「結石」の呼び名は違っても疾患は同じ
結石(上図の赤点)がある位置で呼び名が変わる。上から順に、上腎臓結石、尿管結石、膀胱結石
また、腎臓結石と尿管結石を「上部尿路結石」、膀胱結石と尿道結石を「下部尿路結石」といいますが、現在では上部尿路結石が結石の9割以上を占めています。結石が留まっている場所によって呼び名は変わりますが、疾患そのものは同じです。
食生活や地域差で異なる、尿路結石の原因
結石の原因は成分によって異なります。上部尿路結石と下部尿路結石の比率の違いは、食生活にあると考えられています。上部尿路結石の原因は食生活の欧米化にあり、下部尿路結石は穀物の取り過ぎや尿路感染、排尿障害が加わるとできやすくなります。また、尿路結石の原因は、単に食生活だけではないことが最近分かってきました。例えば、結石阻止作用がある女性ホルモンの影響も言われています。
日本国内の発生頻度には大きな地域差(地質の違い)があり、飲料水に含まれるカルシウムの比率が高い地域では発生率が高いといわれています。
さらに、尿路の病気をしたことのある家族がいる人は尿路結石になりやすいなど、遺伝要因も関与することが分かってきています。
成分で異なる尿路結石の種類
少し専門的ですが、体内でできる結石の成分は同じではありません。成分別に結石の名称は異なります。■シュウ酸カルシウム結石
なんらかの理由で尿の中に異常にたくさん排出されたシュウ酸がカルシウムと結びついたもの。結石の中では最も多い成分です。
高シュウ酸尿症(尿中のシュウ酸濃度が高い)、あるいは高カルシウム尿症が結石形成に直接的に影響します。
■尿酸結石
痛風の原因として知られる尿酸値が血中で高まると、尿の中に尿酸がたくさん排泄されます。その尿酸を核とする結石が「尿酸結石」です。尿酸にはアルカリ性だと溶けやすく、酸性だと沈殿しやすい性質があります。ですから、この結石は尿が酸性になるとできやすくなります。
注意すべき点として、痛風に対する薬の選択があります。血液中の尿酸値を下げるために投与される薬には2種類あり、1つは体内での尿酸の産生を抑えるもの、もう1つは尿酸の尿中への排泄を促進するものです。後者の薬を飲むと血中の尿酸濃度は低下しますが、尿中の尿酸濃度が増加するため、尿路結石ができやすくなります。
■シスチン結石
アミノ酸の先天的な代謝異常によってできる結石です。シスチン、リジン、オルニチンという3つのアミノ酸のうち、シスチンが尿中で沈殿したものです。尿酸結石と同じように、尿が酸性になると沈殿しやすくなります。
■リン酸マグネシウムアンモニウム結石
尿路感染に伴い、尿中の成分が沈殿することによってできるものです。細菌感染により、尿が成分を沈殿させやすい状態になると結石を生じます。このような結石を感染結石とよびます。
尿の通過障害が原因で発生する結石
尿管の通過障害のために尿がいつも腎臓の中に停滞し、尿中の結晶成分が沈殿することによってできる結石があります。「水腎症」といって、腎臓から膀胱までの尿の通過障害のために腎臓が腫れている場合です。腎臓の中はいつも尿がよどんでいる状態なので、いろんな物質が沈殿してしまい結石ができやすくなるのです。
膀胱で発生し、成長する結石
腎臓から膀胱に降りてきた結石はしばらく留まった後、多くは自然に排泄されます。しかし、前立腺肥大症をはじめとする下部尿路の通過障害で残尿がいつも膀胱内にある場合には、外に出にくい小さな結石が膀胱内で成長してしまう場合があります。一方、尿の通過障害に伴う残尿の中に尿中のさまざまな成分が沈殿して結石が生じる場合もあります。
■膀胱内の異物でできる結石
膀胱結石の場合、まれに尿道から入れた異物が核になり結石ができてしまうこともあります。例えば、医療行為で尿道から入れたカテーテルが核になることもあります。
膀胱の中に何か異物があると、それを核としてカルシウムをはじめとするさまざまな物質が沈殿して結石をつくります。これは膀胱の生理学的な性質によるもので、どんなに付着しにくい材質を開発しても結石は必ず付いてしまいます。人工膀胱の開発がなかなか実現しないのはこのためです。