脳・神経の病気になると、手足が動きにくくなったり、物忘れをしたり、さまざまな症状がでます
■ 神経細胞そのものが変性してしまう病気
⇒アルツハイマー病・パーキンソン病・脳腫瘍など
■ 神経細胞が間接的にダメージを与える病気
⇒脳血管障害(脳梗塞、くも膜下出血、脳内出血)・水頭症など
■上記のどれにも当てはまらない病気
⇒自律神経失調症
以上の主な脳・神経の病気について、以下で簡単に説明しましょう。
アルツハイマー型老年認知症
■アルツハイマー型老年認知症の症状物忘れから始まりますが、本人には深刻味がなく、さほど困っているような印象を受けないことがあります。同居している家族などが最初に異変に気づくことが多いようです。進行すると、夜中に家を出てしまう徘徊や、怒りっぽくなったり、閉じこもったりといった、うつに似た症状が出現してきます。
■アルツハイマー型老年認知症の診断法
MRI、CT、PETなどの画像診断が有用ですが、正確な診断をするには患者さんに記憶力や計算力などの質問をする「神経心理学的検査」をする必要があります。
■アルツハイマー型老年認知症の治療法
記憶力の回復を促すとされる内服薬(商品名「アリセプト」)が治療の中心になります。また、抑肝散(よくかんさん)などの漢方薬が有用なこともあります。
記憶力以外の症状が出現した場合は、それに対応する薬が使われます。たとえば、怒りっぽくなってきた場合は、鎮静薬。うつ症状が起きた場合は、抗うつ薬が使用されることもあります。生活・作業療法などのリハビリテーションが有用といわれています。
また、御家族への介護負担が大きくなることが予想されるので、介護保険を地方自治体に申請し、ケアマネージャーとともに適切な介護プランを作り上げることが非常に大事なことになります。
パーキンソン病
■パーキンソン病の症状主に50~60歳代に多く、脳の黒質と呼ばれる部位でのドーパミンが少なくなることで発症します。ドーパミンは、カラダの円滑な動きを伝える神経伝達物質なので、以下のような症状が出現します。
- 体の振るえ(振戦)
- 筋肉が固くなる(筋硬直)
- 動作が緩慢になる(無動)
■パーキンソン病の診断法
MRI、CTなどの画像診断だけでは診断できないので、神経内科専門医の診察が必要になります。
■パーキンソン病の治療法
ドーパミンを補充する内服治療が治療の中心になります。最近では、脳の特定の部位に電極を埋め込む手術治療が開発され、有効な結果が得られています。
脳腫瘍
■脳腫瘍の症状脳の神経細胞が何らかの原因で突然変異してしまい、どんどん細胞が増殖してしまう病気です。その増殖した塊を脳腫瘍と呼びます。脳腫瘍が発生した脳の場所によって症状がさまざまですが、頭痛、嘔吐を最初に自覚することが少なくありません。人口10万人に対して10人程度の発生率と言われています。
■脳腫瘍の診断法
専門医の診察に加え、MRI、CT検査がきわめて有用です。
■脳腫瘍の治療法
腫瘍の塊を取り除く手術治療が、治療の中心で、必要に応じて薬物治療、放射線治療(ガンマナイフなど)を組み合わせて行います。
脳血管障害
■脳血管障害の症状脳の血管が破れたり、詰まったりする病気をひっくるめて、脳血管障害(脳卒中)と言います。脳血管障害は、脳血管が詰まる病気を虚血性脳血管障害、脳血管が破れる病気を出血性脳血管障害に分類されます。
・血管が詰まるタイプ・・・脳梗塞(ラクナ梗塞、脳血栓、脳塞栓)・一過性脳虚血発作
・血管が破れるタイプ・・・脳内出血・くも膜下出血・硬膜下出血
■脳血管障害の診断法
脳血管障害の多くは急激に以下の症状が出現します。1週間以上かけて、徐々に出現する症状の場合は、脳血管障害ではないことが多く、違う病気を疑いましょう。
- 手足が動かしにくい(片側のことが多い)
- 反応が悪い、意識がない
- 目が見えなくなる
- 言葉がうまく出ない
- 頭痛、めまい、嘔吐
- けいれん発作 など。
上記の症状が認められた場合、MRI、CTなどの画像検査を行い診断を確定します。また、MRIやCT検査は、治療効果の判定や病状の進行の有無を調べるのにも有用で、この検査は繰り返し行われます。
■脳血管障害の治療法
脳血管障害が起こった直後は、脳がむくむ脳浮腫が発症することが多く、脳の圧力を下げる点滴治療を行います。脳血管が詰まった虚血性脳血管障害の場合は、再度、つまらないようにするために血液を固まりにくくする薬物を点滴や内服で投与します。
脳血管が破れた出血性脳血管障害の場合は、出血の原因を明らかにして手術治療を行うこともあります。
また、脳血管障害の場合、後遺障害を残すことが一般的なので、後遺症に対するリハビリテーションを行い、日常生活に戻れるように訓練します。
血圧が高い、血糖値が高い、コレステロールが高い、肥満、タバコを吸う、過量な飲酒を行うような人は、脳血管障害を再発しやすいので、それらに対する治療も必要になります。
自律神経失調
MRIやCTでも異常が見つからないのに不調が続く……。症状が改善されない場合は精神科の受診も検討しましょう
この自律神経の調節が上手くいかない状態を「自律神経失調症」と呼びます。実際には色々な症状があるにも関わらず病気の原因が特定できない時に、とりあえず「自律神経失調症」という病名をつけられることが多く、非常に曖昧な病名と言えます。
MRIなどの専門的な検査を行っても体に異常が発見できない場合、カラダの病気ではなく、ココロに原因があることも多いのです。不調が続く場合は、精神科や心療内科を受診することが必要です。
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