お酒を中断した時に出現する禁断症状。アルコール依存症に特徴的な現象です
しかし、それも飲酒が適量である間だけ。過度の飲酒を長期間続けると、アルコールに対する依存が生じてしまい、急に飲酒を中断すると、心と体に変調(禁断症状)が現れます。今回は、この禁断症状(または離脱症状)とはどのようなものか、また、どうして現れるのかについて、お話したいと思います。
アルコールの禁断症状
アルコールの禁断症状は、飲酒を止めた後、6~12時間ほど経過して、以下のような症状が出現します。- 不安
- 頭痛
- 不眠
- 手の震え
- 興奮
- 悪心、嘔吐
- 発汗、動悸
- てんかん発作
- 幻覚
- 見当識(時間、空間に対する感覚)の障害(今がいつで、ここがどこだか分からなくなる)
次に、アルコールの禁断症状のメカニズムについて述べます。
禁断症状の出現にはGABA(ギャバ)が関与
脳の活動は活発になったり、緩やかになったりしますが、それには、脳内の神経伝達物質が関与しています。脳の活動を活発にする代表的な神経伝達物質はグルタミン酸で、反対に穏やかにするのがGABAです。アルコールはGABAの作用を増強させ、脳の働きをスローダウンさせます。その為、お酒を飲むと、心の緊張が軽くなり、リラックスできますが、動作が緩慢になったり、判断力が低下します(飲酒時の車の運転は特に危険ですよ!)。
アルコールを長期間にわたり、過量に飲み続けると、脳の活動は常に抑制された状態になります。そこで、急に飲酒を中断すると、脳の活動を抑えていたものが無くなってしまうことになり、いわば、脳が暴れだしてしまいます。この為、落ち着かなくなったり、手が震えたりといった禁断症状が起こりますが、脳の暴れ具合が大きい場合には、幻覚が現れたり、てんかん発作が起きたりします。
日本の飲酒人口は約6千万人。大多数の方は、依存症とは無縁で、お酒を飲むのをやめても、もちろん、禁断症状は生じません。しかし、そのうちの3~4%(200万人程度)は依存症です。その背景には、家庭や仕事などで、容易に解決できない問題を抱えていて、飲酒がその辛さを和らげる手段となっている場合もあるでしょう。難しい問題ではありますが、正しい知識を持って、アルコールの怖さを過小評価しないことが大切です。