卵巣のう腫の種類
卵巣腫瘍は良性でも非常に大きくなることがあります
■チョコレートのう腫
よく見る卵巣のう腫の一つで、子宮内膜症が卵巣にできた状態です。子宮内膜症は、本来子宮の中だけにあるはずの「子宮内膜」という組織が卵巣や子宮筋層など子宮以外の場所に発生してしまう病気。20~30代の女性に多く起こりますが、40代になると悪性化するリスクがあるため、定期的に検査することが大切。詳しくは「子宮内膜症の原因・症状・診断方法」をご覧ください。
■成熟奇形腫(皮様のう腫)
毛髪、歯、脂肪などの別の体のパーツが卵巣内で作られてしまうケース。卵巣内にある卵子は毛髪の元になる細胞や、歯の元になる細胞など、人間の元になるさまざまな細胞が詰まっています。これらが誤って卵巣内で個別に成長して塊になったものが成熟奇形腫。チョコレートのう腫と同じく、20~30代の女性に多い病気ですが、こちらも40代になると悪性化のリスクが出てくるので注意が必要。
■漿液性腺腫( しょうえきせい・せんしゅ)
卵巣内にさらっとした液体が溜まってできる腫瘍。あまり聞き慣れない名前だと思いますが、卵巣のう腫の中でも非常に頻度の高い腫瘍の一つです。
■粘液性腺腫(ねんえきせい・せんしゅ)
卵巣内にネバネバした液体が溜まってできる腫瘍。放置するとかなり大きくなってしまうことが多いのも特徴。
上記の他にもさまざまな種類の腫瘍ができます。良性の卵巣のう腫といってもタイプが異なるので、主治医としっかりと話して理解するようにしましょう。
卵巣の一時的な腫れは様子見で大丈夫
超音波検査で卵巣の腫れを指摘されたとしても、必ずしも上記のような卵巣のう腫や卵巣がんがあるわけではありません。卵巣の大きさは月経周期によって変化するため、排卵直後や月経前だと3~4cmくらいの腫れが見つかることも珍しくないのです。発見時に腫瘍が大きく成長している場合は、最初から精密検査を勧められることがありますが、ほとんどが一時的な腫れで次の月経がくれば自然に治まるもの。多くの場合は一度様子を見ます。卵巣の腫れが見つかったのに「3ヵ月後に再検査しましょう」と言われ不安になる人も少なくないようですが、自然に治まる腫れは治療の必要がなく、2~3ヶ月間あけて再検査すれば大丈夫なことがほとんどなのです。
卵巣のう腫が小さければ様子見も
逆に明らかなのう腫がある場合、定期的に大きさをチェックするか治療するかを選ぶことになります。大きさが4~5cm以下で成長スピードが遅い場合、症状がない間は定期検査のみで様子を見てもいいでしょう。ただし、チョコレート嚢腫の場合はサイズが小さくても、それ以上内膜症が進行しないようにするために、妊娠の希望がなければピルや黄体ホルモン剤での治療が必要になります。大きさが5cmを超えていたり、どんどん大きくなっていることが確認できる場合は早めに治療を検討した方がよいでしょう。治療の基本は手術です。チョコレートのう腫の場合は薬物治療で小さくなることもありますが、その他ののう腫はのう腫だけを切り取るか卵巣全体を切り取る手術が必要になります。
卵巣のう腫手術の範囲はケースバイケース
卵巣のう腫のみを切り取るか、卵巣全体を切り取るかは、のう腫の大きさや悪性の可能性の高さなどによって変わってきます。基本的に卵巣が活動している年齢、つまり閉経までまだ数年ある方の場合は正常な卵巣はできるだけ残すようにします。特に10代や20代で将来的に妊娠の可能性を残すことに配慮が必要な場合は、再発のリスクや悪性の可能性が多少あっても卵巣を残すことを優先します。逆に閉経が近い場合は、再発のリスクを残さないという意味でのう腫と一緒に卵巣全体を摘出することが多いです。両方の卵巣を摘出すると女性ホルモンが一気に減るので、手術後に更年期症状が出ることがあります。片方だけを摘出した場合は、残りの片方が正常ならきちんと女性ホルモンを作ってくれますからホルモンバランスが崩れる心配はありません。
最近は腹腔鏡手術が主流に
手術の方法は、「開腹手術」とお腹に小さな穴だけ開けてそこから手術を行う「腹腔鏡手術」があります。悪性が疑わしい場合や過去に開腹手術をしたことがある場合は腹腔鏡手術ができないので、開腹手術しか選択できません。特にリスクがなく悪性の可能性も低い場合は、腹腔鏡手術が可能。腹腔鏡手術は開腹手術に比べ傷も小さくて済み、術後の回復も早いので、最近は良性腫瘍ならできるだけ腹腔鏡手術をするのが主流になってきています。病院によって腹腔鏡手術を選ぶ基準が異なっていることもあるので、自分が腹腔鏡手術の対象になるかどうかは確認が必要。また、腹腔鏡手術ができる病院はある程度限られているので、手術を勧められた場合は手術方法についても主治医としっかり相談してみてください。