帯状疱疹の後遺症「神経痛」を残さないための治療が大切
帯状疱疹自体は、1ヶ月ほどでピリピリした痛みが治まり、ほとんどが自然治癒します。痛みが消えた後でも皮膚に痕が残りますが、2~4週間ほどで皮膚症状も治癒します。しかし、帯状疱疹で最も問題なのは、一時的な痛みや皮膚の痕ではなく「帯状疱疹後神経痛」。皮膚の軽い違和感を含む帯状疱疹の神経痛は、皮膚症状が消えてもずっと残ってしまうことがあります。普通、痛みは皮膚の炎症に伴うものですが、炎症が消えても痛みの記憶だけが残り、非常に厄介。神経痛が残るリスクを減らすためにも、自然治癒に任せず、早期治療することをお薦めします。
帯状疱疹を起こす「水痘帯状疱疹ウイルス」には、口唇ヘルペスに使うのと同じ抗ヘルペスウイルス剤が有効。抗ヘルペスウイルス剤は点滴による静脈注射、内服、外用剤の塗布と、状況に併せて3パターンの使い方があります。ズキズキとうずくような痛みに対しては、消炎剤、鎮痛剤も効果的。
一度かかれば再発リスクが少ない帯状疱疹
帯状疱疹は、小児期にかかることが多い水疱帯状疱疹ウイルスの免疫記憶が落ちることで発症します。ほとんどの人が過去に一度持っていた免疫なので、一度帯状疱疹にかかって治癒すれば免疫力が再度回復します。大人になってからの発症がほとんどなので、水疱瘡と異なり、帯状疱疹の免疫は生涯保たれます。そのため、帯状疱疹はほとんど再発することがないのです。
帯状疱疹予防には水疱瘡ワクチンが有効
ウイルス性の病気予防にはワクチン接種が有効です。普通のワクチン接種は、体にウイルスを覚えさせることで免疫を強化しますが、帯状疱疹でも同じ方法が有効。帯状疱疹の場合は、ウイルスが体内に入ってすぐに発症するのではなく、もともと体は感染している「持続感染状態」から発症する病気なので、新たにワクチンを摂取して予防できるという仕組みに、違和感を感じる人もいると思います。
しかし、どんな病気でも感染してから時間が低下すると免疫記憶は低下します。帯状疱疹の危険因子の一つは、年齢。現在では、水疱瘡ワクチンを新たに接種すると、その後の帯状疱疹の発症率が減少すること、また、もし帯状疱疹を発症した場合でも、帯状疱疹後神経痛の発症率が減少することが報告されています。
目のまわりの帯状疱疹には注意が必要
症状自体は自然治癒する帯状疱疹ですが、目のまわりに出た場合は要注意。視力障害を起こすことがあるので、眼科での診察を受けましょう。より安全に積極的な治療をするために、入院治療が必要になる場合もあります。稀ですが、帯状疱疹のせいで角膜を損傷してしまうと、治癒したあとも角膜に混濁が残り、角膜移植が必要になってしまうこともあります。また、帯状疱疹の発症と同時に、顔面神経や聴神経・平衡感覚を司っている前庭神経に障害が起きることもあります。難しい病名ですが、報告者の名前を取って「ラムゼイハント症候群」と呼んでいます。神経障害の症状として、顔面筋肉の運動麻痺(顔面神経麻痺)や耳鳴り、難聴、めまい(平衡機能障害)、眼痛、頭痛、味覚障害、涙が止まらない流涙という状態が発症します。
目のまわりに帯状疱疹が出た場合や、疱疹と同時に気になる症状が出たときは、少しでも早く病院を受診することをお薦めします。