アセチルサリチル酸100mgのバイアスピリン

アセチルサリチル酸100mgのバイアスピリン

糖尿病がなくても50~60代になれば動脈硬化や高血圧、脂質異常で低容量アスピリンや血圧降下剤、スタチンなどを処方されることが多いもの。さて、網膜症のある人に血液サラサラのアスピリンは安全でしょうか。

この問いは私自身の問題でもあるので、かねてから関心がありました。ですから以下の記事は治療のアドバイスではありません。皆様との情報の共有です。キーワードはETDRSというアメリカで行われた大規模な「糖尿病網膜症の早期治療研究」です。

糖尿病に多い合併症「網膜症」

網膜症というのは自覚症状の有無に関わらず、とても多くの糖尿病者に見られる合併症です。診断後20年たつと、1型糖尿病者の90%以上、2型糖尿病者の60%以上に程度の差こそあれ、なんらかの網膜症があるとされています。その結果、少なくとも10%の糖尿病者が視力に問題を抱えるという恐るべき有病率の細小血管症です。

特に2型糖尿病の場合は、糖尿病と診断された時点ですでに10~20%の人が網膜症を合併しているという報告が日本にもアメリカにもあるので心すべきです。自覚のない2型糖尿病はいつ発症したのか定かではないからです。


アスピリンは眼底の毛細血管の出血を増やすか?

心筋梗塞や脳血管の閉塞を防ぐために、血小板を固まり難くする目的で低容量のアスピリンを服用しますが、そのために血が止まらなくなって網膜の毛細血管からの血液の漏れや出血が増えては困ります。

結論から先に書きますと、世界の糖尿病研究をリードするアメリカ糖尿病協会の見解は「アスピリンは網膜症の進行レートを変化させない、つまり良くも悪くもしない。また、硝子体の出血リスクを高めることもない」ということです。

よかったですね。これが上記のETDRSで分かりました。この研究は1979年から4年間アメリカで行われたもので、中程度からやや重い糖尿病網膜症の患者3,711人を被験者にして「網膜がどのような状態の時に光凝固術を行うのが最適か?そしてその効果」を研究したり、「アスピリンは網膜症の進行を遅らせたり、重い視覚障害になるのを予防するかどうか」を研究したものです。

なぜ"アスピリン"かというと、リウマチの関節炎治療のためにかなりの量のアスピリンを服用していた糖尿病患者は、なぜか網膜症の有病率が低いという通説があったからです。ETDRSではアスピリン650mg/日あるいはプラシーボ(偽薬)をランダムに分けて研究しましたが、アスピリンは網膜症には影響しないという結論でした。

ただし、最近は糖尿病とリンクするからだの中の炎症が注目されていて、今のところ動物実験ですがアスピリンは網膜の毛細血管のロスを予防するという論文を目にするようになりました。またアスピリンが話題になるかも知れません。


定期検眼がなによりも大切

網膜症はかなり悪くならないと自覚症状が現れません。また、内科医には専門知識が必要な網膜症の診断は無理だと思います。ですから糖尿病網膜症に詳しい眼科医に診てもらいましょう。何もなくても年1回の検診が必要です。特に女性の妊娠は網膜症を急激に悪化させますから、糖尿病のある女性は計画妊娠の前に眼科検診を忘れないように。

2型糖尿病と診断された人はどの位進行しているのか分かりませんから最初にきちんと眼底検査をしなくてはなりません。内科医が張り切ってインスリンを使って急速に血糖値を下げたりすると眼底出血の恐れがありますから。2型では治療を開始して間もなく起こす低血糖は目には非常に危険なのです。これには網膜の酸欠や毛細血管の損傷が考えられています。

網膜症のリスクは血糖の高さ×罹病年数に比例します。予防のために、また進行を止めるためにも血糖コントロールと血圧をなるべく正常値に近づけるように。血中脂質と網膜症の関連は明らかではありませんが、血管の病気なのですからベストを尽したいものです。

■関連リンク
Early Treatment Diabetic Retinopathy Study (ETDRS)
アスピリン療法
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