歯・口の病気/歯痛・歯の異常

歯周辺の激痛「顎骨骨髄炎(がっこつこつずいえん)」

虫歯の痛みが顎に広がったような激痛が、顎骨骨髄炎の急性時の特徴。骨の中にある骨髄が細菌によって炎症を起こして起こります。特に下あごに多いのも特徴です。詳しく解説しましょう。

丸山 和弘

執筆者:丸山 和弘

歯科医 / 歯の健康ガイド

顎骨骨髄炎(がっこつこつずいえん)とは

下あごを中心にまれに起こり痛みが強いのが特徴

下あごを中心に起こる骨髄炎は、頻度はまれだが痛みが強いという特徴があります

突然あごの骨に激痛が起きる顎骨骨髄炎。あごの骨の内部にある「骨髄」と呼ばれる部分が虫歯や歯周病菌によって化膿、炎症を起こすことで起こります。特に強い痛みになりやすいのは急性の顎骨骨髄炎で、主に感染が下あごに起きた場合に見られます。

普通、あごの骨は歯茎や筋肉などに覆われているため、いきなり最近に感染して化膿することはありません。歯は頭の部分(歯冠)が口の中に露出し、歯茎を貫通した状態で根の部分(歯根)が骨に繋がっているため感染経路になりやすいのです。顎骨骨髄炎は、必ず外部から骨に通じる細菌の感染経路があることになります。

ただし虫歯や歯周病を放置しても必ず顎骨骨髄炎になるわけではありません。さらに一度なってしまうと痛みが取れ落ち着くまでに時間がかかることが多く、歯の痛みの中では重症度が高いのが特徴です。


顎骨骨髄炎の症状

顎骨骨髄炎の主な急性症状は以下の通り。

■強い痛みが起きる
歯の痛みや歯周病の症状が何日か続く。歯やあごに虫歯より強い痛みが起き、歯茎などにも痛みが広がる。

■数本同時に痛みが起きる
原因の歯を特定しやすい虫歯の痛みに対し、顎骨骨髄炎の場合は原因となる歯の特定が困難なほど痛みが広がることがある。

■数本同時に歯がぐらつく
それまで歯周病トラブルを経験していなくても、激痛とともに歯が次々にぐらつくことがある。

■歯茎が腫れて膿が出る
歯茎が充血して赤くなり、内側(舌寄り)と外側(頬寄り)の両方が腫れて膨らむ。それまで歯周病の気配が全くないのに、急に重度の歯周病のように腫れたり膿が出る。

■熱が出る
38~40度程度の発熱を伴うことがある

その他にも普段から強い歯ぎしりがある場合、ある日突然顎骨骨髄炎を引き起こすケースをときどき見かけます。

 

顎骨骨髄炎の治療

普通の虫歯は、歯の神経を取り除くことで比較的簡単に痛みが収まりますが、顎骨骨髄炎のように炎症が骨髄にまで広がってしまっている場合は、痛みや腫れをすぐに取るのは簡単ではありません。特に急性症状では困難です。

ただの虫歯より悪化している状況なので、抗生物質、消炎鎮痛剤などを利用しても症状が安定するまで数日~1週間以上かかることがあります。基本的には痛みがあるうちは安静にしておくこと。その後歯の神経を取り除いたり、歯を抜歯する治療が行なわれるのが一般的です。

確定診断が難しい顎骨骨髄炎

しかし実際には顎骨骨髄炎だとすぐに判断がつかないことも少なくありません。痛みや炎症の広がりをレントゲンで確認しようとしても、痛みの強い時ほどレントゲンに変化が見えないという問題があります。

そのため、原因が普通の虫歯や歯周病なのか顎骨骨髄炎なのかを区別することが難しい場合も多く、歯随炎を疑って歯の神経を取り除いたり、歯周病を疑って歯の抜歯を行なったり、治療後に痛みがなかなか引かなくて初めて顎骨骨髄炎を疑うというケースも考えられます。

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