2005年のアメリカ糖尿病学会の発表でも、糖尿病の診察の度に足の検査をする医療施設はわずか14%しかありませんでした。残念ながら日本ではもっと少ないでしょう。神経障害や末梢血管障害による糖尿病足病変はちょっとしたことで足の切断につながる恐ろしいものです。場合によってはあんかや湯たんぽの使用が禁止される状態もありますよ。基本的には患者自身が毎日足をよく観察することから始まります。
足の異常は毎日点検
直接の誘因は感覚が鈍くなったり、血行不良による熱傷や傷の治療の遅れ、"たこ"や"魚の目"による深部の亀裂、足の変形による部分的な圧迫、靴擦れなどがあります。恐ろしい話ですが釘を踏み抜いても分からなかったり、足をストーブにかざしたまま寝込んでしまった人がいます。
足の診察では医師は次のようなことを調べます。
きれいに手入れされているだろうか?
ヘルシーな皮膚の色をしているか
むくみ、赤くあるいは青く変色しているところはないか
足の背に走っている動脈の拍動が感じられるか
足指や脛(すね)に毛が生えていない?(つま先まで血が流れていないと足指に毛が生えないのです)
足が冷たい、あるいは異様に熱っぽい?
アキレス腱の反射
これらは私たちが日常的に行えることですね。
爪や足指の変形、水虫、"たこ"などの異常があれば直ちに受診すべきなのです。
足病変は寸時を争う事態もありますから、診察の先延ばしは危険です。
糖尿病では足の神経障害と血管障害の2大リスクがあります。
一口に潰瘍と言っても、神経障害では足の親指の底や親指の付け根の膨らみ(ボール)の底部によく起ります。
これに対して末梢血管障害では親指の先端や小指の側面など、心臓から一番遠く離れたところから治りにくい潰瘍が始まることが多いのです。
末梢神経障害も末梢血管障害も両方の足に起りますから、足の切断を受けますとやがて両足になり、余命も短くなります。全身の神経や血管が同じようにダメージを受けているからですね。
今では簡単に「下腿-上腕血圧比」を調べると足の動脈硬化の程度がよく分かるようになりました。病歴の長い人は定期的に調べてもらいましょう。
予防にはまず血糖値と血圧のコントロールですね。糖尿病で喫煙者の人がいたら足病変のリスクが最大ですよ。
医療の力を借りてでも禁煙を成功させてください。