発達障害/アスペルガー症候群

アスペルガー症候群に特徴的な症状・原因と診断法

【医師が解説】アスペルガー症候群は、自閉症に類似性がある「広汎性発達障害」に含まれる疾患です。身近な子ども同士の付き合いが困難、興味が限定的、日常の行動がパターン化しやすいといった特徴的な症状があります。子どもだけの病気ではなく、大人になってから診断されるケースも。アスペルガー症候群の原因や、特徴的な症状について解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

アスペルガー症候群とは……広汎性発達障害のひとつ

アスペルガー症候群とは…原因・特徴的な症状・診断法

周囲との交流困難で、興味があるものが限定的。かつ、日常生活がルーチン化しやすいのがアスペルガーの特徴

アスペルガー症候群は「自閉症」と類似性のある疾患で、広汎性発達障害のひとつに分類されています。広汎性発達障害については、「発達障害の種類・症状・特徴」で詳しく触れていますが、アスペルガー症候群は、身近な子ども同士のつきあいが困難、興味が限定的、そして日常の行動がパターン化しやすいといった特徴的な傾向が見られます。

アスペルガー症候群の発病頻度は1000人中数名程度で、男女比は男子に多いとされています。統計の具体的数字に関しては「対人関係上の問題」など、アスペルガー症候群に特徴的な症状をいかに評価するか……といった、いわゆる統計の取り方により差異が出やすくなっています。アスペルガー症候群の原因や症状など、基本情報について詳しく解説します。
 

アスペルガー症候群の原因……自閉症と類似点も

アスペルガー症候群のはっきりした原因や発症メカニズムは、現時点では分かっていません。前述の通り、アスペルガー症候群では自閉症に類似の症状が見られるため、自閉症の場合と同じく遺伝的、生物学的そして免疫学的な要因などが複雑に作用した結果、胎内での中枢神経系の発育時に何らかの問題が生じたのではないかと考えられています。

自閉症の原因については、「自閉症とは?原因・症状・特徴」をご参照ください。
 

アスペルガー症候群に特徴的な2つの症状

アスペルガー症候群は、「周囲との交流が困難」、「限定的な興味の対象と日常生活のルーチン化が顕著」といった自閉症的な症状を特徴する疾患です。こうした症状は、保育園や幼稚園に行く年齢になり、同じ年齢の子どもたちと接し始めてから明らかになることが多いようです。

アスペルガー症候群では、知能や言語発達自体には問題がないこともあり、上記のような症状は親のしつけのせい……などと誤解されやすい面もありますが、できるだけ早く症状に気付き、必要な治療を開始することが望ましいです。もし幼稚園や小学校などでお子さまに友達がおらず上記のような症状が顕著な場合、アスペルガー症候群の可能性もあることは留意したいところです。その際は、かかりつけの小児科医などの専門家にまず相談してみることをぜひ考慮してみてください。

以下で、2つの特徴的な症状について解説します。
 

コミュニケーションをとるのが苦手・行動がぎこちない

アスペルガー症候群では、相手の気持ちを理解することや、その場の空気を読むことが苦手なため、自分の気持ちがうまく相手に伝わりにくいです。また、相手が何を望み何を望んでいないかを判断する力が弱いこともあり、仲間同士の輪にうまく入れず友達を作りにくい傾向が顕著です。

アスペルガー症候群は自閉症とは異なり、言語発達に遅れ自体はありませんが、言葉の使い方や話し方は標準的でないことが少なくありません。顔の表情やジェスチャーを交えて相手とコミュニケーションを取ることも苦手、さらに動作がぎこちないといったことも少なからずあり、子どものグループ内でいじめの対象になってしまう……といった問題が起きてしまう場合もあるようです。
 

興味が特定の対象に限定されやすい

もう1つ、興味が特定の対象に限定されやすいのがアスペルガー症候群の特徴です。下に3つの例を挙げます。
 
  • 車に興味を覚えると、車のモデル名や仕様を覚えることには熱中するが、実際にその車に乗ってどこかへドライブに行くといったことには全く無関心で、興味の方向がかなり限定されてしまう傾向がある。
  • 例えば服装が興味の対象外になった場合、着るものや着方にも無頓着になり、周りの人に驚かれてしまうような恰好をしてしまうことがある。
  • 自分の行動や習慣に関しては自分が決めたルールにこだわりやすく、毎日の行動がパターン化しやすいだけでなく、いつもと違うパターン、例えば風呂と夕食の順序が逆になるといったことを非常に嫌がる傾向がある。
 

大人になってから診断も……アスペルガーとカサンドラ症候群

また、誤解している人も多いようなのですが、アスペルガー症候群を含む発達障害は決して子どもだけのものではありません。大人になってから対人関係などに悩むケースもあり、子どものころに気づかず、社会に出て会社に入ってから病院を受診し、アスペルガー症候群の診断を受けることもあります。

最近では正式な病名ではないものの、アスペルガー症候群の配偶者やパートナーを持つ人が陥りやすい「カサンドラ症候群」というものも注目されています。カサンドラ症候群については、「発達障害のパートナーに悩む…カサンドラ症候群」をご参照ください。

いずれにしましても、本人も周りもアスペルガー症候群の特徴についての正しい知識を持って、人間関係を上手に築いていくことが大切です。アスペルガー症候群の具体的な治療法に関しては、「アスペルガー症候群の対処法・治療法」をあわせてご覧いただければと思います。
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