糖尿病/糖尿病の原因・基礎知識

糖尿病になりやすい人・糖尿病の原因

「甘い食べ物が好きな人は糖尿病になりやすい」と思っていませんか? 実はこれはよくある間違いで、デマなのです。1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病など、それぞれの糖尿病になりやすい条件、糖尿病の原因について、正しい知識を持っておきましょう。

執筆者:河合 勝幸

「甘いものが好きな人は糖尿病になりやすい」はウソ 

お菓子好きな男性

甘いものが好きなら糖尿病になりやすい? 実はこれは誤りです。甘党でも辛党でも、摂取カロリーが多すぎるのはよくありません

甘い食べ物が好きな人は糖尿病になりやすいとよく言われますね。でもこれはデマですよ。

もちろん糖尿病に限らず、誰でも甘い物の食べ過ぎは、よいことではありません。だらだらと大量のお菓子を食べていては虫歯になりやすくなるでしょうし、多くの甘いものは栄養素が少ない割に高カロリーですから太りやすくなります。特に高脂肪で高糖質の料理やスイーツは、糖質がインスリン分泌を高め、それが脂肪細胞に余分なエネルギーを脂肪として蓄えるシグナルになります。

2型糖尿病は肥満が引き金になることが多いので、甘党であれ辛党であれ、カロリーの摂り過ぎは、糖尿病への近道になってしまいます。ただし、糖尿病を発症した後の甘い物の摂りすぎはよくありません。ご飯でも塩せんべいでもスイーツでも、甘味に関係なく炭水化物を多く含む食品は血糖コントロールのために一定量を守ることが大切です。

糖尿病になりやすい人の条件・糖尿病の原因

1型糖尿病や2型糖尿病になる原因は色々考えられていますが、多くの因子が複数に絡み合っているようです。同じような肥満でも、糖尿病になる人とならない人がいます。

はっきり分かっていることは、1型でも2型でも糖尿病の家族歴のある人はリスクが高いということです。しかし、1型糖尿病者の多くは家族歴はありません。潜在的に持っている遺伝子が何かの原因でオンになるようです。

民族的にも1型糖尿病は白人に多く、しかもある地域に片寄っているようにも見えます。北欧のフィンランドやスウェーデン、サルデーニャ島(イタリア)ではなぜか発症率が年10万人あたり40~50人と高率ですが、日本では1~2人と低いのです。その代わり、日本人は2型糖尿病になりやすい民族です。遺伝的背景に加えて、運動不足や美食が肥満や2型糖尿病に結びつくのでしょう。

糖尿病患者が多いことは事実ですが、もちろん糖尿病は他人に伝染するような感染症ではありません。しかし年齢は大きな意味を持っています。1型糖尿病は年齢に関係なく発症しますが、半数以上は20歳以下の発症です。肥満や生活習慣は1型糖尿病の危険因子ではありません。2型糖尿病の多くは50歳以上に見られ、肥満気味あるいはかつて太っていたことがある人に見られます。

ストレスやアルコール、甘い物などで直接的に糖尿病が起こることは考えられていませんが、そういった因子で、糖尿病の発症が早まってしまうことは考えられます。

1型糖尿病の原因

1型糖尿病は、本来自分の体を外敵から守る免疫系が、インスリンを分泌するすい臓のベータ細胞を異物と判断して、誤って破壊することから発症します。その原因は正確には分かっていませんが、遺伝、自己抗体、ウイルス、食品(牛乳や離乳食を始めるタイミング)、酸素のフリーラジカル説などがあります。

食品が原因というのは、たとえば乳児の段階では小腸のバリアが未完成なので、人工ミルクの牛乳のタンパク質がそのまま体に入ってしまい、その結果、自己抗体がベータ細胞の表面にある類似のタンパク質を非自己と認識するのではないか、という仮説です。

ウイルス説も有力で、1960年代にサルデーニャ島、1970年代にフィンランドで起った1型糖尿病の著しい増加の説明に都合がいい仮説です。

ごく最近にも、ありふれたウイルスであるヒト・パレコウイルスが1型の引き金になるようだという論文がノルウェーの研究所から発表されました。このヒト・パレコウイルスの仲間のウイルスがネズミだけに感染して、そのネズミに1型糖尿病を起すことが知られているからです。

権威ある科学誌「Science」の2016年2月号に驚くような記事が載りました。今までは自己免疫が誤作動して、インスリンを分泌するベータ細胞を壊してしまうのが1型糖尿病と考えられていましたが、実は免疫細胞(T細胞)がターゲットにしているのはベータ細胞そのものではなく、ベータ細胞の中にあるプロインスリンの断片と他のペプチドが結合したハイブリッド・インスリン・ペプチド(HIPs、半分はインスリンの切れ端、半分は他のペプチド)であるという発見です。自己抗原が解明されることで1型糖尿病の診断方法、寛解による予防や治療、そして完治への道筋の可能性が期待されています。

2型糖尿病の原因

インスリンが十分に分泌できない、あるいはインスリンはあるけど十分に作用しないという状態ですから、1型糖尿病とは別の原因です。研究者は遺伝、年齢、肥満、生活習慣を挙げています。

2型に関係する遺伝子は100前後報告されていますが、いずれも発症のリスクをわずかに高める程度の弱いものです。これらの遺伝子の組み合わせが役割を演じ、年齢や生活様式(運動不足や肥満)が2型糖尿病の引き金になっているようです。2型は遺伝との関連がとても強い病気です。加齢がリスクを高めます。

2型糖尿病で親から遺伝するのは主にインスリン抵抗性だと考えられています。肝臓のインスリン抵抗性が高ければ空腹時高血糖になりやすく、筋肉のインスリン抵抗性は食後高血糖になりやすくなります。これらは自覚することは出来ませんから、ヘルシーな食生活と体重管理、メタボ検診や人間ドックで気配りするしかありません。

1990年代の終わり頃に発見された、線虫の寿命に関するFOX遺伝子の中で、特にFOXO1(フォックス・オー・ワン)がヒトのベータ細胞の新生、増殖、分化、脱分化を調節していることが分かり、ホットな研究分野になっています。糖尿病の予防や新しい治療法が開発されそうです。

妊娠糖尿病の原因

妊娠によるホルモン変化や、遺伝、肥満が有力な原因です。

発育する胎児に栄養を供給する胎盤はいろいろなホルモンを多量に分泌します。これらのホルモンは胎児には必要ですが、母体のインスリン抵抗性を高めるものがあります。遺伝的には、研究者は2型糖尿病と同じではないかと考えています。母体のインスリン分泌能が十分でないと血糖が高くなってしまいます。糖尿病予備群程度の血糖でも治療の対象になります。肥満のある妊婦に多くみられます。

食事療法についても、誤った情報がたくさんあります。正しい基礎知識を身につけましょう。食事療法の基本については「糖尿病治療……食事療法のウソ・ホント」をあわせてご覧ください。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます