真菌薬で治療
  • ウイルスによる感染症……抗ウイルス薬で治療
一般的に混同されやすく、病院でも患者さんにわかりやすいように医師が「抗生物質」と言うことも少なくありませんが、正確には抗生物質、抗菌薬、抗生剤などは異なるものです。少し専門的になりますが、厚生労働省は以下のように解説しています。
抗微生物薬(antimicrobial agents, antimicrobials):微生物(一般に細菌、真菌、ウイルス、寄生虫に大別される)に対する抗微生物活性を持ち、感染症の治療、予防に使用されている薬剤の総称。ヒトで用いられる抗微生物薬は抗菌薬(細菌に対する抗微生物活性を持つもの)、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗寄生虫薬を含む。
抗菌薬(antibacterial agents) :抗微生物薬の中で細菌に対して作用する薬剤の総称として用いられる。
抗生物質(antibiotics):微生物、その他の生活細胞の機能阻止又は抑制する作用(抗菌作用と言われる)を持つ物質であり、厳密には微生物が産出する化学物質を指す。
抗生剤:抗生物質の抗菌作用を利用した薬剤を指す通称。

抗生物質は、抗菌薬の中でも微生物が作った化学物質を言います。以下、まとめて抗菌薬と称します。今回解説するのは、細菌による感染症治療に使用する「抗菌薬」についてです。

抗菌薬の種類・作用・効果

抗菌薬には、細菌が生きていくために必要なことをあらゆる角度から邪魔をし、細菌が生きられないようにするはたらきがあります。一言でいえば「細菌を壊したり、細菌が増えるのを抑えたりする薬」とも言えるでしょう。抗菌薬は、細菌に対する作用の違いで以下の5種類に分けられます。

■細胞壁合成阻害薬(さいぼうへき・ごうせい・そがいやく)
細菌の一番外側には細胞壁という膜があります。その細胞壁を破壊し、細菌を殺す薬です。細胞壁は人体(動物)の細胞には存在しませんので、この薬は人体細胞への毒性が低いのが特徴です。

代表的な薬は、ペニシリン系としてアモキシシリン(パセトシン、サワシリンなど)、セフェム系としてセファクロル(ケフラール)、セフカペン(フロモックス)、セフジトレン(メイアクトMS)、セフジニル(セフゾン)など。

■タンパク合成阻害薬
細菌が生きていくために、また分裂するために必要なタンパク質を作らせないようにして細菌の動きを止める薬です。

細菌内にあるタンパク質を作る時に使われる「リボソーム」という成分にくっつき、タンパク質が作られるのを阻害します。人間(動物)の細胞も生きていくために細胞内にあるリボソームでタンパク質を作りますが、タンパク合成阻害薬は菌に特徴的なリボソームにくっついて作用するのが特徴です。

それ以外にも、タンパク質の合成にかかわるmRNAやtRNAという物質の働きを阻害し、細菌の増殖を抑える作用をもつものもあります。

代表的な薬はアミノグリコシド系としてアミカシン(アミカシン硫酸塩:注射)、ゲンタマイシン(ゲンタシン)など、テトラサイクリン系としてミノサイクリン(ミノマイシン)など、マクロライド系としてクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)、ジスロマック(アジスロマイシン)、クロラムフェニコール系としてクロラムフェニコール(クロロマイセチン、クロマイ)などがあります。

■DNA合成阻害薬
細菌が増殖するために必要な遺伝情報が入っているDNAが作られるのを阻害して菌を殺す薬です。殺菌効果と血液中から組織(臓器など)に入りやすく(組織移行性が高い)、対象とする菌の種類が広いのが特徴です。

代表的な薬はニューキノロン系(合成抗菌薬)として、レボフロキサシン(クラビット)、シタフロキサシン(グレースビット)、トスフロキサシン(オゼックスなど)、ノフロキサシン(バクシダール)などがあります。

■葉酸合成阻害薬
DNA合成などに必要な葉酸という物質が作られるのを阻害する薬です。DNAが作られなくなることで菌を殺します。

代表的な薬はサルファ剤としてスルファメトキサゾール(バクタ、バクトラミン)など。

■細胞膜障害薬
細菌には細胞膜があり、細胞膜はリン脂質という物質が並んで構成されています。これは動物も同様。この細胞膜を構成するリン脂質がうまく働くことで細胞に必要な物質を細胞の外側から取り入れたり、外側に出すなど、細胞の外と内で色々な物質を交換し、細胞の生命は保たれています。この細胞膜のリン脂質の働きに働いて細胞の外と内との物質交換(透過性)の機能を阻害し、細菌を殺す薬。

代表薬はペプチド系としてバシトラシン(バラマイシン)、ポリミキシンB(硫酸ポリミキシンB)、環状ポリペプチド系としてダプトマイシン(キュビシン)などがあります。

以上のように、抗菌薬と一言で言っても様々な種類があります。抗菌薬が菌を殺すために、血中の薬の濃度を維持しておく必要があります。そのため、飲み忘れないように一定間隔できちんと服用して、酷い下痢、発疹、粘膜の腫れなどの副作用がない限り自己判断で中止せず、きちんと指示通り飲み切ることが大切です。

なお、近年は医療機関に対しても、風邪には抗菌薬を使わないことが厚生労働省からも推奨されています。風邪の多くはウイルスが原因のため、抗菌薬は治療に役立たず、不要に処方されることで「薬剤耐性菌」を増やしてしまうリスクがあるためです。

例外として抗菌薬が処方されるのは、細菌が原因と考えられる一部のものに対してでしょう。一般的な風邪の原因は8割以上がウイルスによるものですが、1割程度は肺炎マイコプラズマなどの細菌によるものがあります。細菌が原因だと明らかなものについては、例えば咳が長引くといった本人にとっては風邪と変わらないような症状に対しても、抗菌薬が処方されることがあります。

抗菌薬の処方や飲み方について正しく理解し、一人一人が適性使用を守れるように心がけましょう。

■参考
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