機能的な異常
日本で810万人の患者がいると言われる過活動膀胱
さまざまな神経疾患のために膀胱の機能が障害される病気を神経因性膀胱と呼びます。例えば、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、パーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病といった中枢神経系の神経疾患が原因となります。
このほか、腰部の椎間板ヘルニアとか、糖尿病による末梢神経障害とか、子宮がんや直腸がんの手術で膀胱に関係のある神経を損傷した場合の障害などによるものも含まれます。
中枢神経の神経疾患の場合に起こる異常としては、尿を溜めているときに膀胱が勝手に収縮するものがあります。まだ、おしっこを溜めている途中であるにもかかわらず、膀胱が勝手に収縮するので、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感などの症状をきたします。
逆に末梢神経障害では、膀胱が収縮できない状態になり、尿が出にくくなります。場合によっては、まったく出なくなることもあります。
■過活動膀胱
過活動膀胱は、膀胱の機能障害のひとつで、非常に多い病気であり、日本では約810万人が罹患しています。急におしっこがしたくなる、がまんできなくなるという尿意切迫感が必須症状です。
夜間におしっこが近くなる夜間頻尿や、間に合わずに漏れてしまう切迫性尿失禁を伴うこともあります。過活動膀胱は、神経因性膀胱でもみられますが、神経疾患などの原因がないのに、みられることが少なくありません。
腹圧性尿失禁
尿失禁の中では、腹圧性尿失禁が重要です。膀胱に尿を溜めている間、尿が漏れないように尿道を締めている、尿道括約筋がうまく機能しないために、咳やくしゃみ、歩行などで腹圧がかかった時に尿が漏れてしまうという症状です。過活動膀胱でみられる切迫性尿失禁が膀胱の勝手な収縮によるものであるのに対し、腹圧性尿失禁は括約筋が弱いために尿道の抵抗が弱くなっていることに起因します。腹圧性尿失禁は女性に多い病気で、健康な女性の15~40%にみられるといわれています。
感染症
■急性膀胱炎膀胱の感染症で多いものは、急性膀胱炎です。慢性膀胱炎という疾患はほとんどありません。
急性膀胱炎は基本的に女性にみられる疾患で、尿道から侵入した細菌が膀胱の中で炎症を起こすことが原因です。典型的な症状は血尿と排尿時痛、あるいは排尿後痛(終末時痛)、頻尿などです。
■原因がなくても起こる
急性膀胱炎は、明らかな原因がなくても起こります。特に女性の場合、膣や肛門に近いことから、尿道の出口周囲には常に細菌がいますので、膀胱炎に罹患するリスクを負っていると言えます。
たまたま、体調が悪いときなどに、細菌が尿道から膀胱の中に入れば、細菌が繁殖して膀胱炎が起こります。すでに述べたように、特定の原因がなくても起こりますが、若い女性の場合には排便時にお尻を後ろから前向きに拭くといった習慣や性交に関連して細菌が入りやすくなります。
膀胱がん
■男性に多く、痛みはない膀胱がんは、膀胱の中にできるがんです。どちらかというと、女性よりも男性に多い病気です。ちょうど、膀胱炎とは逆の男女差を示しています。
一般的に、膀胱がんの初発症状は血尿で、痛みはあまりありません。膀胱上皮の広い範囲ががんに置き換わる上皮内がんという特殊なタイプの膀胱がんで、頻尿が初発症状になることがあります。
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