秋冬と乾燥が厳しくなるにつれ、風邪やロタウイルスなどによる急性胃腸炎、インフルエンザが流行し始めます。今年は季節性インフルエンザだけでなく、新型インフルエンザの大流行も心配されているので、個々人が正しい知識をもって対処することが大切。適切な予防法・対処法について解説しましょう。
寒くなると感染症が流行するのはなぜ?
風邪・インフルエンザが流行する冬。幼稚園や小学校での集団生活が中心の子供は特に注意が必要
気温と湿度が下がる冬。冬に感染症が流行る理由として、以下の3点が挙げられます。
■冬はウイルスが強くなる
ウイルスは低温・低湿度を好み、冬になると夏より長く生存できるようになり、感染力を強めます。冬場に風邪を始めとするウイルス感染が多くなるのは、外気が寒く乾燥するためです。
■冬は人の免疫力が低下する
低気温で体温が下がることで、人の免疫力は低下します。また、外気の乾燥に加えて、夏に比べて水分を積極的に摂取しなくなるため、体内の水分量も少なくなりがち。人間の体は60%が水分ですが、体内の乾燥により喉や気管支の粘膜がカラカラになると、本来粘液でウイルスの侵入を防いでいるノドや鼻の粘膜が傷みやすくなり、ウイルス感染を起こしやすくなります。
■冬は飛沫感染の範囲が広くなる
外気の乾燥によって咳やくしゃみの飛沫が小さくなり、飛沫に乗ったウイルスがより遠くまで飛ぶようになります。一度の咳・くしゃみによる感染範囲が広くなり、感染スピードが上がります。
以上のような理由で、冬は風邪やインフルエンザを始めとする感染症が流行しやすくなるのです。
寒さと乾燥に負けず、ウイルスを予防する方法
夏に比べて少なくなりがちな水分補給。ノドの粘膜をほどよく潤すためにも、適度な水分補給を心がけましょう
ウイルス予防には、手洗い・うがい・マスクの着用が第一。さらに、加湿器などを活用してウイルスが好きな乾燥を防いでいる人も多いようです。
しかし意外と知られていないのが、体内に侵入してきたウイルスをブロックする方法。マスクで口元の湿度を保つのも効果的ですが、ノドが空気の乾燥でカサカサになっていたら要注意。ウイルスに感染しやすくなってしまうので、適度に喉を潤すために、冬でも意識的に水分補給を行いましょう。
夏のように汗をかかなくても、大人の場合は呼吸や皮膚から1日約1000mlの水分が失われていると言います。汗をかく夏と違って、子供も自主的に水分補給をしなくなるため、大人が気をつけてあげることが大切。体の水分にはナトリウム、カリウム、クロールといったイオンが含まれているので、適宜これらの成分に近いイオン飲料を活用するのもオススメです。
風邪・インフルエンザにかかってしまった場合の対処法
重度の脱水症を防ぐためにも、効果的に水分補給させることが大切
感染症にかかった場合は速やかに医療機関を受診し、安静にして回復を待つのが一番ですが、特に忘れがちで注意が必要なのが、脱水症の予防です。
特に子供が風邪やインフルエンザや高熱を出してしまったときは、体内から大量の水分が失われてしまいます。高熱時の子供は自分から水を飲みたいと訴えないことが多いので、体を冷やさないことや、栄養面を心配する一方で、水分補給がおろそかになりがち。治療中に重度の脱水症にならないためにも、高熱が出た時にはできればイオン飲料を飲ませ、効果的に水分補給をさせましょう。イオン飲料は普通の水よりも吸収が早いので、失った水分がすばやく体にいきわたらせることができます。
イオン飲料として手軽に購入できるポカリスエットを例に挙げると、100mlあたりにナトリウム49mg、カリウム20mg、カルシウム2mg、マグネシウム0.6mgが含まれています。
感染症による嘔吐・下痢の注意
風邪やインフルエンザだけでなく、ノロウイルスやロタウイルスによる急性胃腸炎でも嘔吐と下痢が続き、水分補給しないと脱水症を起こしてしまいます。この場合は、スポーツ飲料よりも糖分が少なくナトリウム量が多い「経口補水液」が有効。
経口補水液は、発展途上国での脱水状態の治療として有効性と安全性が確認されており、欧米でも使われています。日本での主な製品としては、OS-1(大塚製薬)、アクアライトORS(和光堂)、アクアソリタ(味の素ファルマ)などがあります。
OS-1の場合、ナトリウムはポカリスエットの約2.4倍。アクアライトORS、アクアソリタの場合は約1.7倍です。汗より嘔吐と下痢がひどい場合は多くのナトリウムが体から失われるので、経口補水液を効果的に活用しましょう。